この保険の弱点はここだ!明治安田生命「つみたてドル建終身」

提供会社:明治安田生命

商品名:つみたてドル建終身

この保険の弱点はここだ!!

参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

 

一言で言えば「良いところは一つもない」

後発商品なのに、先行するライバル会社に比べ色々なところで負けている。

最近の明治安田は「かんたん保険シリーズ ライト!!」というラインナップで、わりと返戻率の高い積立保険や、学資保険などを販売しており、

多少赤字でも、それを客寄せパンダにして若い世代を取り込む

という戦略をとっている。

本商品も2019年2月に販売開始ということで、かなりの「無茶」をしてくるのでは?と期待していたが、商品スペック、予定利率ともに冴えない。

商品としては、第一生命グループである第一フロンティア生命が銀行の窓口で販売している「つみたて終身・フロンティア」に酷似している。

保険と言うよりは、ただの「ドル貯金」であり、これを保険会社が販売する理由が分からないが、このあたりはおいおい触れるとして、まずは商品の概要から。

本商品の特徴は、以下の3つ。

1.保険料は、円で一定金額

2.払込期間中の死亡保障がない

3.予定利率が固定+変動のハイブリッド

それぞれの項目を見てみよう。




1.保険料は、円で一定金額

例えば、保険料を「1万円」と決めれば、それがずっと固定される。

毎月1万円で「その月のレートで買えるだけのドルを買う」という仕組み。

1ドル 100円であれば 1万円 → 100ドル購入
1ドル 110円であれば 1万円 → 90.90ドル購入
1ドル 90円であれば   1万円 → 111.11ドル購入

円高(1ドル90円など)であれば、多くのドルを購入出来て、円安(1ドル110円)であれば、買えるドルの量が減る。

なお、一般的なドル建の商品は保険料が「ドル」で決まっているので、その時々の為替の影響を受けるため、保険料が毎月変わる。

例えば保険料が100ドルの場合、為替によって以下のように変動する。

1ドル 100円であれば 100ドル → 11,000円
1ドル 110円であれば 100ドル → 10,000円
1ドル 90円であれば   100ドル → 9,000円

こちらは毎月保険料が上下するので、1ドル120円、130円など、「円安」が進むと結構痛い。

しかし、毎月きっちり100ドルは買えているので、将来のリターン(返戻金)はしっかり積み上がる。

対して、「毎月1万円」など円で保険料が固定されていると、毎月の変動はないので、精神的な負担はないが、円安の時などには少ないドルしか買えないということになる。(逆に円高の時には多く買えるが)

つまり、購入しているドルが「多かったり」、「少なかったり」するので、将来のリターンは読めない。

どちらにもメリット・デメリットがあり、個人の好き好きというところだろう。




2 払込期間中の死亡保障がない

この商品には死亡保障がない。

死亡した時には「払った分」が戻ってくるだけ。

ただ、交通事故などの「不慮の事故」で亡くなった場合のみ、「払った分」の1.1倍が支払われる。

つまり、0.1倍だけ増えるので、その点だけで一応は保険に分類されてはいるが、実質的にはただのドル貯金だと思った方が良い。

なお、保険料を支払いきった後は保険金は1.05倍になる。

つまり5%ほど上乗せされるのだが、まあ、これもオマケ程度の話。




3.予定利率が固定+変動のハイブリッド

予定利率とは運用の目安となる指針で、高ければ高いほど良いのが、「固定型」と「変動型」の2つがある。

固定型は加入時に「〇%です」と言われ、それがずっと続く。

逆に変動型は一定期間ごとに利率が変わる。毎月変わるようなものもあれば、数年単位で変わるものまで様々。

本商品では、保険料を支払っている期間(第一保険期間と言う)は固定、保険料を払い切った後(第二保険期間と言う)は「5年ごと変動」となっている。

つまり、スタートしてから、毎月保険料を支払っている間は、加入時に決まった利率で運用されるが、それが終わると、まず

「ここから5年間は〇%で運用します」

と言われ、それがその後、5年おきに変更される。

なお、変動の予定利率はその時の経済情勢やアメリカ国債の利回りなどによって変わるが、基本ドル建の商品であれば、アメリカの国債の利回りにほぼリンクしていると思って良い。

なお、予定利率については、こちらで詳しく解説しているので、興味がある方はご覧いただきたい。
『同じ3%でも何故違う?「超」わかりやすい!!予定利率と利回りの違い!!』

「固定型」、「変動型」どちらが良いか?

筆者も良く聞かれるが、これは状況にもよる。

加入した時に予定利率が高ければ、それをずっと固定してくれるのであれば、その方が良い。

しかし、加入時の予定利率が低い場合、それがずっと固定されてしまうので、将来の上がることを期待して変動型の方が良いかもしれない。

今の状況(コロナの影響で低金利、低利回り)であれば、変動の方がおススメ。

以上、ここまでが商品の概要。

続いて、弱点の解説に移る。

 

参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

各社の外貨建終身保険の☆評価一覧は、コチラ




弱点1 予定利率が低い

まあ、分かりやすい弱点だ。

本商品の予定利率。2020年4月時点で、

1.80%(最低保障は、0.25%)

となっている。

つまり、払込期間中は、1.80%で固定される。

払込終了後はその時になってみないと分からないので、何とも言えない。

なお、ライバル商品(同じような、死亡保障がほとんどないドルの貯蓄商品)の予定利率は以下の通り。

第一フロンティア生命 つみたて終身・フロンティア(外貨建) 毎月変動 2.20%(最低保障:2.0%) 

マニュライフ生命 こだわり個人年金[外貨建] 毎月変動 2.29%(最低保障:1.5%)

第一フロンティアは毎月変動であるものの、最低保証が2.0%と、明治安田の1.8%より高い。

これだけを見ても、本商品を選ぶ理由はない。




弱点2 為替手数料が高い

こちらも明快な弱点。

為替手数料がドルを購入する際に1ドル当たり0.5円、売却する際にも1ドル0.5円

保険料 毎月1万円で、その時のレートが1ドル110円だとすると、1ドル110.5円で購入することになる。

また、解約などをして返戻金を円で受け取る時には1ドル109.5円で売却する。

買う時に0.5円、売る時に0.5円。

なお、他社では為替手数料が0.25円、もしくは0.01円などというところもあるので、本商品の手数料が高いということになる。

例えば将来3万ドルを解約返戻金として受け取る時(1ドル110円とする)に、為替手数料の違いで実際に受け取れる金額も変わる。

A社   為替手数料 0.01円 3万ドル×109.99円 = 329万9,700円
本商品   為替手数料 0.50円 3万ドル×109.50円 = 328万5,000円

その差は約1.5万円。

為替手数料などは、安いにこしたことはないし、弱点1で述べた通り、予定利率で他社に遅れをとっているので、更に手数料まで高いとなると、ちょっと痛い。




弱点3 復活制度がない

本商品には復活制度が適用されない。

何かしらの事情で保険料の支払いを滞納した場合、保険は「失効」と言って、その効力を失ってしまうのだが、その救済措置として「復活」がある。

滞納していた分の保険料をおさめ、簡単な書類を提出することで、契約を元の状態に戻してくれるのである。

普通の保険会社、普通の商品であればだいたい用意されているのだが、本商品にはそれがない。

保険料を滞納すれば、即終了。

また、本商品には解約控除と言って、10年以内に解約した場合、ペナルティがある。
注:解約する時期によって、0.1%~13%程度の積立金からペナルティが引かれる。

そのため積立金は目減りする。

もちろん保険料を払わない方が悪いのだが、銀行口座やクレジットカードの変更の際に、ついつい保険会社に連絡をし忘れて、2ヶ月程度保険料が落ちなかった。などということもある。

それで、復活も出来ずに、強制的に解約され、加入10年以内であればペナルティも取られる。

実態としては、ただのドル貯金なのに、この処置はちょっと乱暴。

予定利率も低いし、手数料も高いし、ちょっとしたミスで強制解約されるのであれば、米国債のETFでも買った方が良い。

注:米国債ETF 保険商品と同様、米国債で運用する投資信託を、株のように上場したもので、手軽に売り買い出来る。
iシェアーズコア 米国債7-10年などが有名。

申し訳ないが、良いところが一つもない商品。

 

比較した方が良い商品

第一フロンティア生命 つみたて終身・フロンティア(外貨建) ★★☆☆☆

マニュライフ生命 こだわり個人年金[外貨建] ★★★☆☆

 

参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

各社の外貨建終身保険の☆評価一覧は、コチラ