米国債を直接買うメリット
昨今の超低金利により、日本円建の貯蓄系の保険、終身保険や年金保険などの利回りが低下しています。
何十年かけても、増えるのは数%程度、下手をすれば逆ザヤ(損をする)こともあります。
そのような中、外貨建の保険の販売が好調です。
主に米ドルの終身保険や年金保険などが売れているようです。
このような商品は、
・米ドルによる高利回り(日本円に比べて)
・万が一の時の保障
を両立出来るという特徴があります。
しかし、最近では当初10~20年間の死亡保障がない、というような「終身保険」や(オリックスのキャンドルなどが有名)、老後の年金にフォーカスし、若い頃の死亡保障は極めて低額になっているような商品が増えている印象です。
死亡保障より、貯蓄に重点を置いた商品です。
当然ながら、このような商品を選ぶ方も「貯蓄重視」ということになりますが、それであればわざわざ「保険」にこだわる必要はあるのでしょうか?
端的に言えば、米国債を直接買った方が効率的です。
保険会社の米ドル建の保険商品のほとんどは米国債で運用されています。(一部社債、株式などもありますが)
言ってみれば、保険会社は市場で買ってきた素材(米国債)を加工し、「保険」という形に変えて販売しているのです。
そこには手間もかかりますし、色々な人が動くのでコストも発生します。
港で揚がった魚を刺し身にしてスーパーに並べる、保険会社がそれをやり、契約者はその刺し身を買っている。そう言い換えれば分かりやすいでしょう。
であるならば、港で魚を直接買って、自分で捌けばもっと安く刺し身を食べられます。
それが「米国債を直接買う」ということです。
素材をそのまま買うわけですね。
しかし、このような話をすると、多くの方はこうおっしゃいます。
「えっ?米国債なんて一般の人が買えるの?」
と。
しかし、「既発債」というものであればわりと手軽に買うことが出来ます。
米国債だけに限らず、「債権(米国債も債権の一種)」には、新発債と既発債というものが存在ます。
新しく発行されたものが新発債、過去に既に発行されたものが既発債です。
新品と中古という位置づけですね。
米国債の場合、日本人が新発債を買うのは「無理ではないが、結構大変」です。
ここでは詳細は述べませんが、色々手続きがあるので、誰でも手軽にとはいきません。
対して、既発債は「中古の債権」を各証券会社が在庫として持っており、それを購入するのは比較的簡単です。
試しに「米国債 既発債 証券会社」などと検索してみて下さい。
各証券会社の在庫をまとめた情報がズラッと出てくるでしょう。
それをオンラインや窓口などで購入すれば良いのです。
米国債(既発債)の購入方法
本稿を書いているのは2021年1月30日ですが、先程の「米国債 既発債 証券会社」というキーワードで検索すると、googleの上位に「SBI証券 既発債権」が出てきました。
これをクリックすると、米国国債(ストリップス債)というものが並びます。
ストリップス債とは、本来100の価値のあるものを、割り引かれた価格で買い、それを満期に100で買い取って貰えるという仕組みの債権です。
サイトの中には、こんな既発債がありました。(2021年1月30日時点での話であり、在庫は常に流動的ですので、各自ご確認下さい。)
米国国債(ストリップス債)
参考価格 77.36
税引前/複利 1.371%
償還 2039/11/15
これは、
今なら100のものを77.36で売りますよ、100で買い取るのは2039年11月15日ですよ。その利回りは複利で年1.371%です。
という意味です。
2039年は現在の2021年からすれば18年後なので、40歳くらいの方が「老後の資産を作りたい」というニーズに合致していますし、もしくはお子さんが産まれた直後であれば、18年後の大学進学にちょうど間に合う期間でもあります。
なお償還の時期は最短で5年程度のものから、最長では30年近いものまでありますので、ご自身のニーズに合わせて選択することが可能です。
実際に購入する時には、これをドル建で、その日(もしくは前日)の為替レートで購入します。
仮にこれを100万円分購入すれば、18年間で77.36が100になるわけですから、129.27%に増えます。
各保険会社のドル建商品を見ても、18年間でこれだけ増えるものはないでしょう。
まさにこれが「原材料を買う」メリットと言えます。
余計なコストがかかっていないため、利回りをダイレクトに得ることが出来るのです。
しかし、デメリットもあります。
まず、当然ながら保険ではないので、死亡した時には何の保険金もありません。
また、保険のように「毎月払う」ようなことが出来ません。
ある程度まとまった資金で「まとめ買い」するようなイメージなので、手元にそれなりの資金がある必要があります。
ただし、これは本来であれば保険に支払おうと思っていたお金を貯めておいて、年に1回、既発債を買うようなことで代用は可能です。(しかし、自動的に引き落としてくれるようなことはないので、自己管理が必要)
ドル建保険を検討する際、自分は保険が必要なのか?それともドルで資産運用がしたいのか?それを考え、もし後者であれば、米国債の既発債購入も検討してみても良いかもしれません。
メリット・デメリットのまとめ
米国債の既発債を購入するメリット
・保険商品より利回りが高い
米国債の既発債を購入するデメリット
・保険がついていない
・一度にまとめて購入する必要があり、月払などが出来ない
この記事を読んでいる方は、こんなコラムを読んでいます!!
ドル?株?介護を付けた方が良い? 一時払保険の賢い選び方総論