認知症保険は「原則」必要ない

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日本全体が高齢化している影響もあり、保険会社各社から介護や認知症に関する商品販売が続いている。

当サイトでも、民間の介護系の保険商品については色々論じてきたが(以下、コラム参照)、今回は認知症だけにフォーカスしてその必要性を検証してみたい。

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認知症系の保険商品を検討する上で抑えておきたいのは、その「確率」である。

何となく、歳を取るとほとんど人が認知症になるようなイメージを持っている方も多いが、そのあたりを整理したい。

まず、結論から言えば、認知症になる割合は、各種統計などを見ると

男性 16.5% 6人に1人
女性 25%  4人に1人

と言ったところである。

どうだろうか?

多いと感じる方もいれば、意外と少ないと思う方もいるだろう。

まず、歳をとって介護を必要とする方が、男性で33%、女性で50%である。

男性の場合、介護を必要とする年齢に達する前に、がんや心臓や脳で亡くなってしまう方も多い。

対して女性は総じて男性より長生きをするので、歳をとってから介護を必要とする割合が男性よりも高くなる。

そして一口に介護と言っても、色々な状況がある。

最大派閥は認知症。

要介護状態の原因第一位で24.8%を占める。

そして、第二位が脳血管疾患で18.4%。脳卒中などで、障害が残ってしまったような状況だが、この中には脳卒中性の認知症なども含まれているのと、障害を負ったことで寝たきりになり、それをきっかけとして認知症に移行するケースも多い。

そのため、1位、2位あわせた42%程度が「認知症か、それに近いような状態」だと言われている。

なお、余談ながら3位は高齢による衰弱で12.1%となっている。

参照元:厚生労働省 平成28年 国民生活基礎調査より抜粋。

また、今後、より日本人が高齢化する中で、認知症の割合も増えていくと言われており、2040年頃には、要介護者の半分程度(今は40%程度だが)が認知症になるのでは?という予測もある。

以上のようなことから、前述の「認知症の割合」が導き出される。

・介護を必要とするのは、男性の33%、女性の50%

・その中で認知症はおおよそ40%だが、将来的には50%程度

・両者を掛け算すると、男性16.5%(33%×50%)、女性25%(50%×50%)となる

男性6人に1人、女性4人に1人ということ。

これらの「確率」を理解した上で、次に保険の必要性を考えてみたい。

現状、認知症に関する保険には、以下の2タイプがある。

1 一時金を預けるタイプ

2 掛け捨てタイプ

1に関しては、例えば990万円などのまとまったお金をドカッと預け、認知症になった場合、110万円が10回払われる(合計1,100万円)というような内容。

なお、認知症にならずに死亡した場合には1,000万円が保険金として支払われる。

基本的には自分のお金を受け取っているだけなのだが、認知症の時だけは「ちょっとだけ得する」という感じ。

原則的には、さほどの得も損もしない(短期解約したような場合は損をするが)

手元にあるまとまったお金を保険会社に預けて運用してもらい、その返金タイミングが「認知症(もしくは死亡)」というだけ。

本質的には「貯金」を「認知症になったからそれを使う」ということと同じなのだが、この手の商品は先に挙げたように「分割払い(110万円×10回)」になるものが多く、自分のお金なのに自由に使えないというデメリットがある。

いざ認知症になった時、家をリフォームしたり、介護施設に入るために入会金を支払ったり、色々とお金がかかる場面があるのだが、そのような時に、「自分の金なのに使えない」というようなリスクがある。

そのため、筆者は「自分で持っておいて運用した方が良いんじゃない?」という考え。

わざわざ保険会社にあずけて、認知症でしか開けられない「鍵」をかける必要もないような気がする。

次に2の掛け捨てだが、これは毎月保険料を支払い、

・自分が認知症に「なれば」まとまったお金を受け取れる

・しかし認知症に「ならなければ」保険料は没収される(掛け捨て)

というもの。極めてシンプル。




要は認知症になる方に「保険料を賭ける」ということ。

具体的な商品で言えば、認知症になった時に一時金200万円を受け取れるような内容で、70歳の男性なら5,000円、70歳の女性なら6,500円くらいの保険料が一般的。

なお、女性の方が保険料が高いのは、前述の通り「女性の方が認知症になる確率が高い」からである。

70歳の男性が、毎月5,000円(年間6万円)の保険料を支払っていくと、75歳までに30万円、80歳までに60万円、85歳までに90万円を支払うことになる。

女性の場合は、75歳までに39万円、80歳までに78万円、85歳までに117万円となる。

これらの保険料負担は「認知症になるか」、「死亡するまで」続くが、仮に認知症になるとすれば、それは何歳くらいなのだろうか?

これも予測は出来ないが、各種統計などを見ると75歳を越えたくらいから「ポツポツ」出始める。

もちろん60代でなる方もいれば、90歳を越えてから発症する方もいるので千差万別ではあるが、75歳前と、75歳以後では発症率が全然違う。

仮にその平均を80歳とすれば、70歳で保険に入った男性は、そこまでに60万円、女性は78万円の保険料を支払っている。

このあたりで認知症になれば、60万円(女性は78万円)支払って200万円ゲットなのだから「保険に入っておいて良かった」となる。

だが、死亡してしまえば何も残らない。ゼロ。完全に損。

そして、より怖いのは「認知症にならず超長生き」した場合。

毎月5,000円の保険料だけ支払って90歳を迎えれば、男性で120万円、女性で156万円を「捨てる」ことになる。

そもそも200万円のために入ったのに、女性においてはほぼそれに近い金額を失っており、大損である。

これらのことを保険会社側から見ると

「男性6人、女性4人で200万円を奪い合って下さいね」

ということになる。(言い方は悪いが、的確な表現だと思う)

・70歳の男性が6人いる。

・認知症になる人もいれば、早くに亡くなる人もいる。認知症にならずに長生きする人もいる。

・平均して80歳くらいまでは保険料を支払ってくれるだろう。(保険会社側の予測)

・集金出来る保険料は60万円×6人=360万円。

・このうち200万円を認知症になった「ラッキーな人」に払う。(差額は保険会社の利益)

これが掛け捨てタイプの認知症保険の本質である。

これらのことを聞いて、どう思うかは人それぞれだろう。

認知症になる誰かのための皆で保険料を積み立てる。自分が払い損になるかもしれないが、自分が認知症になって受取るかもしれない。それで良いじゃないか。

そう思う方もいれば、

結構な額を捨てるんだな・・・だったら自分で貯めておけば良いんじゃない?

そう考える人もいるだろう。

ちなみに筆者は完全に後者。

老後のリスクは認知症だけではないのだから、それまでにちゃんと資産形成しておくべき。

無駄な保険料なんて払う必要はないと思っている。

そのため、当サイトでは認知症や介護系の保険商品には原則辛口である。

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