提供会社:明治安田生命
商品名:贈与がかんたん外貨建一時払終身保険
この保険の弱点はここだ!!
一時払いのドル建て終身保険なのだが、同時に暦年贈与も出来るという仕様になっている。
兄弟商品として、「期間が選べる一時払終身保険」というものがあり、その変化球という感じ。
流れとしては、以下の通り。
1 まとまったお金を預ける
2 ドルに替える
3 生存給付金(贈与)の回数を5回、10回から選択。
及び、それらが終了した後の「残り」の終身保険を0倍、2.5倍、5倍から選択。
4 初期費用を取られる
5回タイプ 2.0%(上限)、10回タイプ 4.0%(上限)
5 指定した回数の生存給付金が、子や孫に渡される
6 満了後、終身保険部分が残る(0倍は終身保険部分がないので、ここで終了)
注:暦年贈与の途中で死亡した場合は、残額を保険金として受け取れる。
少々わかりにくい商品だが、要は本来自分でやるべき贈与を代行してくれるということ。
基本的には資産家向けのものだろう。
ある資産家がこう考える。
「このままでは死亡時に莫大な相続税がかかってしまう・・・・」
それを回避するための、初めの一歩が暦年贈与。
税金がかからない110万円までを毎年、子や孫に贈与するのである。
それにより自分の財産を減らし、生前に次世代に資産を移す。
これ自体は、別に自分でやれば良いだけの話。
110万円を子や孫の口座に入金し、お互いの署名、捺印をした贈与契約書を作る。
それだけだ。
だが、これも意外と面倒で、ある年には忘れてしまったり、書面作成を失念してしまったりすることがある。
そのため、この暦年贈与を「保険会社に任せる」という発想がある。
保険会社にまとまったお金を預けて、毎年、子や孫に送金してもらう。
保険会社が間に入ることで、間違いなく資産を移すことが出来るし、金融庁から免許をもらっている金融機関が契約者からの依頼でやっていることなので、この場合、贈与契約書を作成しなくても良いとされている。(それでも一応作っておいた方が無難ではあるが)
また、ドル建にすることで「増やす」ことも出来る。
例えば、予算が1,000万円だとして、毎年110万円ずつ贈与をすれば、9回ほど贈与出来ることになる(110万円×9回=990万円)
だが、これをドル建にすることで、ドルの高い利率で資金を運用することが出来る。
1,000万円を1ドル130円で替えると、76,923ドル。
110万円は約8,461ドルなので、まずこれを渡す。
76,923ドル - 8,461ドル = 68,462ドル
が残る。
本稿を書いている2023年2月10日現在の本商品の利率は3.43%(受取回数10回プランの場合)なので、この残り68,462ドルは3.43%で運用出来る。
ざっと、毎年2,348ドル(68,462ドルの3.43%)ほど増える。
翌年、また110万円分のドル、8,461ドルを贈る。(ここではレートが130円で変化しない、という前提で話す)
再び元本が減ってしまうが、8,461ドルのうち、2,348ドルは「運用益」なので、その分、元本の目減りが少なくなる。
つまり、「ドル化」して運用することで、贈与する資産を「長続き」させることが出来るのである。
円でやれば1,000万円で、110万円を9回しか贈与出来ないが、ドルで運用することで、10回、11回の贈与が可能になる「かも」しれない。
もちろん為替リスクがあるので、何とも言えない部分もある。
仮に1ドル100円という時期が続けば、76,923ドルは日本円換算で769万円になってしまうので、110万円を7回しか出来ないということにもなる。
このあたりは「賭け」
また、本商品では、暦年贈与終了後(5回 or 10回)に終身保険を残すことも出来る。
プランには0倍、2.5倍、5倍という3つがあり、0倍は「保険部分が残らない」という意味なので、暦年贈与のみで終了するが、2.5倍、5倍プランは預けたお金の一部が終身保険となる。
2.5倍プランは「毎年の贈与の2.5回分」、5倍プランは「毎年の贈与の5回分」という意味。
これは「保険金の非課税枠」を意識したものだろう。
税制上、保険金は
500万円×法定相続人分
までは「非課税」で受け取れる。
例えばお父さんが死亡した場合、妻と子2人、3人の法定相続人がいる場合、
500万円 × 3人 = 1,500万円
までの保険金には税金がかからない。
これも資産家の相続対策の「始めの一歩」
本商品では、先に挙げた暦年贈与と、この保険金の非課税枠の2つを満たせるようになっている。
以上、商品概要。
弱点1 暦年贈与自体がどうなるか分からない
本商品自体は、わりと「良く出来ている」とは感じる。
だが、そもそも暦年贈与自体が今後、どうなるか分からない。
「金持ち優遇制度だ!!」
という批判は根強く、110万円枠の減額も昔から何度も検討されている。
また、2023年の税制改正大綱(2024年1月から実施)にて、過去7年の贈与は「持ち戻し」となった。
持ち戻しとは「その贈与は無かったことになる」というもので、要は贈与をしても意味がなく、貰った分も相続財産の中に戻されてしまう。
持ち戻し自体は、亡くなる直前の「駆け込み贈与」を防ぐ意味で、従来から「3年持ち戻し」というルールがあったのだが、今回これが「7年」に延長された。
例えば本商品で10回(10年)の贈与をしていたとしても、仮に最後の贈与(10回目)を行った直後に親が死亡すれば、過去7回分の贈与は持ち戻しとなってしまう。
現状、日本全体が貧困化する中で、国税当局も税収確保に必死。
「金持ちならイジメても良い」
という風潮もあり、今後も暦年贈与には厳しい対応が続く可能性が高い。
このように制度が流動的なので、本商品のように現制度を前提として、5年ないし10年もの長期間資金を預けるのが良いことなのか、悪いことなのか・・・・
この保険の弱点、こう考えろ!!(解決策)
前述の通り、暦年贈与自体がどうなるか分からない。
仮に制度が変わり、本商品に投下した資金を回収しようと解約したとしても、パンフレットには
「ご契約から一定期間内に解約された場合の生存給付金と解約返戻金のお受取合計額は、基本保険金額(預けたお金)を下回ります。」
と記載されているので、おそらく損をするのだろう。(どの程度「損」をするかは、設計書を確認しないと分からない)
ドルの為替リスクがあることは先に触れたが、その上、税制変更リスクもあるので、
「そこまでしてやるべきかねぇ」
という気もする。
いつでも柔軟に変更できるように「自分で」暦年贈与しておいた方が無難かもしれない。
口コミ・評判(契約者から)
・なし
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比較した方が良い商品
暦年贈与を意識した類似商品は数多くあるが、どれも構造的に「今の暦年贈与制度が続くこと」を前提としている。
そのため、商品自体の良し悪しというよりは、暦年贈与を保険でやること、の是非を考えた方が良いだろう。
当サイトの基本スタンスとしては「現金で自分でやる」方が良いと考える。
編集後記