医療保険 「終身払」と「払済」はどちらが良いの?

 

医療保険の支払方法には、

・終身払(会社によっては「定額」、「全期払」などと言う)

・60歳払込(同じく、会社によっては「払済」などと言う)

・65歳払込(同上)

・70歳払込(同上)

などがある。

終身払いは、その名の通り「身が終るまで払う」ので、生きてる限りはずっと保険料の支払いが続く。

60歳払込は「60歳まで払えば」、その後の保険料の支払いはなくなるが、保障はずっと続く。

例えば70歳で入院や手術を受けても、60歳までに払い切った保険の給付金を受けられる。

65歳払込や、70歳払込も「保険料の払い込みの年齢」が上がるだけで、基本的な考え方は同じ。

で、

「どれが良いですかね?」

と聞かれることが多いのだが、これが意外と難しい。

筆者は

「個人的には終身払いでよいと思います」

と答えているし、実際、どこの保険会社の契約件数の内訳(終身払いか?払込タイプか?)を見ても、7割程度は終身払を選択している。

しかし、どちらが良いと一概には言えない部分がある。

ポイントは3つ。

1 お金の問題 保険料の支払い総額はどれくらい違う?

2 性格の問題 老後も払いが続くのが嫌・・・

3 医療保険の流行 どうせ見直す・・・・

これらの観点で「終身払」と「60歳(もしくは65歳とか70歳)払済」のどちらが良いか考察してみよう。

 

参考コラム:
医療保険の検討ってどうすれば良いの?と迷ったら

『医療保険。こう考えれば、スッキリ決められる!』
をご覧いただきたい。

保険加入「こう考えろ!!」(医療保険)の記事は、コチラ
各社の医療保険の☆評価一覧は、コチラ




1 お金の問題

医療保険の保険料は、一生涯保険料が続く「終身払」が一番安い。

そのため、各保険会社のCMでは「安さ」を強調するために、「終身払」の保険料が明記されている。

そして「60歳払込」が最も高く、「65歳払込」、「70歳払込」と期間が延びていくにつれ安くなる。

会社によっては「55歳払込」などもあるが、これは当然「60歳払込」より高い。

図にするとこんな感じ。

では、実際、どれくらい違うのか具体例を見てみよう。

 

以下はある保険会社の「終身払」、「60歳払込」、「65歳払込」、「70歳払込」の保険料である。

あくまで保険料の比較なので、余計な特約(オプション)は全て外し、内容は「30歳 男性、入院日額5,000円 1入院60日型」とした。

先ほどの説明の通り、払込期間が短い60歳が一番高く、終身払が一番安いということになる。

では次に「トータルでいくら払うのか?」総支払保険料を比較してみる。

「払済」タイプは期間が決まっているので、総額が計算しやすいが、終身払は死ぬまで支払いが続くので「いつ終るのか」分からない。

そのため、仮に「60歳まで」「65歳まで」等々、いくつかのパターンで計算している。

ここで注目して欲しいのは、終身払の各パターンである。

当たり前だが、支払いがずっと続くので高齢になればなるほど保険料の総額が積み上がる。

平均寿命の85歳まで長生きすると、トータルの支払いは99万円となるため、「60歳払込」や「65歳」、「70歳」を超えて一番高額になる。

「だったら『払込』の方が良いよね」

ということになるのだが、逆に70歳くらいで死んでしまうのであれば

「終身払がお得」

となる。

だからこそ判断が難しい。

この「終身払」と「払済」の総支払保険料の逆転ポイントは、だいたいどこの保険会社でも73歳から78歳近辺に設定されている。

そのため、

「75歳以上まで『生きる予定』だったら、早めに払込しちゃった方が良いですよ」

という身もふたもない言い方になるが、当然、何歳まで生きるかなんて誰にも分からない。

考えても結論が出ることではないので、

「だったら『今』安い方が良いんじゃないですか?」

というのが筆者の考えである。また、「今」の貨幣価値と「数十年後」のそれは違う。

今の1500円は、40年、50年後には感覚的には700円くらいになっているかもしれない。

しかし、このような説明をしても、3割くらいは「払済」を選ぶ。

その理由が次の「性格」の話になる。




2 性格の問題 老後も払いが続くのが嫌・・・

特に説明する必要もなく、この一文でお分かりだろう。

払済を選択する方には、

「お金の損得の話ではなく、仕事を辞めた老後にも支払いが続くのが嫌」

という意見が多い。

または、

「早く支払ってしまって責任を終えたい」

という考えもある。

まあ、これは理解できるし、その方の性格の問題なので何ともいえない。

 

また、「総支払金額」としては、短期で支払った方が効率的であることは間違いないので、ご本人が「払済」でスッキリするのであれば、それに越したことはないだろう。

しかし、ここに立ちはだかるのが3の「医療保険の流行」である。

 

各社の医療保険の☆評価一覧は、コチラ




3 医療保険の流行 どうせ見直す・・・・

医療保険には「流行」がある。

例えば、10年前に比べ入院が飛躍的に短くなった。

「入院の短期化」

という流れで、これは医療費膨大(社会保障費)に悩む国の施策である。

少々話が逸れるが、以前は患者が病院に1日入院すると、病院が貰える保険点数というものが決まっていて、つまりは長く入院して貰えばもらうほど病院の収入が増えた。

しかしこれが、10数年前に改正され、ざっくり言えば

2週間以上の入院に関しては保険点数が下がる

仕組みが導入された。

そのため、以前は「長期入院も大歓迎」だった病院が、「保険点数が貰えないなら出て行ってくれ」と豹変したのである。

また、この動きにあわせて医療技術が進歩し、がんや心筋梗塞などでも、きちっと2週間で退院できるようになっている。

心筋梗塞なんて早ければ4,5日で退院してくる時代である。

さて、話を戻すが、そんな「短期化」をもって、民間の医療保険も商品構成も劇的に変わった。

10年前は「入院5日目以降が支払い対象」というような商品がたくさんあったが(と言うか、それが主流)、今は「初日から」が当たり前。

また商品によっては「入院一時金」というものを設けて、「1日でも入院すれば5万円」というものまである。

短期入院であれば、それほどお金もかからないので、別に5万円貰ってもしょうがないだろう・・・・

保険のプロとしてはそう思うが、昔の保険なら「1円も貰えない」のが、今の保険なら「5万円」なのだから、どちらが良いかと言えば後者の方が良い。

また、最近ではどの医療保険にも標準的に含まれている

「先進医療特約(先進治療を行った場合、実費を負担してくれる)」

なども、10年前にはその考え方すらなかった。

このような特約も「どこかの会社が始めると、バァーと広がる」というもので、他にも「三大疾病一時金(がん、脳卒中、心筋梗塞の時に一時金)」や、「三大疾病入院無制限(がん、脳卒中、心筋梗塞の場合は入院日数が無制限になる。入院が長期化しがちな脳の病気に有効)」なども、10年前にはほとんどなかった。

このような、国の医療制度が変わることにより、それを補完する民間の医療保険の内容も変わる。

そのため、ここから10年後、20年後も今の保険が、「その時代に合った保険」である可能性は極めて低い。

しかも、更に始末の悪いことに、昔の保険より今の保険の方が安い。

「医療保険は儲かる」

というのが生命保険会社の共通した認識で、だからこそテレビCMや、ネット広告を垂れ流されているが、それでも採算が取れるくらい儲かるのである。

とは言え、そこは競争の世界なので、各社が他社を出し抜こうと新商品を出すごとに保険料を下げる。

この争いは熾烈で、感覚的にはどんどん保険料が安くなってきている印象。

特にネット生保が出てきてからは、一段と加速している感がある。

そのため同じような内容であれば、10年前より今の方が安いのである。

契約者をバカにした話だが、事実なので仕方がない。




・時代の流れで「良い」とされる保障の内容が変わる

・保険料が安くなる傾向がある

この2点から、

医療保険は定期的に見直した方が良い

というのが筆者の考えで、業界を見渡しても同じようなことを言う方が多い。

何も「切り替えてもらえば、新しい契約が取れるから」という商売っ気で言っているわけではなく、(それがメインの動機の保険屋も多いが)

新しい医療技術に対応するには、新しい医療保険でないと。

というのが、実際の医療現場と保険に詳しい筆者の本音である。

そのため、「10年、20年スパンで見直す」ことを前提にするのであれば、何も割高な「払済タイプ」を選ぶ必要はない。

どうせいつかは解約するのであれば、保険料の安い「終身払」で良いではないか。ということになる。

しかし、ここにも落とし穴がある。

一定数「見直せない方」が出てくるからである。

つまりは、がんや脳卒中などの「大きな病気」をやってしまった方は、他社の医療保険に加入出来ない。

そのため、今入っている保険を継続しなくてはいけないので、このようなケースを考えると、話が「お金」と「性格の」問題に戻ってしまう。

「払済の方がトータルでは安いけど月々が高いし・・・あっ、でも早く死んじったり、見直すなら損か・・・とは言え、何か病気をして見直せなくなっちゃうかもしれない・・・そうなると、老後も支払いが続くのも嫌だしなぁ・・・・」

と話は堂々巡りになる。

結局のところ、いつまで生きるかも分からないし、そもそも医療保険を使うかどうかも分からないわけだから、絶対的な正解はない。

医療保険の「払い方」は考えすぎるとドつぼにはまる。

 

「毎月、負担じゃない程度の掛け金にしておくことが大事ですよ。」

という、毒にも薬にもならない当たり障りのないアドバイスをする。

何故なら、こちらとしても「こっちが良いです!!」と断言できないのである。

「『払済』のパターンの保険料でも無理がないのであれば、それはそれで安心ですね。『高いな』と思うなら、将来のことは分からないので『終身払』が良いかもしれませんね。」

更に輪をかけて曖昧なことを言うしかない。

そして出た結論は、経験上 7割が「終身払」、3割が「払済(だいたい65歳が多い)」であり、保険会社のデータもほぼ私の経験を裏付ける結果となっている。

色々と論じてみたものの、何とも歯切れが悪い「終身払、払済」論争であった。

 

参考コラム:
医療保険の検討ってどうすれば良いの?と迷ったら

『医療保険。こう考えれば、スッキリ決められる!』
をご覧いただきたい。

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