医療保険やがん保険には、「通院特約」というものがある。
昨今、入院する日数が短くなってきており、事実、厚生労働省の調査でも、1999年に39.3日であった「平均入院日数(全ての病気の入院日数の平均)」は、2017年には29.3日と、約10日も短くなっている。
国の財政も厳しいので、入院はなるべく短くして、ある程度回復したら家に返ってもらい、残りの治療は通院でやりましょう。ということだ。
そのため、保険会社各社は、
「これからの治療は入院ではなく通院が多くなる。通院でもお金を受け取れた方が良い」
と喧伝している。
それをフォローするのが通院特約。
ある病気で入院し(がん保険の場合はがんだけが対象)その後通院した場合、1回の通院あたりいくら、という形で支払われる特約で、入院日額の6割を給付することが多い。
例えば、入院一日あたり、5,000円のプランであれば、通院した場合は3,000円(6割)ということ。
この特約は、親類や友人などが、頻繁に病院に通院している経験などを聞いている方が付ける傾向が強い。
病院通いの苦労を聞いて、
「医療保険(がん保険)に入るなら通院も付けておかないと!!」
と思うのかもしれない。
しかし、筆者は通院特約にはネガティブ。
基本的には必要ないと思っている。
保険相談などでも「いらない」というスタンスで話をしている。
その理由は、2つ。
1 ほとんど元を取れない
2 貰ったところで大した足しにならない
1については、明確。通院特約の保険料(オプション料)は結構高いので、毎回3,000円を受け取ったとしても、元を取るまでには相当な回数の通院が必要になる。
年齢や性別によっても異なるが、だいたい500円/月程度のことが多い。
ここでは500円で計算しよう。
まず、支払総額を計算してみる。
例えば30歳の男性であれば、男性の平均寿命は82歳なので、52年間、この保険料を負担することが「平均」ということになる。
500円 × 12ヶ月 × 52年(30歳から82歳) = 31万2,000円
対して、1回通院して受け取れるのは3,000円なので、単純に割り算をすれば、
31万2,000円 ÷ 3,000円 =104回
となり、つまり生涯を通じて、104回通院すれば「トントン」、それ以上なら「得」、それ以下なら「損」ということになる。
ここで重要なことは、通院特約は「ただの通院では貰えない」ということだ。
あくまで
・大前提として入院すること
・その原因となる病気に関連する通院が対象
に限られる。
考えられるケースとしては
・人生で1回入院、その後104回通院
・人生で2回入院、その後、52回ずつ通院
・人生で3回入院、その後、35回ずつ通院
・人生で4回入院、その後、26回ずつ通院
こんな感じで、実際のところ
そんな人いるか?
というのが率直な感想だ。
筆者は20年以上、この仕事をしているが少なくともそんな方は1人もいなかった。
もちろん、中には104回以上の通院をするような方もいなくはないだろうが、契約者側からすると、通院特約は
かなり勝率の悪い特約
ということだけは確実だ。
また、金額も3,000円程度と少ないので、通院の都度、受け取れるのは「お小遣い」としては嬉しいかもしれないが、それ自体で生活に何か影響を及ぼすほどの金額でもない。
あっても、なくてもどちらでもほとんど同じ、という感じ。
前述の通り、払い損になる確率も高く、かつ、保険としてそこまでインパクトもない。
そのため、「必要なし」というのが筆者の考え。
と、このような話を毎回するが、それでも「付けたい」という方もいる。
もちろんそれは自由だ。
保険への加入は経済的な合理性だけでなく、「心の安定」という面からも考える必要があり、
いざとなったら通院でもお金が貰える!!
ということに安心を覚えるのであれば、ご本人にとってはそれは毎月支払う「数百円以上の価値」があるのだろう。
原則必要ないが、付けるなご自由に。
これが結論となる。
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