提供会社:ひまわり生命
商品名:笑顔をまもる認知症保険
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この保険の弱点はここだ!!
参考コラム:
介護保険の基礎を学びたい方は、まず
『民間の介護保険は必要か?「介護保険の考え方」』
『介護付き終身保険のメリット・デメリット』
をご覧いただきたい。
介護/認知症保険の総論について以下でも音声にて解説してます!!
本商品、
ひまわり生命が相当気合入れて開発した
とは聞いていた。
まずはその保障内容を見てみみよう。
昨今流行りの
「認知症の初期段階から払いますよ」
というもので、認知症に限ればそつなく出来ている。
メイン部分(主契約)では認知症の保障のみにフォーカスし、オプション(特約)に介護一時金、介護年金などがあり、こちらで「介護全体」をカバーする作りになっている。
メイン部分は「認知症の際の一時金給付」が柱となっており、
・軽度認知症と診断された時に一時金の5%を先に受け取れる
・その後、本格的な認知症と診断された時に残り95%を受け取れる
というもの。
例えば一時金を100万円だとすると、軽度で5万円、その後、正式に認知症と診断された際に95万円が給付される。
なお、「軽度」を経ずに(気づかずに)一気に認知症と診断された時には、先に5万円を受け取っていないので、100万円の給付となる。
軽度認知症は医学的には「MCI」と呼ばれる。
最近、明治安田が、その医療用語をそのまま使った「MCIプラス」という商品を販売して、わりと一般の人でも耳にする機会が増えたが、そんなMCIという「超初期段階から払う」というのが本商品でもセールスポイントの一つとなっている。
更にそこに、
・骨折治療5万円(10万円も選択可能)
・災害死亡(交通事故など)50万円
注:正確には骨折治療が主契約の中心に据えられているのだが、それはあくまで契約上の「構成」の話であって、実感としては認知症の「オマケ」に骨折がついているイメージ
が付いている。
整理すると、一時金100万円の場合、
・軽度認知症(MCI)で5万円
・認知症確定で残り95万円(5万円を受け取っていない場合は100万円)
・骨折で5万円
・災害死亡で50万円
これが基本セットということ。(一時金は最大500万円まで増額可能)
これだけでは認知症だけに限定した保険だが、さらに特約(オプション)として、
・介護一時金(要介護1で支払い)
・介護年金(要介護3で支払い)
・特定疾病診断保険料免除特約
を付けて、認知症以外も保障される「介護全体の保険」に仕立てることが出来る。
以上が全体象。
ではここからは弱点(デメリット)の解説に入りたい。
参考コラム:
介護保険の基礎を学びたい方は、まず
『民間の介護保険は必要か?「介護保険の考え方」』
『介護付き終身保険のメリット・デメリット』
をご覧いただきたい。
他社の介護保険の☆評価一覧は、コチラ
弱点1 認知症だけにフォーカスしすぎ
本商品を理解するためには、「介護」と「認知症」について、具体的な数字を理解することが重要である。
まず介護についてだが、そもそも一生を通して「介護」を必要とするのは、
男性の1/3 33%
女性の1/2 50%
である。
それ以外は、がんや心筋梗塞などで「介護になる前に死ぬ」か、最後まで健康でぽっくり逝く「介護にならずに死ぬか」
なお、男性より女性の方が介護になる確率が高いのは、男性は60代、70代で亡くなってしまう方も多い一方、女性は総じて長生きなので、最終的に「介護」に行く着く人が多いということ。
まず、これが介護を考える上での基礎となる。
次に認知症。
介護と言うと「イコール認知症」だと思っている人が多いが、実は違う。
認知症の患者数の統計を見ると、2012年には高齢者の15%が認知症であったが、2025年には高齢者全体の20%が認知症になると推測されている。
介護を必要とする割合が男性より女性の方が多いのと同じように、認知症についても女性の方が多い。
男女全体の20%が認知症であるなら、
男性15%~18%くらい 6,7人に1人
女性22%~25%くらい 4,5人に1人
が妥当なところでないかと思う。
注:2025年に「認知症が20%」というのは推定に過ぎないので、男女比も当サイトの推測だが、実際、こんなもんだろう。
冒頭で説明したが、介護を必要とする人は高齢者全体で男性の33%、女性の50%なので、認知症の確率と照らし合わせれば男女ともに、
要介護者の約半分くらいが認知症が原因
男性 要介護 33% うち認知症 15~18%
男性 要介護 50% うち認知症 22~25%
と推定される。
多くの人が、
介護=認知症
と思い込んでいるフシがあるが、実際のところ認知症は半分程度で、もう半分は「認知症以外」ということである。
さて、随分と前置きが長くなったが、本題に入りたい。
本商品はメイン部分(主契約)で認知症にフォーカスし、オプションである特約の「介護一時金」、「介護年金」で介護全体をカバーするような構成だが、先のデータを見れば分かる通り、認知症は介護の「約半分」でしかないので、メイン部分だけでは片手持ち。
この商品の名前は「笑顔をまもる認知症保険」だが、まさにその名の通り、認知症だけに特化した保険だと理解した方が良い。
実際のところは、オプションの特約も契約しなければ「介護」の保険とは言えない。
弱点2 介護年金が「要介護3」から
弱点1で挙げたように、メイン部分だけでは認知症だけしかカバーできないので、介護全体の保障を揃えようとすると、特約(オプション)の
・介護一時金
・介護年金
が必要となる。
それぞれの給付の条件は
・介護一時金 要介護1から
・介護年金 要介護3から
となっているが、要介護は1が最も軽く、2、3、4、5と数字が上がるほど症状が重いため、要介護1で受け取れる介護一時金はわりと軽い状態の時に、要介護3からの介護年金は結構症状が進んでからでないと受け取れない。
なお、他社の介護系の商品では「要介護2から」としているところが多いので、本商品の特約に関しては
・介護一時金 要介護1から 他社より条件が良い
・介護年金 要介護3から 他社より条件が厳しい
と言える。
筆者自身、認知症の父親介護を亡くなるまで10年間経験しているが、要介護1などは、後から振り返れば「ほんのスタート」という感じで、この段階で一時金を受け取れるのはありがたい。
あくまで筆者の体感だが、1と2の差は大きいし、2と3の差はもっと大きい。
言い方は悪いが、1から2、2から3と『倍々で精神が壊れていく』というようなイメージで、要介護3というのは傍から見ると、相当症状が進んでいるように見えるだろう。
その点、本商品の特約は、介護一時金はとても条件が良いのに、介護年金は「症状がかなり進まないと(要介護3)」受け取れない。
介護をする家族からすれば、一時金よりは、毎年貰える年金の方がありがたい。
それが要介護3にならないとダメというのは、かなりのマイナス。
一時金の条件が良い分、デメリットとして際立ってしまう。せめて他社なみに要介護2からだと良かった。
むろん事情は分かる。
保険会社からすれば、一時金は要介護1でも、要介護2、もしくは3でも「結局はいつかは払う」ものなので、早めに払うのはわりと簡単だ。
対して年金は「生きている限りずっと支払う」ので、要介護1から支払っていては、いつまで払い続けないといけないのか分からない。
当然、保険料も相当高くなるので売りにくい。
そのため要介護3くらいからにしておけば、終わり(死亡)も早いので、年金を支払う期間が少なくて済む。つまり保険料を安く設定できる。
販売のことを考え、
・認知症も早期で支払います(主契約部分)
・介護も要介護1から支払います(介護一時金特約)
という「すぐ受け取れる感」で引きつけておいて、本当に介護生活で役に立つ「介護年金」については、要介護3からという厳しい条件を付ける。という作戦なのではないか?
一時金と年金、給付の条件の差があり、何ともバランスが悪く感じる。
弱点3 保険料が高く、自分で貯めているのと変わらない
読んだまんまの弱点。
実際の例を挙げて説明しよう。
契約例:50歳 男性
主契約(メイン部分)
・認知症一時金 100万円
・骨折 5万円
・災害死亡 50万円
保険料:2,410円/月 終身払
ここでは仮に「75歳で認知症と診断された」と仮定する。
注:実際の75歳近辺が多い。
75歳までの総支払保険料は約72万円(2,410円×12か月×25年)
これで一時金100万円を受け取れるので、28万円ほど「得」をしていることになる。
しかし、弱点1でも述べた通り、認知症になるのは、男性の15~18%程度で、5,6人に1人である。
つまり、この保険に加入していても、実際に100万円を受け取って「得」するのは、5,6人に1人であり、他の4,5人はただの「払い損」ということになる。
75歳時点で認知症になれば、確かに28万円ほど得はするが、これが80歳だと総支払保険料も約87万円に増え、100万円との差額はわずか13万円。85歳なら総支払保険料が約101万円となり、一時金100万円を超えてしまっている。
・15~18%程度の確率でしか受け取れず、8割以上の人が「払い損」
・75歳で貰えても+28万円程度、80歳なら+13万円、85歳なら―1万円
以上のことを考えると、この保険に入らずに自分で貯めておいた方が良いのでは?とも思う。
なお、特約になるともっと条件が悪くなる。
先ほどと同じ50歳 男性の場合、
介護一時金100万円 保険料+4,200円/月
介護年金60万円/年 保険料+4,500円/月
介護一時金は「要介護1」で受け取れるが、これも厚労省の調査では要介護1に認定されるのは平均75歳近辺。
50歳から75歳まで、毎月4,200円を負担すれば総支払は126万円となる。
これで100万円を受け取っても逆ザヤ。
また、介護年金に関しても、弱点2で解説した通り要介護3にならないと受け取れないので、実際に給付されるのは80歳を超えてから、という場合が多いだろう。
ここでは仮に80歳から給付が始まったとすると、それまでの総支払保険料は162万円となる。
介護年金は年間60万円なので、3年分(180万円)以上受け取れればプラスとなる。
ただ、どうだろうか?
要介護3から3年以上。
筆者の父は要介護3になってから2年程度で亡くなったが、それでも長い方で、周りの話やデータなどを見ても、要介護3まで行けばそこまでは長くもたない。
そうなると、この介護年金も逆サヤになる可能性が高い。
それと別の話として、要介護3まで症状が進んだのであれば、そこからあまり長いのも、本人的にも家族的にもいかがなものか?とも思う。(介護経験者の率直な感想として)
また、話の原点に戻れば、そもそも介護を必要とするのは、
男性の1/3 33%
女性の1/2 50%
なのだから、仮に介護になっても逆ザヤ、ならなければ「大損」である本商品に入る理由をあるのだろうか?
もちろん、70歳前などの「超早期」で認知症や介護になる方もいて、そういう場合には役に立つ場面もあるだろうが、数としてはごくわずか。
この保険に入るよりは
「自分で貯めておいた方が良い」
というのが筆者の感想。
参考コラム:
介護保険の基礎を学びたい方は、まず
『民間の介護保険は必要か?「介護保険の考え方」』
『介護付き終身保険のメリット・デメリット』
をご覧いただきたい。
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弱点3 余計なものが付いているので保険料が割高
再び先の保険料の例を見て欲しい。
一時金 100万円
男性 60歳 3,430円/月
75歳までの総支払 約62万円
先ほど「男性3人に1人が認知症・介護」だと説明した。
そうなると、60歳男性が3人いれば、その中に1人が介護になるのだが、その3人が75歳までに支払った総額は
62万円 × 3人分 =186万円
となる。
この中から、「1人」が100万円を受け取る。
3人が186万円積み立てて、100万円。
そうなると、
残りの86万円は保険会社が取ってるのか!!ぼろ儲けだな!!
と思うかもしれない。
ちなみに他社の同様の商品では、3人分の保険料の合計が75歳~80歳くらいまでに「1人分の給付金額」になるように保険料が設定されている。
先ほどの例で言えば、75歳までに3人がそれぞれ40万円くらいを支払って、
40万円×3人分=120万円 → 1人に100万円を給付(20万円が保険会社の利益)
こんなイメージ。
そうなると、ひまわりのこの商品はもの凄く暴利をむさぼっているような気がするが、それもちょっと違う。
本商品は一時金に「骨折5万円」だとか「災害50万円」などの
余計なもの
が付いていることを忘れてはいけない。
この「余計なもの分」他社よりは保険料が割高になっているのである。
骨折で5万円や、交通事故で50万円なんて介護の本質から逸れる保障なので、筆者としては、このようなものは省くか、もしくは特約(オプション)扱いにして、本体はもっとスリムにすれば良かったのに。とは思う。
他社より割高。と言う点は十分な弱点だろう。
比較した方が良い商品
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