この保険の弱点はここだ!PGF生命「米国ドル建終身保険(保険料円払込型)介護タイプ」

提供会社:PGF生命

商品名:米国ドル建終身保険(保険料円払込型)介護タイプ
円払込定額型 米国ドル建終身保険Neo(三菱UFJでの取扱の名称)
円ぴた終身US(みずほ・三井住友他での取扱の名称)

この保険の弱点はここだ!!

参考コラム:
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』

民間の介護保険は必要か?「介護保険の考え方」

「介護付」終身保険のメリット・デメリット

介護/認知症保険の総論について以下でも音声にて解説してます!!

 

PGF生命はプルデンシャルグループの一社で、銀行で販売する商品を開発している会社。リーマンショックで破綻しかけた大和生命が前身(プルデンシャルグループに買収された)

本商品はそんなPGF生命が販売するドル建終身保険で、もちろん銀行窓口でしか加入出来ない。

なお、同社には「ほぼ同じような商品」で、米国ドル建終身保険(介護タイプ)というものもある。(解説はコチラ

これを土台にして、

相当こねくりまわしたな・・・

というものが本商品。

お年寄り向けにドルというリスクの「臭い」を消して、売りやすくしたような印象だ。

なお、販売元のPGF生命では「米国ドル建終身保険(保険料円払込型)介護プラン」となっているが、扱っている金融機関によって商品名が異なる。

三菱UFJ         円払込定額型 米国ドル建終身保険Neo
みずほ、三井住友、他   円ぴた終身US

このように、扱う金融機関によって看板こそ違うが、内容は全く同じ。

また、この商品には本稿で解説する「介護プラン」以外にも「基本プラン」というものも存在する。

米国ドル建終身保険(保険料円払込型)基本プランの解説はコチラ

本商品の特徴は以下の3つ。

1 保険金の支払い対象が死亡・高度障害だけでなく「介護」も含まれる

2 保険料が日本円で「一定」である

3 為替の影響により、将来の保険金が増減する

1つずつ解説していきたい。




1 保険金の支払い対象が死亡・高度障害だけでなく「介護」も含まれる

通常の終身保険は、死亡した時と高度障害になった時に保険金を受け取れるが、本商品では「介護状態」になった時にも保険金が受け取れる。

なお、介護で保険金を受け取れば、その後、死亡しても保険金はない。

要は「死亡」「高度障害」「介護状態」どれか一回で保険金を受け取った瞬間、この契約は無くなるということ。

本商品における「介護状態」とは以下のように定義されている。

・要介護2以上と認定
・満65歳未満の被保険者が、PGF生命所定の要介護状態に該当し、180日以上継続

要介護2以上は分かりやすい。

公的介護制度の要介護2以上、つまり、要介護2、3、4、5になれば払うということ。

次の「PGF生命所定の要介護状態」だが、これは「PGF独自ルールに該当すれば」という意味。

以下がその概要となっている(パンフレットより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝返り、歩行、食事、トイレ、義替え、入浴など、生活に必要な行動を項目ごとに「どれほど不自由か?」ということを

全介助 or 一部介助

に分類し、その結果を数える。

それが、ある一定レベルを超えれば「介護状態」として認定し保険金を支払う仕組みとなっているが、かなり条件が厳しく、これに該当するなら

その手前で要介護2の認定を受けている可能性が高い

そのため「要介護2くらいで貰える」と思っておけば良いだろう。

認定の基準としては、他社でも「要介護2以上」としていることが多いので「まあ、こんなもん」という感じ。

PGF独自ルールは厳しいものの、要介護2以上で払うと言っているので、他社標準という感じだろうか。

介護を心配するのは、一般的に50~60歳以上からなので、本商品は高齢者向けと言えるだろう。




2 保険料が日本円で「一定」である

ドルと聞いて「リスクがある!!」と思う人は多い。

そのリスクを多少マイルドにするための仕組みが「保険料を日本円で一定にする」ということ。

一般的なドル建の保険商品は、保険料はドルで決まっていて、日本円で支払う保険料はその月々の為替レートによって変動する。

保険料が100ドルで、ある月のレートが1ドル120円(円安)なら、12,000円。違う月のレートが90円(円高)なら9,000円という感じ。

これが「嫌だ」という人がいる。特に高齢者に多い。

たとえば年金生活者の場合、毎月入ってくるお金は一定だから、保険料が安くなる分には良いが、高くなれば、すぐにそれが家計を圧迫する。

そのため、

「ドル?毎月保険料が変わる?いやー、恐いわ!!」

などというアレルギーを起こすのである。

そこで、保険料は日本円で一定にしてあげる。

支払う保険料は毎月1万円ポッキリ
注:あくまで一例。保険料はいくらにでも設定できる。

こう言ってあげると安心するし、売る方としても言いやすい。

但し、これは別段為替リスクが無くなっているわけではない。

保険料は毎月1万円で固定されているが、裏側の処理としては

その月のレートで、1万円で買えるだけのドルを買っている

と言うだけ。

円安(1ドル120円)なら、1万円で83.33ドルが買い、円高(1ドル90円)なら111.11ドルを買う。

結局のところ、円安なら少ない量しか買えないし、円高なら多く買えるし、ということで・・・

思いっきり為替の影響は受けている

しかし、保険料を負担する方からすれば、「毎月1万円」で変化がないので、普段は為替のことを考えないで済むというだけ。

高齢者向けへの分かりやすさを優先した「仕掛け」とも言える。




3 為替の影響により将来の保険金が増減する

これ、凄い難しい。

この仕組みを銀行の窓口で説明して「本当に理解出来るのか?」という素朴な疑問がある。

筆者のようなプロでもパンフレットをちゃんと読まないと分からなかった。

ここではなるべく分かりやすく説明するよう心掛けるが、これを読んで「チンプンカンプン」なら、この商品は止めておいた方が良い。

そんな心構えをして読んで欲しい。

まずは、大前提。保険料と保険金について。

これを理解しないと、先に進まない。

保険会社は契約者が払う「保険料」で、万が一の時の「保険金」を決める。

多く払えば保険金も多い、少なければ保険金も少ない。

例えばこんな例。毎月1万円を10年間払う。

そうすると、10年間の総支払保険料は120万円となる。

保険会社はこの120万円でどの程度の保険金を提供出来るか考える。

加入した人の年齢や性別、その場合の死亡率などを計算して保険金をはじき出す(もちろん個別に計算しているわけではなく、既に計算した数値が決まっている)

ここでは「保険金150万円」としよう。

つまり、毎月1万円、トータル120万円を支払うという「約束」の代わりに、保険会社は「死んだら150万円払う」という「約束」をするのである。

これが終身保険の基本。

しかし、この商品は「ドル建の保険なのに、保険料は日本円で一定」である。

引き続き毎月1万円だとしよう。

この1万円で、前項で説明した通り「毎月、その時のレートで買えるだけのドルを買う」ということを繰り返す。

1ドル110円の時もあれば、120円、もしくは90円、80円の時もあるかもしれない。

毎月、買えるドルの量は変わり、それが10年、15年続く。

そうなると、一つ困ったことが起こる。

最終的にどれほどのドルを買えるか、加入した時点では分からない!!

のである。




話は戻るが、終身保険は

「いくら払ってくれる(保険料のトータル)」

ということが分かってはじめて

「じゃあ死亡時にはいくら払います(保険金)」

ということを決める。

それなのに、本商品では「いくら払ってくれるか?(ドル)」が分からない。

それでは保険金を設定することが出来ない、ということになる。

そのため、本商品ではトータルで支払う保険料を「仮に決めておく」という、やや強引なことをする。

その「仮の条件」が以下。(パンフレットより抜粋)

 

 

 

 

 

加入した時点でのレートに概ね+20~25円を上乗せしたレートで計算する。

実際にやってみよう。

例:毎月1万円 10年支払い 総支払保険料 120万円(1万円×12か月×10年)

加入時のレートが108円だとする。

もし、この108円が10年間ずっと続くのであれば、120万円で11,111ドルを購入できることになるが、何度も繰り返す通り「為替は変わる」ので、将来どうなるか分からない。

そのため、上記の表に照らして108円の場合「1ドル130円」を仮に適用する。

1ドル130円で120万円を換えると、9,231ドルとなる。

保険会社はこの9,231ドルをもとに保険金を決める。

年齢や性別などによっても変わるので、一概には言えないが、本商品の設計書を見ると、だいたい1.5倍~2倍くらいの保険金となるようだ。

分かりやすく、ここでは15,000ドルとしよう。

まず契約時には、

仮レート 1ドル130円
保険金   15,000ドル 

という条件でスタートする。

しかし、実際のところ、1ドル130円は相当高い(円安)

この場合、契約時には1ドル108円だったのだから、多少ブレても1ドル130円よりは、かなり割安にドルを買っていける可能性が高い。

毎月1万円で1ドル105円、109円、110円と買っていく。ある段階で、9,231ドルに到達する。

この9,231ドルとは何か?

加入時に「仮」で決めておいたレート 1ドル130円で計算した「120万円でかえるドルの総量」である。

根本的なことを言えば、この15,000ドルの保険金を提供するために、保険会社としては9,231ドル(1ドル130円で計算)を積み立ててくれれば良いわけである。

為替のレートが加入時の108円近辺で安定していて、平均して108円でドルを購入出来ていれば、毎月92.6ドルを買える。

そうなると8年4ヵ月(100ヵ月)で9,260ドルとなり、この保険に必要な資金9,231ドルを上回ることになる。

保険会社としては、保険の提供に必要な9,231ドルを積立てくれたわけだから、もう何のリスクもない。

が、契約は10年間なので、今後も毎月1万円の支払いは続く。ドルは「上乗せ」して積立られていく。

「だったら保険金も上乗せしましょう!!by PGF生命」

ということになる。

これが保険金が途中で増える仕組みである。

逆に保険金が「減る」ケース。

これは為替が強烈な円安になって、1ドル150円などになった場合だ。

仮条件の1ドル130円で計算していた9,231ドルより「少ない量」しか買えないので、

「お客様、申し訳ございませんが、積立の方がちょっと足りませんで。。。保険金の方を減らさせて頂きます by PGF生命」

となる。

但し、契約時の「仮レート」がその当時のレートに+20~25円とかなり上乗せして計算しているので、実際には減ることはあまりなく、保険金が増えることの方が多いだろう。

なお、ここではあくまで「分かりやすさ」を優先して説明したので、実際には為替手数料などが影響して、保険金額増えるタイミングなども、もっと後ろにずれる。

あくまでイメージとしてご理解頂きたい。

しかし、なんだろう・・・

自分で説明していも「いやー、複雑だわ」という感じで、これを窓口でちゃんと説明しているのか?この商品のターゲットとなる高齢者が、この話をちゃんと理解できるのか?という点については、大いに疑問ではある。

まあ、そのあたりは筆者が知ったことではない。

繰り返すが、この説明を読んで「はあ?」という感じなら、止めておいた方が良い。

以上、商品概要。

次に弱点の解説に入る。

 

参考コラム:
介護保険の基礎を学びたい方は、まず

『民間の介護保険は必要か?「介護保険の考え方」』
『介護付き終身保険のメリット・デメリット』
をご覧いただきたい。

他社の介護保険の☆評価一覧は、コチラ




弱点1 支払った保険料のわりの保険金が少ない

先の解説の通り、本商品は加入時に「仮のレート」で計算して、総支払保険料(ドルベース)を決め、それによって保険金が決まる。

この「仮レート」が実際のレートよりかなり割高なので、その分、支払った保険料で買えるドルの総量が少なくなってしまう。

総支払ドルが少ないから、保険金も少ない。

もちろん、あとから増える可能性は高いが、そこまでには8年、9年の時間がかかるため、スタート当初の保険金は「少なめ」となってしまう。
(詳細は商品概要「3 為替の上げ下げにより、将来の保険金が増減する」を参照)

こんな小難しいことをするよりは、毎月多少の増減があってもシンプルに「保険用をドルで決めて」入った方が良いのではないだろうか?

銀行の窓口で

「安心して下さい。ドル建なのに保険料は円で一定です!!」

という売り文句を言いたいがためだけの商品という印象。

それをを実現するために、相当余計なコストがかかり過ぎている。




弱点2 介護の分だけ保障額が下がる。

本商品には「介護」の保障がついている。

その分、死亡と高度障害だけの保険より「割高」となっている。

保険会社からすれば、死亡する平均年齢より、介護状態になる平均年齢の方が若いので、

「死亡保険金を払うよりも、手前(早い段階)で保険金を支払う」

ことになる。

つまり、運用期間が短くなるので、その分、手前で「多め」に保険料を集めておかないといけない。

だからこそ割高になる。

本商品の各年齢ごとの保険料を見ると、介護付きの方が、介護なし(死亡、高度障害)より10%程度保険料が高い印象。

10%の上乗せを、高いと見るか、妥当と見るかは人それぞれだろう。

この商品は「介護状態になれば保険金を受け取れる」が、別に言い方をすれば

「介護にならなければ死亡した時にしか保険金を受け取れない」

ということでもある。

そうなると、通常の死亡・高度障害のみの終身保険と変わらない。

結局、10%の上乗せを支払ってきただけ「ムダ」ということになる。

あくまで確率論だけで言えば、生涯を通して、介護のお世話になるのは、

男性 1/3
女性 1/2

である。

男性は介護のなる前に、がん、心臓、脳などの病気で亡くなってしまうことも多いが、女性は全般的に長生きなので、介護状態になる可能性が高い。

そうなると、この商品に入っている人のうち、男性2/3、女性1/2は「介護のお世話にならない」ので、結果的に「10%の上乗せ」は意味がないことになる。

ちなみに筆者は介護付きの終身保険には懐疑的。

なるかならないか分からないものに10%も上乗せを支払うくらいなら、自分で貯めておいて「介護になったらそれを使えば良い」と割り切っている。

また、どうせ死ぬば保険金を受け取れる。

介護状態になったとしても、そこから長くてもせいぜい5,6年であの世にいくのだから、家族にとっては「お金が入ってくるのが多少遅れる程度」の話。

わずか5,6年手前で貰うために10%ものコストは支払いたくない。

 

参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

各社の外貨建終身保険の☆評価一覧は、コチラ




弱点3 銀行の窓口から入る理由があるか?

今まで述べてきたように、この商品は極めて複雑で、加入時にしっかりと理解したとしても、その内容を覚えていられる人は少ないだろう。

また為替リスクもある上、保障内容も死亡だけでなく介護も含まれる。

契約後もしっかりとしたフォローが必要な商品であることは間違いない。

銀行の窓口で販売している担当者が悪いわけではないが、彼ら彼女らは必ず2,3年おきに移動するので、本商品の支払いが終わる頃や、実際に介護状態になって保険金を請求する時には、既にいない。

筆者はこれが銀行窓販の最大の弱点だと思っている。

言い方は悪いが「売りっぱなしでケツを拭かない」ということ。

こんな複雑な商品に入るくらいなら、もっとシンプルな「普通のドル建終身保険」を経験豊富な保険会社の担当者から入った方が良いのでは?と思う。




弱点4 為替リスクがある

本商品は、日本円の支払が一定ということを特徴としていて、

・毎月の保険料は変わらず

・ドル建終身の魅力である高い利率を狙えるという

点を強調している。

とはいっても、やはり本商品は、ドルで運用(主に米国債)しているため、為替リスクは当然ある。

毎月の保険料の積み立て額についても、為替の動きによって増減するし、将来、解約返戻金や保険金を受け取る際にも、その時の為替が影響する。

本商品は特にドルのリスク臭を何とかごまかそうとしているような気がする。

ドルである以上リスクはある

そのことは、しっかりと認識した方が良い。




弱点5 為替手数料が高い

ダメ押しになるが、これも分かりやすい弱点。

本商品では、毎月日本円で保険料を支払うが、それをドルに換える際に為替手数料がかかる。

例えば、保険料を1万円、ある月のレートが108円だとすると、そこに0.5円の手数料がかかり、1ドル108.5円で購入することになる。

この為替手数料はどこのドル建商品でもかかるのだが、0.5円は高い方。

一番安いところでは、オリックス生命が0.01円で提供している。

為替手数料などは、何の利益も生まないただの「コスト」なので、少ないにこしたことはないだろう。

 

比較した方が良い商品

オリックス生命 米国ドル建終身保険candle(キャンドル) ★★★☆☆

ジブラルタ生命 米国ドル建終身保険&米国ドル建終身保険(低解約返戻金型) ★★★★☆

ソニー生命 米国ドル建終身保険 ★★★☆☆

メットライフ生命 USドル建終身保険 ドルスマートS ★★★★☆

 

参考コラム:
介護保険の基礎を学びたい方は、まず

『民間の介護保険は必要か?「介護保険の考え方」』
『介護付き終身保険のメリット・デメリット』
をご覧いただきたい。

参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

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各社の外貨建終身保険の☆評価一覧は、コチラ