提供会社:三井住友海上プライマリー生命
商品名:一般勘定移行型変額終身保険
別名
三井住友プライマリー投資型終身保険:野村證券
この商品の弱点はここだ!!
参考コラム:変額保険の「ファンド」を超解説!!インデックスとは?アクティブとは?
全体的に「高コスト」&「中途半端」という感じ。
しかも、
コロナショックでプラマイゼロになってしまった・・・・
そんな商品。
本商品は三井住友海上プライマリー生命という損保大手の三井住友海上の子会社が出している。
だが、販売は提携している地方銀行・信用金庫や、証券会社に限られる、いわゆる「窓販商品」というやつ。
なお、取り扱っている金融機関によって以下のように名前が異なっているが、中身はほとんど一緒
・かがやき、つづき2
池田泉州銀行、いちよし証券、京都中央信用金庫、呉信用金庫、高知銀行、佐賀共栄銀行、静岡中央銀行、島根銀行、大東銀行、但馬信用金庫、千葉銀行、中京銀行、筑波銀行、東北銀行、栃木銀行、トマト銀行、東日本銀行、広島銀行、福岡中央銀行、北國銀行、みちのく銀行、宮崎銀行、宮崎太陽銀行、武蔵野銀行
・三井住友プライマリー 投資型終身保険(ターゲット型)
野村證券
本商品は主に相続対策として使われるケースが多い。
保険金の非課税枠を埋めるために提案されているようだ。
保険金の非課税枠とは、保険金を受け取った際、
法定相続人 × 500万円
までは非課税になるというルールで、例えばお父さんが死亡した場合、妻と子2人が遺されていれば
3人(妻と子2人) × 500万円 =1,500万円
までは非課税。
これを預金で相続した場合、まるまる相続税がかかるが「保険にしておくだけ」で非課税になるので、相続対策としては基礎中の基礎というところだろう。
本商品を販売している銀行や証券会社などは、顧客の資産状況を把握しているので、預金を多く持つ資産家に
「このままでは相続税が大変ですよ。保険にしておくだけで非課税になるんです!!」
と提案(ささやく)するわけだ。
商品の流れとしては、まず一時金でお金を振り込む。
保険会社はそれを株式と債券で運用し、ターゲットを目指す。
ターゲットとは加入時に契約者が決める数値のことで、110%、120%、130%、なし、から選択する。
たとえば1,000万円を入れて、110%を指定した場合、運用の途中でも解約返戻金が1,100万円(110%)になれば、その時点で運用を止める。
その後は保険金が固定された終身保険になる。
保守的な人であれば、
「わしは110%にでもなれ御の字じゃあ~」
と110%を選ぶし、
「いやいや、もっと増えてくれよぉ~」
という欲の皮が張ったじいさん、ばあさんは130%や「なし」を選ぶ。
「なし」の場合は、途中の成績が良くても運用を止めることなく、最後(20年)まで続ける。
とは言え、本商品で130%など、筆者はまず達成できないと思うし、販売元の三井住友海上プライマリー、そして運用を請け負っている三井住友DSアセットマネジメント自身も、本当にそれが出来るとは思っていないだろう(詳しくは後述する)
次に運用について。
本商品では、資産の50%は安全な債権(日本、米国、ドイツの国債を1/3ずつ)で運用され、残り50%を「タイミング」を見て、株式に振り分ける運用方針をとっている。
その50%は、以下の5つの指数に連動する投資信託に振り分けられる構成だが、どの投資信託にも「最大10%まで」しか投資しない。
どれか1つの市場に過剰に傾倒しないよう配慮されている。
・日経225
・S&P500
・ナスダック100
・ユーロストックス50
・ドイツDAX
なお、これらの運用成績は将来の解約返戻金や保険金に影響する。
・運用成績が良い場合
返戻金 増える
保険金 増える
・運用成績が悪い場合
返戻金 減る
保険金 減る、しかし、当初あずけたお金=保険金は最低保障される
例えば1,000万円預けて、運用成績が振るわない場合でも、被保険者が死亡すれば、必ず1,000万円の保険金が受け取れるということ。
この保険金の最低保障が、一般的な投資信託との違いだが、これを維持するために積立金の中から、保険関係費として2.37~2.79%(年齢によって異なる) が取られる仕組み、
以上が商品概要。
では弱点の解説に移ろう。
参考コラム:変額保険の「ファンド」を超解説!!インデックスとは?アクティブとは?
弱点1 初期費用5%
本商品の最大の弱点(デメリット)がこれ。
加入時に初期費用として、あずけたお金の5%がとられる。
つまり1,000万円を預ければ50万円を手数料として徴収され、残り950万円で「運用開始」となる。
他社商品では初期費用がないものが多い中、
結構強気にとるねぇ・・・・・
という感じ。
本商品の目的は「保険金の非課税枠目的」&「ちょっとでも増やしたい」というところだろうが、どちらの目的に照らし合わせても、スタート当初から「5%減る」ということはマイナスでしかない。
筆者はわざわざ5%を払ってまで、本商品にお金を預ける必要性は感じない。
これにお金を入れるくらいなら、初期費用のかからない以下の商品の方が良いのではないだろうか?
注:具体的な比較商品については、文末の「比較した方が良い他社商品は?」に掲載する。
もちろん「5%払っても、この商品で運用して欲しい!!」というほど魅力的なファンド(ファンド)を持っているのであれば良いが、そのファンドが相当イマイチで、それが2つ目の弱点。
弱点2 コロナショックでプラマイゼロ・・・
本商品のファンドは、債券50%、株式50%の構成を取っているが、株式の方はあくまで「最大限50%」ということで、必ずしも常に50%にしているわけではない。
つまり、株式が上昇局面の時には株に投資をする「かも」というだけで、逆に下降局面の時には債権運用をメインにする方針。
これが、今回のコロナショックで仇となった。
2020年前半に株価が急落した時に、それまで持っていた株式(実際には投資信託)を「ほぼ底値」で売り、債券に持ち替えた。
これ自体はファンドの運用としては間違いでもない。
先行きが不透明な以上、安全策を取るのは仕方がないからだ。
が、その後の急騰でも、そのまま債権を持ち続けてしまった。
そのため「損だけが確定」し、その後の株式急騰の果実を得ることができていない。
日米ともに株価最高値をつけてしまった今となっては、これから株を買いなおすことは「高値掴み」になる可能性もあり、仮に株に戻した途端「再暴落」にでもなったら目も当てられず、本ファンドの運用チームも
「どうしたものか・・・」
と頭を悩ましているだろう。
これらの一連の動きにより結果的には、ファンドの価値はスタート当初の100前後(ファンドは必ず100からスタートする)、もしくはそれ以下まで落ちてしまい、本商品がスタートした5年前から蓄積してきたプラスをすべて吐き出してしまった。
結論としては、資産を増やせなかったどころか、ややマイナスということ。
本商品は、加入時の年齢によってファンドを分けており(そうする理由はイマイチわからないが)、各ファンドの成績は以下のようになっている(2020年10月現在)
バランスR20-1 加入年齢 15歳-50歳 100.10
バランスR20-2 加入年齢 51歳-60歳 99.62
バランスR20-3 加入年齢 61歳-70歳 99.16
バランスR20-4 加入年齢 71歳-80歳 97.55
比較的年齢が若いR20-1で何とか100を保っているが、その他は全てマイナス。
金融の世界は全てが結果。
何を言い訳してもこれはダメ。
しかも初期手数料5%も取っておきながら、この結果はかなりしょぼい。
なお、「スタートしてからのプラス」と言ったが、それすら最大で100→105程度と、この5年間の株高にかかわらず、まったく成績が振るっていない。
5%程度しか増えていないということは、初期手数料5%を補った程度で、さらにはそれがマイナスにまで落ち込んだということは、顧客の資産をただ減らしただけ、ということになる。
本商品は、初期手数料だけでなく、死亡時に保険金を支払うための保険関係費も2.37~2.79%取られ(年齢によって異なる)、とにかく手数料ばかりが目立つ。
実態としては、よほど運用成績が良くなければ、
手数料で顧客の資産を食いつぶす
ような構成になっており、更にはその運用がこの状態では、本商品を評価するポイントは何もない。
もちろん、本商品の目的の一つとして「保険の非課税枠利用」があり、契約者としては、いくら運用成績が悪くても、
「預けたお金=保険金」
であるので、亡くなって保険金を受け取ることを考えれば、損はしていない。
参考コラム:変額保険の「ファンド」を超解説!!インデックスとは?アクティブとは?
仮に資産を減らしたとしても、保険金との差額は保険会社が補填することになるからだ。
しかしながら、契約者、銀行、保険会社、運用会社が大騒ぎした結果、契約者としては
預けたお金が1円も増えずに保険金で戻ってきただけ
という結末は、なんとも情けない。
なお、余談ながら、筆者が本稿を書くにあたり、商品パンフレットを見たのだが、その中に「運用実績シミレーション」というものがあった。
実績なのか、シミレーションなのか、なんだか良く分からない資料で、最高150%を超えるような「リターン結果」が華々しく掲載されているが、これはあくまで本商品の運用方針を元に「1991年から運用していたら」という、ただの空想を図にしたもの。
しかも、各国の株式指数に連動した投資信託を「ずっと持ち続けたら」という「たられば」の話で、今回のコロナショックのように「株式を底値で売って、債権にしちゃった・・・」という失敗をしない前提。
そのため、まったくあてにならないどころか、完全に嘘である。
下部に「あくまでシミレーションです」というような注意書きはあるものの、題名は「運用実績シミュレーション」とあり、高齢者からすれば、「実績」だと勘違いしかねない。
他社の同種の商品でも、このような誤解を招くような表記を目にすることがあるが、何とかならないものなのだろうか・・・
悪戯に射幸心をあおるだけだし、自分たちの「今の成績」を見れば、筆者なら恥ずかしくて、こんな資料は提示できない。
この一つをとっても、本商品の心根がわかる。
比較した方が良い他社商品は?
プルデンシャル生命 変額保険(終身タイプ/一時払タイプ) ★★☆☆☆
注:保険金の最低保証あり、運用成績は本商品よりマシなものが多い
ジブラルタ生命 一時払米国ドル建終身保険 ★★★☆☆
メットライフ生命 サニーガーデンEX ★★★☆☆
注:為替リスクがあるものの、確実に増える