市場価格調整とは?

保険商品の中には「一時払商品」という分野がある。

各保険会社からも販売されているし、最近では銀行の窓口で売られていることも多い。

例えば、1,000万円をドカッと預けて、それを外貨や株などで運用するもので、運用の成績は自己責任。

将来どのように増えるのか、それとも減るのかは分からない。

これ自体は商品の特性なので、「しっかりと理解した上で加入して下さい。」としか言いようがないのだが、この手の商品には意外なところに落とし穴がある。

それが、

市場価格調整

である。

解約時に関係するもので、これによって解約返戻金が減ったり増えたりする。

その変動は時に、商品そのものの運用より乱高下が激しくなることもある。

本コラムではその仕組みとリスクについて説明したい。




ここでは、Aさんが1,000万円を1ドル100円で米ドルに換えて、

1,000万円=10万ドル

で運用を開始した場合を例として解説していく。

加入時の利率は2%で、それがずっと続く。

要は1年後には10万2,000ドル(102%)になっているということ。

数年間、運用を続けてきたが、色々な事情があり、この商品を解約する。

そんな時に市場調整が関係する。

市場調整価格を教科書通りに解説すると、

加入時の利率と、解約時の利率の差

によって返戻金が増減する仕組み。

となるが、一般の人にとっては、何言ってるか分からないだろう。

まず基礎的な用語から理解しよう。

加入時の利率、これは分かりやすい。

先の例で言えば「2%」

自分が契約した時に適用される利率である。

次に解約時の利率。

これがちょっと難しい。

これは、解約時に「新たに契約したとすると適用される利率」ということ。

例えば、Aさんが契約したこの商品が、解約時にも販売されており、その時の利率が1%だとする。

これが解約時の利率。

なお、商品によっては既に販売が停止されていることもあるが、そのような場合でも保険会社が、「今の利率は〇%です」と公表しているので、この場合はそれを使う。




このケースで言うと、Aさんの時には2%が約束されていたのに、今、契約した人は1%なので、

条件が悪くなっている

ということ。

このような状況だと、保険会社としてこう思う。

ラッキー!!

と。

保険会社としては、Aさんが契約した時に2%の利回りを返せる手立てをしている。

具体的には、2%以上で回るアメリカ国債や社債などを用意し、確実にAさんに2%を渡せるようにしてあるわけだ。

しかし、Aさんはこの権利を放棄する(解約)と言う。

2%のリターンという権利が宙に浮くことになるのだが、今の利率は1%。

今の契約者には1%をバックすれば良いだけなので、Aさんの権利をそのまま横流しするだけで、保険会社は「差」の1%を抜けることになる。

いやー、Aさんありがとうございます。2%返してくれて助かりますよー

という感じだろう。

そのため、1%の利ザヤが今後数年でどれくらいの利益になるかを計算して、返戻金に上乗せしてくれる。

つまり2%という好条件の権利を手離す代わりに、見返りとして返戻金が増える。ということ。




では逆はどうだろうか?

契約時2%、解約時3%

こんな場合だ。

このケースだと、保険会社は

困る

2%の権利を返されても、今の市場は3%。

新しいお客さんには3%で返さないといけないので、2%では追っつかないわけだ。

3%が当たり前の状況では2%には価値がない。ということになる。

そのため、2%は損をしても処分しないといけない。

例えばAさんの契約の裏付けとなっている資産が、

10年物のアメリカ国債10万ドル 利回2%

だとする。

毎年2%のリターン、10年後に10万ドルがまるまる戻ってくる「資産」なのだが、今は同じものでも3%のリターンがあるので、誰も「このまま」では買ってくれないので、この債権を9万5,000ドルに値下げして売る。

そうすれば、買う方は、毎年のリターンは2%しかないが、数年後の償還時に10万ドルが戻ってくるので、9万5,000ドルとの差額の5,000ドルが儲かりトータルでは3%か、それ以上の利回りになるのである。

もちろん、保険会社はAさんの契約が解約されたからと言って、いちいちこのような細かい売買をしているわけではないのだが、Aさんの2%の権利が「価値が下がっている」ということを理解してもらえばと思う。

従って、保険会社はこう言う。

「いやー、Aさん、お持ちの権利(2%)、今価値が下がってしまってまして・・・」

と。

そのため、その損失分は返戻金から引かれる。

これが市場調整価格の仕組み。

だからこそ、加入時より解約時の利率が

下がっていれば 儲かる(返戻金が増える)

上がっていれば 損する(返戻金が減る)

となるのである。

このことを理解しておらず、解約時に結構なペナルティを取られてクレームになるケースも多いので、気を付けて欲しい。




なお、標準的な商品では、解約時の利率に+0.3%をされることが多い。

先の例で言えば、

利率が下がっているケース

契約時2% 解約時1%→1.3% 差は0.7%

利率が上がっているケース

契約時2% 解約時3%→3.3% 差は2.3%

この+0.3%があることにより、儲けも減るし、損も拡大する。

まあ、この0.3%は保険会社のリスクヘッジ(急に金利が動いた、等の)と手間賃のようなものだと思えば分かりやすい。

商品によっては、これが+0.4%とか+0.5%など「エグイ」ものもあるのでご注意いただきたい。

追記:2020年6月17日

現在のドル建ての利率はコロナの影響でアメリカ国債の利回りが低下しているため、過去最低レベルに低い。

低い利率で契約してしまうと、将来解約する際には、「今より利率が上がっている」可能性の方が高い。

市場調整価格により解約時のペナルティは、「ほぼかかる」と思っておいた方が良いだろう。