提供会社:ニッセイ・ウィルス生命
商品名:エムステップ(三菱UFJモルガンスタンレー証券)
エムソリューションⅣ(三菱UFJモルガンスタンレー証券)
ニッセイウェルス ステップアップ年金(野村証券)
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この保険の弱点はここだ!!
参考コラム:ドル?株?介護を付けた方が良い? 一時払保険の賢い選び方総論
ニッセイ・ウェルス生命は日本生命グループの保険会社で、主に金融機関で販売される商品の企画・販売を行っている。
本商品は、三菱UFJモルガンスタンレー証券と野村證券のために開発された商品で、中身はほとんど同じながらモルガンでは「エムステップ」と「エムソリューションⅣ」、野村では「ニッセイウェルス ステップアップ年金」という商品名で販売されている。
注:エムソリューションⅣはエムステップに同じくニッセイ・ウィルス生命が販売しているアットウィルを組み合わせたような商品。
アットウィルの詳細は以下参照。
わざわざ名称を変えるのは、
「これは、うちでしか売ってない商品なんですよ!!」
とアピールするためで、マーケティング上の戦略。
だが、実際にはモルガンと野村で同じ内容のものを販売しており、ユーザーサイドからすると、何ともややこしい。
さて、本商品。名前以上にその中身も、かなり「ややここしい」
耳障りを良いが、
契約者のお金をあちこちにグルグル回して、保険会社、証券会社があちことで手数料を抜いているような商品
という印象。
あまりに複雑なので星1つ。
商品の「売り」は、市場が下がった時に「資産は減らない」のに、市場が上がった時には「資産は増える」ということ。
普通に聞けば
「そんな美味しいことあるわけないじゃないか!!」
と思うかもしれないが、この仕組みについては追々説明していく。
まずは、商品概要から。
本商品は以下のようなステップとなっている。
1 一時金としてまとまったお金を預ける
2 預ける期間を決める 5年 or 10年(但し10年が選択出来るのは85歳まで)
2 米ドル、豪ドルから通貨を選択
3 自分の資産をどのマーケットに投資(指数)するか決める。選択肢は以下の3つ
日経平均
S&P500
NASDAQ-100
4 指定した指数の上昇、下降(1/1時点と12/31時点を比較)に応じて、一時払した資金に上乗せされる「たのしみファンド」が増える。
この際、指数が下がった場合は「プラスマイナスゼロ」つまりファンドは増えない。
だが、指数が上がった場合には
上がった率 × 連動率
で計算された分がファンドに貯まっていく。
実際の例で見てみよう。
例えば1ドル130円の時に1,000万円を預けたとする。
1,000万円 = 76,923ドル
注:話を分かりやすくするため、小数点以下は切り捨てる。実際の商品では小数点以下も計算している。
となって運用開始。
自分が指定した指数がある年に20%下落した。
注:指数とは?
日経平均であれば、プライム市場(旧一部市場)に上場している銘柄の中の日本を代表する225社の株価の平均値。
S&P500はアメリカの市場の500社、NASDAQ100はナスダック市場の中の100社ということ。
そのマーケットの「調子」が分かる指数である。
こうなると、本来であればそこに投資した資産も20%下がるはずである。
76,923ドル(日本円1,000万円)を投資したのであれば、理論上61,538ドルに減るはず。
が、本商品の場合、下がらない。76,923ドルは維持される。
言ってみれば「負け」がチャラになっているようなもの。
逆に指数が20%上昇した場合。つまり「勝ち」
これも本来であれば20%上がるので、76,923ドル→92,307ドルに増えるはずだが、そうはならない。
ここに「連動率」という不思議な数字が入ってくる。
この連動率は「毎年変動」し、ニッセイ・ウィルスが勝手に指定する。
この年は連動率が25%だったとしよう。
マーケット(指数)全体の上昇率に、この連動率をかける。
20% × 25% =5%
これがこの年の増加分。
76,923ドルの5%は3,846ドル
これが「たのしみファンド」に蓄積されていく。
これを10年(もしくは5年)繰り返していき、最終的な結果は「その時」になってみないと分からない。
だが、仕組み上「選択した指数が10年間ずっとマイナス」でない限りは、多少は増えるだろう。
まとめるとこうなる。
・指数が下がった時には資産は減らない
・指数が上がった時は、上がった分×連動率で計算された分がファンドに蓄積される
・10年、もしくは5年の運用期間でどの程度増えるかは分からない
以上が商品概要。
では、弱点を見ていこう。
弱点1 証券会社がやる「ギャンブル」に掛け金を提供しているようなもの
先程の商品概要を見て、こう思う方も多いのではないだろうか?
「えー、負けた時は損しないで、勝った時だけ分け前を貰えるなんて、すごいじゃないか!!」
まあ、それはそうだ。
では、何故こんなことが可能なのか、その点について説明していきたい。
まず、この仕組を「難しい言葉」で言えば
一時払した保険料から発生する毎年の利息でコールオプションを購入している
という言い方になる。
ほとんどの人にとっては
はあ?
という感じだろう。
一つずつ読み解いていこう。
まず、まとまったお金を預けると、本商品はそれを米ドルが豪ドルにするので、そこには利息が発生する。
本商品では、だいたい3.3%から4%弱で利率が指定されている(2022年11月時点:通貨や期間、加入時の年齢によってもことなる)
これは言わば預金金利のようなもの。
米ドルも豪ドルも日本円より金利が高いので、これくらいの利息は付く。
例えば先程、例に挙げた1,000万円を預けた場合、それは1ドル130円であれば76,923ドルになるが、これを3.5%で預けると、毎年2,692ドルの利息がある。
1ドル130円なら日本円で約27万円くらいに相当する。
保険会社はこの27万円でコールオプションを購入するわけだ。
コールオプションとは、
「◯月◯日時点で、◯◯社の株を一株◯◯円で買う、もしくは売る」
という約束のことで、デリバティブ取引の一つである。
要は将来の上げ下げを予測して、上がる方に賭けるか?下がる方に賭けるか?というギャンブルでもある。
保険会社はこのコールオプションを駆使して、
「市場が下がったらトントン、市場が上がったら多少儲かる」
となるように、コールオプションの「上がる方」、「下がる方」を同時に買うのである。
コンピューターを使って計算すれば「地殻変動級の大暴落」が起こらない限り、かなりの精度でこれを実現することが出来る。
なお、市場の状況は日々刻々と変わるので、コールオプションの費用も変動する。
そのため、毎年変わる「連動率」が必要なのである。
要は同じコールオプションを買っても、その年、その年ごとに「勝った場合」のリターンが変わるのである。
そのため、ある年は上昇率の25%を契約者に返せるが、ある年は10%しか返せない、というようなことが起こる。
つまり、本商品を平たく言えば
・負けた時に損をしないように保険をかけている(コールオプション)
・そのコストがかかるため、勝った時にも勝ち分を「大幅」に減らされる
ということ。
それを「負けてもチャラ、勝ったら取り分がある!!」と上手く表現しているだけだ。
なお、これらのオペレーションを実際に行っているのは証券会社である。
本商品を提供しているのはあくまでニッセイ・ウィルスという「保険会社」なのだが、それを販売するのはモルガン・スタンレー証券や野村證券であることは冒頭に述べた。
しかし、ニッセイ・ウィルスはそこで集めた保険料から発生する利息を、各証券会社に「コールオプションの購入費用」として還流している(パンフレット上には掲載されていないが、恐らくそうだろう)
証券会社は自分たちでこの商品を販売し、販売手数料を得て、更には裏側でコールオプションの売買手数料を得ているわけだ。
なかなか良く出来ている。
だが、損をしないのだから、別に裏側は何でも良いではないか?
そんな意見もあるだろう。
それも一理あるし、それに納得出来るのであれば、それで良い。
しかし、筆者はこうも思う。
「うーん、こんなコールオプション多用したら、そんなに儲からないんじゃないの?」
と。
実際、パンフレットを見ると、あくまで契約例ではあるものの、
10年預けて130.6%になった!!
という図がある。
だが、考えてみて欲しい。
本商品の積立利率は元々3.5%程度ある。
つまり、何もしなくても10年間で35%(3.5%×10年間)のリターンは確実であり、元本も合わせれば135%になる計算。複利ならもうちょっと良いだろう。
・3.5%の利息分を証券会社に掛け金として提供し、安全性重視の「小博打(コールオプション博打)」を打ってもらう
・3.5%の利息分をそのまま積み立てる
結果的には後者の方がパフォーマンスが良いのでは?とも思う。
もちろん、市場が10年間絶好調に上がり続ければ、小博打でもそれなりのリターンになるかもしれないが、10年間ずっと良いということは現実的にはあり得ない。
そうなると、結局、3.5%固定で運用するのと、大差ない(もしくは手数料を取られる分だけ損)ような気もする。
冒頭述べたように
契約者のお金をあちこちにグルグル回して、保険会社、証券会社があちこちで手数料を抜いているような商品だね
という印象は拭えない。
弱点2 注意点!!
商品の仕様なので、弱点というものではないが、本商品には途中解約のペナルティや手数料などが色々ある。
パンフレットにも書いてあるが、一応、注意喚起でここに記す。
・途中解約について
市場調整価格、解約控除あり
市場調整価格については以下コラム参照
参考コラム:市場価格調整とは?
解約控除とは途中解約のペナルティで、あまりに早期に解約すると
「色々準備したのに、こっちは大損だよ!!」
ということで、預けたお金の数%を取られてしまう。
・年金開始後について
年金開始後、管理費として年金額の1%を上限に「積立金」から取られる。
本商品の年金は10年確定型で、つまり10回の分割払い。
満期時の元本が100だとして、毎年10ずつ受け取れるが、そのうちの1%、0.1を10回取られてしまうので、結局、10年間で1は取られる計算。
弱点3 為替リスク
パンフレット上にある。130%とか、120%というような「増える記載」は全てドルベースの話。
そのため、円に戻した場合、円高などが進めば、損をする可能性もある。
為替は動く時には動くので、あまり軽く考えないこと。
特に1ドル140円オーバーでこの商品をやるなら、1ドル110円程度まで下落する可能性も考慮して検討した方が良い。
この商品の弱点、こう考えろ!!(解決策)
別に商売を邪魔する気はないが、
やめておいた方が良いんじゃない?
という感じ。
まず、仕組みが複雑すぎるし、中身が不透明で、誰が何をやるのかを判明していない。
本商品のターゲットは高齢者だろうが、ちょっと難しすぎて、これをちゃんと理解出来る人は少ないだろう。
良い悪いの前に「分からないものは買わない」というのが原則だと思う。
もしくは、これをやるなら「ナスダック100連動の投資信託に10年間入れっぱなし」の方が多分儲かる。
口コミ・評判(販売側から)
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口コミ・評判(契約者から)
なし
比較した方が良い商品
かなり特殊な商品なので、類似したものはないが、もっとシンプルな利率固定型の方が良いと考える。
編集後記: