患者申出療養特約とはなにか?

最近、各保険会社で先進医療に「患者申出療養制度」の保障をセットにするところが出てきた。

先進医療だけでなく、患者申出療養制度による治療も、その対象にしようとするものである。

では、患者申出療養制度とは何なのだろうか?

簡単に言えば、

・保険適用外であり
・先進医療でもない治療

を試すための制度で、厚生労働省が推進しているものだ。

これに該当するケースは大きく2つある。

1つ目は未承認の抗がん剤。欧米などでは既に認可されていて、効果も出ているのだが、日本ではまだ未承認というもの。

これは結構ある。

これを自費で購入して使用する場合、この患者申出療養に該当する。

2つ目は、治験中の薬を使いたい場合。

しかし、こちらは少々複雑である。治験と言っても2パターンあるからだ。

全く新規で薬を「創る」場合と、既にある薬を「流用する」場合。

例えばAという病気があり、それに効く薬を、ある製薬会社が作っている。これをXとしよう。

このXの安全性や効果を治験で試すわけだが、この治験に応募しても、年齢、エリア、病気の状態などでメンバーに選ばれなかった人が出てくる。

このような場合、「どうしてもXを試したい」と思っても、これは無理だ。

いくらなんでも認可前、販売前の薬はどれだけお金を積んでも手に入れることは出来ない。

しかし、治験でも「既に販売されている薬」を使うこともある。

Aという病気の薬として、既に販売されているY。

これを「Bにも効くのでは?」と予想し、試すのである。

近年ではips細胞やAIなどの技術を使って、様々な病気に対し、過去に認可・販売されてきた薬を「試してみる」という動きか盛んである。

人体ではなく、模擬的に病気の細胞をipsなどで作り、それに色々な薬を試してみる。そしてその結果をAIで判断し、

「もしかしたら、BにYが効くかも?」

という推測をするのである。

その可能性が高くなると、実際の患者さんで治験を行う。




一から薬を作るわけでもなく、「既にある薬」を使うのだから、手軽でもある。

しかし、治験は1回で済むわけではなく、小規模、大規模と2,3回程度やるので、時間がかかる。

このようなケースで、「治験に参加できなかった人」が、Yを試すことは「可能」である。

既に販売されている薬なので、諸々のデータもあるため、入手は出来る。

だが自費である。

Aという病気で使うなら保険適用が認められているが、Bに対してはまだ保険適用されていない。

そのため、自腹で払う必要がある。

安い薬なら良いが、高いものになると毎月50万円、100万円ということもある。

前述の抗がん剤なども高い。

1本数百万円するようなものもあり、これらを自費で出すのはかなり大変で、実際には経済的な理由で諦める人も多い。

それを「保険会社が肩代わりする」のが、患者申出療養特約である。

実費を支払う、という点でも先進医療と似ているので、先進医療とセットで提供されていることが多い。

実際にこのケースに該当し、この特約が使えるなら、「救世主」になることもあるだろうから、かなり良い特約だと思う。

今後、各保険会社で広まっていくのではないだろうか?

なお、余談ながら患者申出療養について補足すると、この治療を受けるのは口で言うほど簡単ではない。

まず、主治医が許可し、処方箋を書いてくれるか?という問題がある。

患者からすれば、新しい薬の効果ばかりに目が行くが、どんな薬にもデメリット(副作用)があり、医師からすればそちらも怖い。

そのため、簡単にはウンと言わないことも多い。

また、医師が了承しても、次にその病院の「倫理委員会」を通過しないといけない。

病院の体質にもよってケースバイケースではあるが、これもハードルは低くはない。

主治医が書類を出しても「リスクが高い」として却下されてしまうこともあり、事なかれ主義の病院などでは「いやー、危ないからやめておこうよぉ」というようなとこもあるらしい。

そうなると、患者申出療養に理解を示してくれる病院に転院し、一から申請をし直す必要もあるので、時間がかかる。

患者申出療養制度は、そのような過度な病院側の保身により患者がデメリットを受けることを防ぐためのものでもある。

また、以前は一度保険適用外の治療を受けると、保険適用のものであっても「全部自費になる」というおかしな仕組みだったが、この制度により、原則保険適用されるものは保険で、適用外のものだけは自費負担で、ということになった。

今後はかなり普及していくのではないか?と思う。

それを経済的に補うという意味では、患者申出療養特約は意義のあるものだろう。