提供会社:プルデンシャル生命
商品名:リタイアメント・インカム(引受緩和型)
この保険の弱点はここだ!!
法人向けの商品。
同社のリタイアメントインカムという商品を「福利厚生」で利用した場合の、補助的な商品という位置づけだろう。
本稿をお読みの方は、おそらく法人保険の導入を検討している経営者で、かつプルデンシャルのライフプランナーから本商品を提案されているのだろう。
そのため「福利厚生とは?」という点については、重々理解されているだろうから、ここでの説明は省く。(詳細を知りたい方は、以下コラム参照のこと)
参考コラム:全員加入の養老の保険料を1/2損金で落とす!!の「落とし穴」
福利厚生で養老保険(リタイアメント・インカムも養老保険)を利用する場合、原則的に全社員を加入させる必要があるのだが(入社3年目以降、などでもOK)、その際
健康状態が悪くて入れない
という社員(ここではBさんとしよう)が出てくる。
そうなると、Aさんには会社負担で保障を提供しているのに、Bさんには何もないということになる。
本人の健康問題で「加入出来ない」のだから、仕方がないと言えばそうなのだが、ある種の不公平感があるのもの事実。
そこで本商品。
商品名に「緩和型」とあるように、加入の際の条件が緩和されているので、どんな健康状態であっても入れる。
但し、加入後5年間は病気で死亡しても、保険金は「それまで支払ってきた保険料だけ」となる。
つまり、保険ではなく単に貯金ということ。
しかし、5年経過すれば死亡保障が立ち上がり、他の社員と同額の保障を用意出来る。
また交通事故死など、健康状態と関係のない死亡(災害死亡と言う)に関してはスタート時から保険金を支払う。
保険会社からすれば「健康状態に問題がある人の保険を受ける」のは怖い。
極端な例で言えば、末期がんの社員の保険などを受ければ、数ヶ月の保険料だけしか受け取れないのに、多額の保険金を支払う可能性があるため、収支が合わないからだ。
そのため、本商品では
・入れるのは入れるけど
・5年間は様子を見させて下さいね(死亡しても支払った保険料のみ)
という条件を付けているのである。
以上、商品概要。
では弱点。
弱点1 税務的にグレー
本商品には、加入後5年間死亡保障がないことは既に述べたが、この状態では「保険」とは言えない。
死亡した時に「それまで支払った金額だけ」であるなら、それは単に預金でしかないからだ。
福利厚生プランとは、
「会社負担で、福利厚生の一環で社員全員で保険に入りますよ」
というがそもそもの主旨であり、それを達成するために養老保険を使うのであれば
・全体の保険料の1/2を損金として処理して良い
ということになっている。
そのため、法人からすれば支払った保険料の1/2が損金になるので、その分、利益を圧縮し、目先の節税になる。
また養老保険であれば、途中の返戻率も高い(95%とか100%とか)ので、内部留保(会社の貯金)にもなる。
これらをメリットと感じて福利厚生プランを導入するのだが、税務当局もそのあたりのことも重々承知している。
そのため、税務調査などでは
「福利厚生プランを隠れ蓑にして、節税や内部留保など、経営者一族への過度な利益誘導をしていないか?」
という点を重点的にチェックする。
そこで「突っ込まれやすい」のが、保険金額である。
例えば、社員Aさんの死亡保険金は300万円なのに、社長お気に入りのCさんは1000万円というようなケース。
これは「公平でない」とされ、損金算入を否認される可能性がある。
なお、役職別に保険金が変わることは、ある程度なら許容されているので、Aさんは平社員だが、Cさんは管理職などの事情があれば別。
だがそのような「役職別」で保険金を設定していたとしても、あまりに過度な「差」があると、これも突っ込みどことなる。
多いのが、
社員 300万円
社長・役員 1億円
というようなもの。
福利厚生プランでは、社長や役員も「従業員のオマケ」で一緒に加入出来るのだが、300万円と1億円ではあまりに差が大きすぎる。
このように保険金に差を付け過ぎると、保険料のバランスも全体のうち社長や役員のものが8割で、社員が2割くらい、というような状態になり、
「どう考えても社員のためではなく、社長と役員のためだろ?」
となってしまう。
実際に、このような理由で否認された場合もある。
で、本商品。
健康状態の悪い社員だけ「保険金が少ない」という状態が5年続くので、どう考えても不公平であり、社員間ですら保険金額が揃っていないことになる。
これを税務当局がどう判断するのか?
プルデンシャルの知人に聞いてみたが、ある者は「どうせ分からない」と言い、ある者は「健康状態で『入れない』よりはマシだから許されるはず」と言い、どうやら統一的な見解はないようだ。
このあたりをどう解釈するべきかなかなか難しいが、税務当局に聞いたところで明確な回答は得られないだろう。
つまりグレーということ。
だが、この話をしてしまうと、リタイアメント・インカムそのものが「保険金を揃えることが出来ない」という大きなデメリットがある(本商品の話からは逸れるが)
リタイアメント・インカムの正式名称は「特殊養老」と言って、始めの一定期間死亡保障を抑えることで、後の返戻率を上げる仕組み。
死亡保険金を「抑えている」が故、あるタイミングになると、
・支払った保険料の総額
が、その死亡保険金をけてしまうのである。
その後は、死亡保険金も徐々に増えていく。
実際の例で言えば25歳の人と、40歳の人が保険金300万円のリタイアメント・インカムに加入した場合、当初は二人とも保険金300万円だが、その後、保険料の総額が300万円を超えるタイミングが異なってくる。
当然、その後の保険金の増え方も違うので、前述の通り
「社員間で死亡保険金額が異なる」
という事象が発生する。
ちょっと言葉だけで説明するのが難しいのだが、実際に各社員の設計書を見てみれば、ある時期から社員ごとに死亡保険金が異なっていることが分かるはずだ。
これなどは「商品そのものが持つ欠陥」のようなもの。
つまりリ福利厚生にタイアメント・インカムに採用した時点で、
社員間の保険金にばらつきが出る
ということは明白であり、その点は税務当局に突っ込まれるポイントとなり得るということ。
この保険の弱点、こう考えろ!!(解決策)
「全員加入」を実現するためサポート的な商品ではあるが、前項で述べた税務リスクがネック。
とは言え、実際問題としてはこのポイントを突っ込まれて「否認」されることは、ほぼない。
まず、税務調査では保険の中身まではまず見ない。
ごく稀に「保険好き」の調査官がいて、保険証券のコピーを全て持ち帰るような場合もあるにはあるが、それでも保険証券には
死亡保険金 〇〇〇万円
としか書いていないので、緩和型で入った社員は実は当初5年間死亡保障がない、とか、リタイアメント・インカムは将来、社員間で保険金のバラつきが出る、などのことは、相当な保険通でなければ分からないだろう。
また、仮にそれが分かったところで、あまりに些細な話であるため、これを持って否認するのも無理筋な気もする。
税務当局としても「確実にダメ」と言えるほどのポイントもないので、この部分で押しても得られる果実が少ない。
但し、税務調査全体の「駆け引きの材料」としては使われる可能性はある。
「社長、保険の件は見逃しますので、こっちは修正して下さいよ」
みたいな感じだ。
そのため、税務調査で変なリスクや負い目を作りたくないなら、健康状態に問題がある社員を「5年死亡保障がない」緩和型に入れる必要もないかなぁ、という気もする。
なお、「多少グレーでも社員は全員入れてあげたい!!」とおっしゃるなら、それはそれで非常に立派な経営者であり、もちろん反対する利用などない。
そのような経営者の社員を思う「気持ち」こそ、福利厚生の芯とも言える。
口コミ・評判(販売側から)
なし
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検討した方がいい他社商品
類似商品はない
編集後記