保険の疑問 保険で貯蓄をするべきか?

当ブログにも多く寄せられる質問の中に

「保険で貯蓄をするべきでしょうか?」

というものがある。

特に昨今では、利回りの高さから、ドル建の貯蓄性商品を提案される機会が多いようだ。

注:余談ながら、「ドル商品しか売れない」という事情は、保険会社の資産状況にも影響しており、生命保険協会の資料(生命保険協会 生命保険の動向:25ページ目)を見ると、全資産の30%程度が外国債権(主に米国債)となっている。

以下、当サイトとして「保険で貯蓄」に対する考え方を記した。

なお、動画(音声)でも解説しているので、「読むより、聞く方が良い」と思う方はそちらの方を聞いて欲しい。

さて、まず結論から言えば、

「手間暇かけて自分でやるより良いと思うならやれば良い。」

「保険会社に預けるより、もっと増やせる自信があるなら、自分でやれば良い」

という、やや突き放した言い方になる。

まず、「貯蓄性の保険商品」について、その背景を見てみよう。

そもそも保険は保険であり、原則的には

死んだ時にお金を払う

ということが目的である。これは誰もが理解出来るだろう。

だが、「死んだ時」と言っても、ほとんどの人はピンと来ない。

まず「自分は(自分だけは)大丈夫だろう」という根拠なき自信があるし、実際、確率論としても若い頃に亡くなるのは相当レアだ。

数字だけで見れば、60歳までに亡くなるのは100人中、3,4人という程度で、つまり3,4%ということ。

60歳の時に小学校の同窓会をやれば

「クラスの中で1人か2人くらいは亡くなっているかなぁ」

という感じ。

もちろん、この1人か2人が「自分である」可能性がゼロではないことを、頭で理解はしていても、それでも「まあ大丈夫だろう」と思ってしまうのが人情だ。

そのため、どうしても

「保険ねぇ、必要なんだろうけど、もったいなくない?」

という気分になる。

特に掛け捨ての保険の場合、何もなければ本当に「お金を捨てる」ことになるので、なかなか決断出来ない。

そこで「貯蓄を兼ねる」という発想になる。

「何かあったら保険金を払う。何もなくても満期にはお金が増えて戻ってくる」

というものだ。

保険会社としても、その方が「売りやすい」し、「お金を集められる」ので、戦後からバブル期を経て現在まで、「貯蓄性の保険商品」は脈々と生まれ続け、販売され続けている。

古くは養老保険、現在ではドル建の終身保険、養老保険、変額保険(株価などに連動する)などだ。

で、これらの商品に入る時、

「保険で貯蓄をすることが良いのか?悪いのか?」

という議論になる場合がある。

言い換えれば、保険で貯蓄をする方が得なのか?損なのか?ということ。

この答えが、冒頭の通り、

「保険会社より上手く運用出来るなら自分でやった方が良い」

ということになる。

これも前述の通り、保険はあくまで保険である。

第一義的には、「死んだら保険金を払う」のがメインの役割であり、そのために皆がコストを負担している。

実際の例を見てみよう。

30歳の男性 100人が、

・死んだら1,000万円

・死なずに60歳を迎えたら1,000万円

という貯蓄性の保険に入ったとしよう。

ほとんどの人(96人)は、「死なずに」60歳の時に1,000万円を受け取る。

しかし、残念ながら4人は「死んで」、ご遺族が1,000万円を受け取る。

保険会社からすれば、1,000万円✕4人=4,000万円を支払っていることになる。

ここでは、亡くなった4人を、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんとしよう。

Aさんは「1ヶ月分しか払わずにすぐに亡くなった」かもしれないし、Bさんは「60歳までに残り1ヶ月のところ亡くなった」かもしれない。

この場合、

・Aさんは「ものすごく得(1ヶ月分の保険料で1,000万円)」

・Bさんは「わずか数十万円の得(かなり保険料を積み立てたので)」

となる。

Cさん、Dさんも個々の事情で、どの程度「得した」のかは変わってくるが、それでも4人全員が「得」しているはずだ。

支払った保険料 < 保険金

は大原則なので(一部の例外的な商品もあるが、基本は得する)、4人全員が支払った保険料以上の保険金をえる。

では、この差額は誰が負担しているのか?

もちろん保険金は保険会社が支払っているが、最終的な原資は「その他の契約者」である。

単純計算で4,000万円を96人で負担しているとすれば、1人42万円となる。

もちろん、A,B,C,Dの4人が「自分たちで支払っている分(死亡時までの積立金)」もあるので、実際には4,000万円丸々を残り96人が負担しているわけではないのだが、それでも1人1人が数十万円を負担し、死亡した4人に1,000万円をプレゼントしているという構図。

そして、このA,B,C,Dが「あなた」かもしれない。

これが「保険」である。

そういう意味では、保険に加入した段階で、この数十万円の負担金は否応無しにおっていることになる。

入った段階で、いきなり「数十万円の損」から始まる。

それが、貯蓄性の保険の本質でもある。

また、それ以外にも営業マンのギャラ(販売手数料)、保険会社のスタッフ(契約チェック、管理、サポートセンターの要員)など、全てが「契約者の保険料」から賄われているのだから、それらのコストもとられている。

そのため、保険で貯蓄が「損か?得か?」と言われれば、

そりゃ、貯蓄としては損だよね。いきなりマイナスから始まるし、その後も色々抜かれるんだから・・・・

ということになる。

それでも、保険会社は運用のプロなので、長い年月をかけて、損を補い、多少は増やしてくれる。

「死んだ時の保険もあるし、多少増やしてくれるなら良いか・・・」

となるので、貯蓄性の保険は、依然、人気がある。

だが、「運用のプロ」と言ったところで、そこまで特殊な(投資銀行やヘッジファンドのような)ことをしているわけでもない。

基本的には日本国債、地方債、米国債、投資信託(投資先は商品によって異なる)を売り買いしているだけで、何も難しいことはしていない。
(保険会社は、何よりも「資産の安全性」を求められるので、そこまでハイリスクな運用は出来ない)

当然、自分でやった方が、「余計なコスト」を払わずに済むのでリターンは大きい。

じゃあ、自分でやれば良いじゃん!!となるが、ここで壁がある。

面倒くさい・・・・

ということだ。

資産の管理、売り買いのタイミング、税金関係、これらのことを全部自分でやる必要がある。

全て自己責任。

そして何より「勉強」しないといけない。

日本人は先進国の国民としては、「ダントツ」で金融リテラシーが低く、お金の勉強が本当に苦手なので、ここで引っかかってしまう人が多い。

結局、ズボラなのだ

そのため、「保険会社に丸投げ」が一番気楽ということになる。

また、自分で責任を負いたくない、という日本人特有の気質もある。

結果が「ダメ」でも保険会社のせいに出来るからだ。

なお、筆者の個人的な思いとしては、本稿を読んでいる読者には「出来るなら」自分で運用をして欲しい。

「お金の知識」は、現代社会を生きる上では必須スキルで、長い人生を送る上では、様々な局面で役に立つ。

ただ、「勉強する」ということを、保険で貯蓄をやらない「言い訳」にはして欲しくない。

「いつか、いつか」と先延ばしにするくらいなら(実際にそういう人は多い)、お金を保険に入れて多少損してでも(保険の機能があるので、別に損でもないが)将来に向けてお金を積み立てた方がマシだからだ。

また、別の角度から見ると、

保険は途中で使えないから良い

という考え方もある。

手元にお金があると、どうしてもムダ使いしてしまうので、「ある年齢まで解約出来ない(損をするから)」保険の方が良い、ということだ。

まあ、これも貯蓄性保険のメリットと言えなくもないし、結構これを魅力だと思っている人も多いようだ。

だが「解約出来ない」というのは、意外と不便なもので、本当に困った時に使えないため、良し悪しがある。

自ら進んで刑務所に入るようなもので、別の意味では「ストイック」だとも感じるが、まあ、こればかりは性格なので、何とも言えない。

ただ、「解約出来ない」という特性上、あまり高額、あまり長期間なものは避けた方が無難だ。

将来、「まさか」というようなことが起こった際、自分で自分のクビを締めることになりかねないし、「まさか」の坂は人生には意外と多い。

以上、保険で貯蓄についてまとめてみた。

・「保険」であり、多くのスタッフがいる「保険会社」が絡む以上、手数料を取られるのは仕方がない

・そのため、原則、資産運用は保険でなく「自分で勉強して」やった方が良い

・ただ、何も勉強せず「いつかは、いつかは」と先延ばしするような「ズボラ」な人は、保険会社に預けておいた方が「まだマシ」

・保険の場合、ある程度の長期間は「解約出来ない」ので、それをメリットとするか、デメリットとするかは性格次第

・しかし、あまりやり過ぎない方がベター

なお、保険で運用した場合、自分で運用した場合を「簡単の比較」するためには、現在、貯蓄性保険の主流である、ドル建の保険と、証券会社が販売する米国債の既発債の利回りを比較すると分かりやすい。

米国債の既発債は、「中古の米国債」であり、新規で発行された米国債を買った投資家が、中古市場で販売している。

ドル建保険の場合、保険会社は新規の米国債を購入して運用するので、既発債はその「原材料」のようなもの。

この利回りを比較してみると、「自分で運用した場合」と「保険会社に預けた場合」で、どれほど利回りが違うのか理解出来る。

このあたりのことは、

ドル建保険 vs 米国債直買い、どちらが良いか?

にまとめてあるので、興味がある方はご一読頂きたい。

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