提供会社:ニッセイ・ウェルス生命
商品名:NKメディカ
ニッセイ・ウェルス終身医療保険〈外貨建〉

参考コラム:
外貨建一時払終身保険特集!!
「こんな商品には騙されるな!!」はコチラ
利率と利回りの関係を知りたい方は・・・
「超」わかりやすい!!予定利率と利回りの違い!!』
この保険の弱点はここだ!!
ニッセイ・ウェルスが証券会社経由で販売している
「外貨建(米ドル・豪ドル)」
「一時払」
「医療保険」
という特徴を持つなかなか不思議な商品。
通常の外貨建の一時払商品と言えば、
1,000万預ける。
すぐにドルに変換する。
その後決まった利率で運用する。
解約 or 死亡した時には「ちょっと増えて」戻ってくる。
という「ほぼドル建の定期預金」のようなものを「保険です」と言い張っているような商品が多い。
これは、主に保険金の非課税枠(法定相続人×500万円)を利用することを目的としている。
資産家が現金で家族に遺産を遺すと相続税が課税されてしまうが、「保険」という形にしておけば、この非課税の対象となる。
例えば、ある資産家に奥さんと子供2人がいるような場合、法定相続人は3人なので、保険金の非課税枠は
500万円 × 3人 =1500万円
となる。
つまり保険金として受け取れば1500万円までは税金がかからない、ということ。
証券会社や銀行の営業が
「〇〇さん、このままお金を株や現金で持っていると相続税がかかってしまいます。『保険』に形を変えておけば保険金の非課税枠が使えますから、いかがですか?」
などとセールスするのである。
相続税はかからないし、ちょっとだけ増える可能性もあるので(為替リスクはあるが)、資産家すれば
「まあ、預けておくか」
となることが多い。
本商品もその流れを汲んだものだが、他の商品が「資産が増える」というところに重きを置いているが、この商品では「オマケ」にフォーカスしている。
その「オマケ」が医療保険。
本商品にお金を預けると、死亡時に同じ金額が戻ってくるだけで「一切増えない」
例えば1,000万円預けて、その時に1ドル100円だとすると10万ドルに転換され、その後死亡時には10万ドルが戻ってくる。
その時のレートが1ドル100円なら、1,000万円が戻ってくるし、1ドル110円なら1,100万円、1ドル90円なら900万円になる。
為替リスクがあるので増えるか減るかは死んだ後でないと分からない。
わざわざ為替リスクを取っているのに、戻ってくるお金(ドルベース)は変わらないのだから、一体何の意味があるのか?と思うが、代わりに「オマケ(医療保険)」が付いてくるのである。
契約例を見てみよう。(2020年6月時点でのパンフレットを参照)
70歳の男性で、
・入院1日あたる100ドル
・1入院の日数の限度が60日のタイプ(60日目まで支払い対象ということ)
の場合、111,363ドルとなっている。
2020年6月の為替レートはだいたい1ドル107円前後なので、日本円に換算すると1,216万円くらい。
要は1,216万円を一括で支払えば、
・入院したら1日100ドル受け取れる
というオマケが付くわけだ。
1ドル107円換算で100ドルは10,700円なので、だいたい日額1万円の医療保険だと思えば分かりやすい。
そして前述の通り、死亡時には111,363ドルが戻ってくる。
その時のレートが1ドル107円なら、支払った金額1,216万円が保険金ということになる
(為替手数料などは考慮していない。実際には為替手数料が0.5円、往復で1円かかるので、同じレートだと損をする)
但し、1ドル100円なら1,113万円と100万円近く損をするし、逆に1ドル120円くらいにドル高が進めば保険金は1,336万円と100万円以上の得をすることになる。
要はこの「為替リスク」の対価として「医療保険」というオマケを受け取っている。
これが本商品の肝。
1回の入院の支払限度は、60日、120日、730日型から選択できるが、当然、限度日数が長くなれなるほど支払う保険料も高くなる。
先の70歳男性のケースだと、
60日型 111,363ドル
120日型 126,338ドル
730日型 154,884ドル
となっている。
なお、解約返戻金は、10年以内は80%、11年目から毎年1%づつ増加し、契約してから30年後に100%に戻る仕組み。
つまり、途中で解約をすると確実に損をする。
まあ、何というか高齢者のニーズを上手く取らえた商品だな。とは思う。
特に女性受けが良さそうだ。
資産家で、お金はある。しかし、別に運用にも興味がない。そういう人は結構いる。
他の外貨建の一時払商品のように「年2%づつ増える」と言われても
「別にねぇ、あの世までお金を持っていけるわけじゃないから。それに為替リスクもあるんでしょ?」
なんていう塩対応をする人にこの商品をぶつける。
前述の保険金の非課税枠の話をしつつ、医療保険のオマケの話をすると
「あら、預けておくだけで入院した時に保険もついてくるの?良いわね。」
なんてことになりそうだ。
自分が入院した時に不安、高齢者は常にそれを持っている。
そこへの保障を「エサ」にして、為替リスクへの警戒を解くという点ではよく出来ている。
弱点1 運用益を保険料に医療保険に入っているだけ
何度も述べてきた通り本商品の「オマケ」は医療保険だが、別に無料でついてくるわけではない。
実際には預けたお金の運用益が、そのまま保険料として充当されているだけ。
再度、先ほどの70歳男性の例を見てみよう。
・入院1日あたる100ドル
・1入院の日数の限度が60日のタイプ
の場合、111,363ドルとなっている。
日本円で約1,216万円(1ドル107円)
例えばこれを一般的な外貨建の一時払商品に預けたとしよう。
最近のコロナの影響で利率が一気に下がってしまったが、それでもまだ1%程度のリターンはある。
単純計算で1216万円の1%は12万円だ。
本商品ではその12万円が契約者の元に戻って来ず、保険会社が受け取る。医療保険の保険料代わりとして。
ではこの年間12万円の保険料は妥当なのだろうか?
先ほどと同じ条件(日額1万円、60日限度)で他社の見積もりを取ると
チューリッヒ生命
7,592円/月
という数字が出てきた。
年間9万円程度。
ただチューリッヒはそもそも「激安」の保険会社なので、他社だと概ね月1万円前後。(年間12万円前後)
本商品の保険料(実際には運用益)年12万円は
まあ、妥当
という感じだろう。
この点からは別にぼったくっているという印象は受けない。
しかし、結局のところ運用益で医療保険の保険料をまかなっているだけなので、決して無料のオマケではない。ということ。
本商品の主なターゲットは高齢者で、そうなると保険料がかなりの金額になる。
為替リスクを負ってまで、医療保険という「オマケ」が必要なのか?
という点はしっかりと考えた方が良い。
筆者なら、運用は運用でやって、医療保険は医療保険で別物として考えるし、その方がすっきりする。
弱点2 途中解約厳禁!!
本商品、初期契約時に6%の手数料が取られる上、10年以内の解約は80%しか戻って来ない。
更に10年経過後も1%づつしか返戻金が増えず(11年目に81%ということ)、元本を回復するまでに30年もかかる。
金融商品として見れば「最悪」である。
仮に入るなら「絶対解約しない」と決めないといけない。
途中、想定外に長生きして老後の生活費が足らなくなった、家のリフォームをしないといけなくなった、などなど高齢者には不測の事態が多い。
それらも加味した上で
「この程度の金額なら途中で必要になることは100%ない」
という確信を持てないならやめておいた方が良い。
弱点3 告知がある
本商品では極めて簡単ではあるが告知がある。
1 3ヶ月以内に医師より入院、手術、検査を勧められたか?
2 過去5年以内にがん、心臓、脳系の病気になっていない
そこまで厳しいハードルではないものの、高齢者だとひっかるかる人も結構いるだろう。
特に心筋梗塞やがんなどは一度くらいやっている人も多いので、そのような人は入れない。
他社の外貨建一時払商品では、冒頭で説明した「保険金の非課税枠」の利用を目的としているため「告知なし」のものが多い。
誰でも入れるわけではない。という点では他社商品より自由度が低い。
まあ、ベースが医療保険なので仕方がない、とは思うが・・・・
弱点4 証券会社から医療保険に入る必然性・・・
元も子もないことを言うが、本商品を販売している窓口は証券会社が多い。
証券会社で医療保険に入る。
焼き肉屋でトンカツを頼む的な不自然さがある。
実際に入院して証券会社の人間に連絡しても「はあ」という感じで、保険会社のサポートセンターの電話番号を伝えられるだけだ。
餅屋は餅屋。
実際に入院した時の社会保険的な手続きや、各病気の治療法、経緯などは絶対的に保険屋の方が詳しいし、役に立つ。
本商品の目的である「医療保険」が欲しいなら、証券会社を通さず、ちゃんとした保険屋から契約した方が良い。
参考コラム:
外貨建一時払終身保険特集!!
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