介護付終身保険という商品がある。
終身保険とは、その名の通り「身が終わるまで」つまり、亡くなるまでの保険で、何歳で亡くなっても必ず保険金が受け取れる保険を指す。
通常の終身保険は、
・死亡
・高度障害(車いすなど)
の2つに該当した時に保険金が受け取れるが、介護付終身保険の場合、そこに
・介護状態(認知症含む)
が加わり、支払範囲が広くなる。
要は、「亡くなる前に認知症などで介護状態になった時、亡くなる前に保険金を受け取れる」ということ。
ちなみに、この商品を提供している保険会社はそれほど多くなく、本サイトは把握している限りでは、
アクサ生命
ジブラルタ生命
住友生命
の3社のみ。
なお、
何をもって介護と言うのか?(支払対象となるのか)
という点については、各社バラバラなので、それぞれの基準については、商品の解説ページを参照にして欲しい。
ジブラルタ生命 介護保障付終身保険(低解約返戻金型) ★★☆☆☆
ジブラルタ生命 米国ドル建介護保障付終身保険(低解約返戻金型) ★★★☆☆
住友生命 スミセイの低解約返戻金型介護終身保険 バリューケア ★★☆☆☆
介護付終身保険のメリットとは?
介護付終身保険のメリットは、今まで述べた通り
介護でも支払い対象になる
ということ。
特に認知症を気にして入る方が多い印象だ。
もう一つのメリットは
「損をする可能性が低い」
という点。
多くの民間の介護保険商品が、介護にならなければ「払い損」になるのに対して、介護付終身であれば、介護を経ずに亡くなった場合、死亡保険金を受け取れるので、最終的には元が取れる。
参考例を挙げて説明しよう。
・一般的な介護保険商品(あくまで参考例)
保険料毎月1万円 介護になれば年60万円の年金が給付
50歳で加入 → 75歳まで支払う(総額 300万円)
介護になれば60万円/年の年金が受け取れるので5年以上介護が続けば →得をする
介護にならず死亡すれば、今まで支払った300万円はムダ →損をする
・介護付終身保険
保険料毎月2.5万円
50歳で加入 → 65歳まで払込(15年間で総額450万円)
介護になった 保険金500万円 → 得をする
介護を経ずに死亡 保険金500万円 → 得をする
言い方は悪いが、介護付終身は、介護、死亡、どちらに転んでも保険金を受け取れるので損をする可能性が低い。
とは言え、これは「50歳で加入すれば」の話で、65歳とか70歳で加入した場合
「すぐにでも介護になる可能性が高い」
ため、保険料がバカ高くなり、介護付終身保険と言えど「払い損」になるので要注意。
介護付終身保険のデメリット
介護付終身保険は、通常の終身保険に比べ保険料が高い。(おおよそ10%くらい)
それがデメリット。
これは「支払範囲が広い(介護でも支払う)」という観点から見れば仕方ない。
保険会社からすれば、死亡でも介護でも支払う保険金は変わらない。
死亡よりは介護の方が手前(数年はやく)来るので、保険会社の立場に立てば
契約者が早死にする
のと変わらないわけだ。
そのため、介護付終身は、全体的に前倒しで保険金を用意しないといけない。
その分、運用期間も短くなるため、「保険料を上乗せ」してもらうことになる。
こちらも参考例(あくまで説明のためのプランで、実際の存在する商品ではない)をもとに解説していく。
通常の終身保険 死亡保険金 500万円
保険料2.2万円/月 50歳から65歳まで払込(15年間)
総支払保険料 396万円
つまり、396万円(約400万円)を支払えば、死亡時に500万円を受け取れる。
対して、介護付終身では、以下のようになる。
介護付終身保険 死亡保険金 500万円
保険料2.5万円/月 50歳から65歳まで払込(15年間)
総支払保険料 450万円
こちらは450万円を支払って、介護、もしくは死亡時に500万円を受け取ることになる。
仮に介護になった場合、介護付終身保険では500万円を受け取れるが、通常の終身保険は支払対象ではないので、何も受け取れない。
「介護付にしておいて良かった!!」
となるだろう。
対して、介護を経ずに死亡した場合、これはどちらも保険金500万円なので、介護付終身の方が「余計に50万円」を支払っている分、
「介護付でなくても良かった・・・」
と天国で思うかもしれない。
また、普通の終身保険でも介護になった時に「解約してまとまったお金(解約返戻金)」を受け取ることも出来る。
話をまとめるとこんな感じ
介護になった時
普通の終身保険 → 解約して400万円~450万円(解約時期にもよって変わる)を受け取るか、死亡時に500万円
介護付終身保険 → 500万円
介護を経ずに死亡した時
普通の終身保険 → 500万円
介護付終身保険 → 500万円
以上の状況を踏まえ、筆者の率直な感想を言えば、
どちらでも良いんじゃない?
という少々突き放した言い方になってしまう。
正直なところ、この議論には正解がない。
身内で介護の経験があり、
「自分もどうしても心配だ」
と言うなら、多少のプレミアム(割高な保険料)を支払っても介護付終身にしておけば良い。
実際、介護になればその選択が役に立つこともある。
逆に普通の終身保険に加入しておいて
「もし介護になれば解約して400万円~450万円の解約返戻金を受け取る」
という考え方もある。
なるかならないか分からない介護を心配して、50万円の割増保険料を支払うより、なったらなったで、500万円満額ではないものの、400万円~450万円の解約返戻金を受け取ればそれで十分。
そう思う人もいるだろう。
つまるところ、どちらが良い悪いではなく、本人の考え方次第。
ちなみに筆者は、普通の終身保険で十分だと思う。
介護になる人は高齢者全体の1/3から1/2程度。
認知症などで介護状態になる人も多いが、実際には介護を経験しない人も多い。
また、介護になった時に450万円支払って500万円の保険金も、400万円支払って400~450万円の解約返戻金も、どちらも数十万円程度の差で、それが介護生活に大きな影響を与えるとも思えない。
だったら、「今、保険料が安い」方が良い。
結局のところ「お金が貯まっていれば」何とかなるだろう。
出るか出ないか分からないお化け(認知症、介護)に怯えるより、元気なうちに手元で使えるお金が多い方が良いのではないか?
とは言え、これも筆者の個人的な意見でしかない。
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