この保険の弱点はここだ!大樹生命「想いを育む大樹の学資(銀行窓販専用商品)」

提供会社:大樹生命

商品名:想いを育む大樹の学資

この保険の弱点はここだ!!

参考コラム:
学資保険をどうしたらいいか悩んでいる方は
『学資保険はこう考えろ!!』
をご覧いただきたい。

 

ドル建ての学資保険である。

いつかはどこかが出すだろうとは思っていたが、まさかの大樹生命、しかも銀行窓販の専用商品として出してきた。

現時点では三井住友銀行でしか取り扱っていない。

大樹生命は元々は三井生命と言った。

一昔前はその財政基盤の弱さから格付けが非常に低く、

「下手したら潰れるのでは・・・」

などと影口を叩かれてきた会社だが、2015年に日本生命に買収され、今は日本生命系列となった。

最近社名を変え「大樹生命」とリニューアル。

格付けも、保険会社としては一般的なA(S&P)まで回復した。

率直に言って弱小保険会社であるため、大手とまともにぶつかっても勝てない。

そのため昔からエッジの効いた商品を出していたが、その社風は今も変わっていないようだ。

この商品。

なかなか面白い。

但し、プロの目から見て「面白い」のであって、これを普通の人が理解出来るのだろうか?という素朴な疑問がある。

銀行の窓口で、都合の良いことばかり言われて適当に丸め込まれるのが心配。

しかし、商品そのものは悪くはないと思う。

なお、本解説は手元のパンフレットか、ネット上に上がっているデジタルパンフレットを見ながら読んだ方が分かりやすいだろう。

基本的には、

・ドルで積立てる

・決まった利率で運用する(加入時に決まる。ちょっと前までは3%台だったが、今は2%:2019年10月7日時点)

という他社にもあるドル建て商品と同じで、イメージとしては

ドルの定期預金

と変わらない。

しかし、そこに細かいテクニックを散りばめていて、なかなか芸が細かい。

筆者が注目する点は2つある。

1 払込方法に「為替予約」が導入されている

2 目標額を設定できる(目標到達特約)

1について。これはかなり複雑な話で、ここではなるべく分かりやすく説明するが、これを聞いてもチンプンカンプンならやめておいた方が良いかもしれない。

まずは、「普通のドル建商品」の場合を解説する。

現在、各社から販売されているドル建商品の「毎月の保険料の支払い方」は2つある。

1つは、保険料がドルで決まっていて、毎月、その時の為替レートに換算して円で引き落としされるタイプ。

ここでは保険料を100ドルとしよう。

1ドル110円なら、11,000円が引き落とされる。1ドル90円なら9,000円。

為替の影響を受けるので、毎月の保険料が変わる。

対して、毎月1万円など、円の保険料は変わらない商品もある。

こちらは、支払うのは1万円で固定だが、その時のレートで

買えるだけのドルを買う

という仕組み。

例えば1ドル100円の月は100ドル買えるが、1ドル110円になった時には90ドル90セントしか買えない。

毎月の保険料が変動するか?固定なのか?の2種類で、だいたい保険会社によってどちらか決まっている。

本商品では、この2つのどちらでも選べる。

更に第三の選択肢がある。

それが「為替予約」

加入時に「1ドルいくら」と指定されて、支払い期間中、それがずっと続く。

例えば、

保険料 100ドル
1ドル=103円

と決まれば、その後保険料は10,300円で固定。

毎月買っているドルも100ドルで固定される。

何故、こんなことが出来るのか?と言うと、為替予約というテクニックを使うから。

日米の金利差を利用して、将来的にそこから得られる収益を「今のドル」の価値から割り引く。

というもので、何を言っているか分からない人も多いだろうが、別にそれは理解しなくても良い。

より簡単に言えば、

「私(契約者)は、今後〇年間(例えば10年間)1ドル=〇〇〇円で買います」

と約束するわけだ。

それを金融機関が了承し、

「分かりました。今後、その値段で売りましょう」

と契約する。それが為替予約である。

商社や貿易関係の会社などでは、将来の支払いのリスクを軽減するために、為替予約を頻繁に使っているので、別段、怪しいものではない。

ただ、保険に使うのは珍しい。

この為替予約をしておけば、今のレートより割安な価格で「固定」出来るので、契約者からすれば安心だろう。

なお、パンフレットなどを見ると、これをもって

「為替リスクが少ない」

と暗に主張しているようだが、実際はそうではない。それは弱点1で後述する。

このように払込方法が豊富なのが特徴の一つである。




もう一つが、目標額を設定できること。(目標到達特約)

ドルベースで運用を続けていくと、ドル自体は順調に増えていく。

そして、そこに為替が絡む。

例えば1ドル=130円などの急激な円安が来た時に、

「あっ!!今日本円に戻せば支払った分の200万円(例えばの話)が240万円になる!!」

という場面がある。

そんな時、普通なら、自分でそのことを判断して、解約なりの行動をしないといけない。

自分で「今のドルの残高」と「今の為替」を調べて、それらを掛け算しないといけないわけだ。

しかし、本商品には「目標額設定」というオプションがある。

例えば、

「一般的な学資保険のリターンが105~106%程度なので、元本が110%に増えてくれれば御の字」

と思っている人がいるとする。

そんな時は、目標額設定を110%としておく。

すると、払込終了後(例えば10年払込ならそれが終わったあと)、定期的に

今、日本円に換えるといくらになるか?

を判定してくれる。

その結果、当初していた目標の110%になっていれば自動的に円に換えて「利益」を確定する。

既に円に換えているので、あとをこれを子が17歳になって以降、学資として受け取るわけである。

それが目標到達特約。

101%~200%の範囲で設定できる。

現実的なのは110%~120%くらい。

それ以上、例えば150%などを指定する場合は、

「基本はドル運用で良い。しかし、何かの『神風(1ドル=150円などの急な円安)』が吹いて、150%とかになるならその時は利益確定して欲しい」

そんな運用方針となるだろう。

学資をドルで積み立てる場合、

「18歳になった時の為替が読めない。もし、その時に為替が落ち込んでいたら元本割れしてしまう」

という不安がある。

それらの不安を解消するために、このようなオプション(特約)を用意しているのだろう。

なお、このように目標に到達した時、自動的に日本円に転換することを、専門用語で「円転」と言う。

金融商品にはわりと多くみられる手法で、特に珍しいものではない。

保険商品では、従来から銀行の窓口で販売されている

「一時払いもの(一度に大きな金額を預けて、ドルに換えて運用する商品)」

で多くみられる。

それを学資保険に応用したのが本商品である。

このようにドル運用をしたものを、様々なテクニックでリスクヘッジし学資を積み立ていく。

積み立てた学資は、以下の2つの受取方法から選べる。

1 フラット型
(17歳から5年間、同じ金額を受け取る)

2 2倍型
(17歳から5年間受け取るのはフラット型と同じ。但し初回のみ、それ以降に受け取る学資の2倍を受け取れる。その分、2年目以降の金額は減る)

このあたりの話は難しいものではないので、商品パンフレット参照のこと。

商品自体の解説で随分と文面を割いてしまったが、では弱点の解説に移る。

 

参考コラム:
学資保険をどうしたらいいか悩んでいる方は
『学資保険はこう考えろ!!』
をご覧いただきたい。

他社の学資保険の☆評価一覧は、コチラ




弱点1 予定利率がやや低め

ドル建ての商品の予定利率は他社では2%台後半のものが多い。

それに対して本商品は2%(2019年10月時点)

ちょっと物足りない。という感じ。

レートが固定される為替予約や、目標設定特約など、なかなか面白いものが用意されているが、肝心の運用にかかわる「利率」が低いのは今一つだ。




弱点2 「今」は加入するのにあまり良いタイミングではない

現在の状況は日米ともに金利が下がり、運用状況が悪化している。

この状況で加入すると「低い利率」が長い間、固定されてしまう。

実際、本商品も2019年の前半までは3%程度の予定利率だったが、10月には2%に落ち込んでいる。

かと言って、来年は米中貿易摩擦がより激化して、FRBはもっと金利を下げるだろう。

そうなれば、予定利率も1%台になる。

「まだ今の方がマシ」

と考えるか、

「金利(運用環境)が回復してから」

と考えるか。

判断は難しい。

しかしながら、学資が目的であれば、いつまでも悠長なことも言っていられない。

筆者の個人的な感想では「2%なら手を打っても良いのでは?」とも思う。

 

参考コラム:
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弱点3 為替予約は完全なリスク回避ではない

本商品の特徴の一つ。

為替予約。

為替予約は

「今後〇年間(支払期間中)、ドルを〇〇〇円で買います」

という約束を、契約者と金融機関が行う仕組み。

そのため加入時に為替レートが固定され、円高円安に一喜一憂する必要がなくなる。

あくまで感覚だが、1ドル107円くらいの今の相場であれば、100円近辺に落ち着くのではないか?

そう考えると、今の相場より安いし、将来、1ドル120円(円安)などになった時にも、100円前後の支払いで済むので、お得な気もする。

実際、為替予約は円安局面には強い。

しかし、円高局面、例えば1ドル80円などになった時にも、1ドル100円で買い続けないといけない。というデメリットがある。

特に、大規模な金融危機が発生すると、安全資産とされる円が買われるので、一気に高騰して1ドル80円台まで行くこともある。

本来であれば、ここで投資したい。

安いドルを買いたいのに、為替予約が邪魔することになる。

その点、為替予約は万能ではない。

ただ、現在のレートが107円で、為替予約で100円を切るくらいのレートが出るなら、それも悪くはないと思う。

本商品は全体的にこんな調子で「これは良い!!」というポイントがあまりないが「悪くはない」というところが多い。




弱点4 色々あるが「自己責任」

本商品には学資をドルで積み立てるため、今まで解説してきたような「為替予約」、「目標到達特約」などの、契約者の不安を払拭するための「仕掛け」が色々ある。

しかし、それでも自己責任であることを忘れてはいけない。

最悪のシナリオはこんな感じ。

為替予約で1ドル100円が固定。

目標到達特約は少々欲張って120%を指定。

結果、10年間、払込を続けたが、実際のレートは100円を切っていることの方が多かった。

1ドル90円~100円あたりをうろうろしていたため、120%に届かず、目標到達特約も不発。

大学進学にあたり、学資を受け取ったが、支払った金額に比べ1~2%程度しか増えていない。

気苦労のわりには大したメリットがなかった・・・

こんなことも十分あり得る。

そのため、本商品で学資を積み立てるなら、「バックアッププラン」も用意しておくこと。

最悪、ドルがあてにならなかったら「これ(他の定期預金など)」を使う。

というような逃げ道があった方が良い。

他にお金があれば、本商品で積み立てたドルは「とりあえずドル」で貰っておけば良いのだから。

そして、1ドル120円、130円などの円安に振れた時に円に変換する。

そうすれば損する可能性も低くなる。

銀行の営業マンや相談員は耳障りの良いことしか言わないが、原則は自己責任であることを絶対に忘れてはいけない。

 

参考コラム:
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