この保険の弱点はここだ!ソニー生命「定期保険(障害介護型)」

提供会社:ソニー生命

商品名:定期保険(障害介護型)

この保険の弱点はここだ!!

この商品は、決して悪いものではない。

だが、「通好み」という感じで、おそらく一般受けはしないだろうな、ということで星2つ評価とした。

通常の定期保険は、

・死亡

・高度障害

この2つに該当した場合、保険金がおりる。

本商品はこれらに加え、更に

・身体障害手帳1,2,3級が交付された時(障害保険金)

・要介護2以上と認定された時(介護保険金)

に該当した場合も保険金が受け取れる。

言ってみれば死亡+ワイド版という感じ。

なお、介護に関しては、「要介護2以上」という条件以外にも、会社所定の状態(ソニー生命独自の基準)もある。

寝返り、歩行、入浴、トイレ、食事、歯磨き、洗顔、整髪、爪切り、着替えなど各項目について

「完全に誰かにやってもらわないといけない(全面介助)」

「一部は自分で出来るが助けてもらわないといけない(部分的介助)」

という〇×を付けて、総合的に判断するというもので、まず寝返りと歩行は「全面介助」が絶対条件で、更に残りの項目の中でも全面介助1つ+部分的介助1つ以上、もしくは、全面介助が一個もない場合、部分的介助が3つ以上必要となる。

また器質性認知症で、ソニー生命が定義する「問題行動(一般的に認知症患者が起こすトラブル事例のようなもの)」に3つ以上該当した場合も対象となる。

参考コラム:認知症の基礎。器質性認知症、見当識障害、MCIとはどんな状況?

だが、「これに該当するなら、とっくに要介護2以上だよね」という感じ。

要介護2に該当せずに、ソニー生命所定の条件に当てはまるということはまずないと思われる。

そのためシンプルに「要介護2以上」と理解しておけば良いだろう。




さて本商品。

身体障害手帳において「3級以上で払う」というのはわりと緩いと言うか、払われやすのでは?という気がする。

障害者手帳1,2,3級となると、色々なケースが考えられるが、おそらく一番多いのは脳系の病気による後遺症だろう。

脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血など)により、脳にダメージを受け、右半身不随(もしくは左半身不随)などになった場合、本商品はかなり有効だろう。

と言うのも、実は左右の半身不随では、通常の死亡保険では保険金は払われないからだ。

この話をすると、一般の方から

「高度障害で払われるのでは?」

と聞かれるのだが、高度障害では左右の麻痺は対象外となっている。

なお、高度障害というのは、公的な定義ではなく、保険会社が「勝手に使っているネーミング」であり、公的な1級障害、2級障害などとはリンクしていない。

ちなみに高度障害とは、以下を指す。

⑴ 両眼の視力を全く永久に失ったもの(両目失明)
⑵ 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの(喋れない、食べれない)
⑶ 中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し終身常に介護を要するもの(寝たきりに近い)
⑷ 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの(両手を失う)
⑸ 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの(両足を失う)
⑹ 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの(片手を失い、片足が使えない)
⑺ 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの(片手が使えず、片足を失う)

これは、どこの保険会社も共通なのだが、左右の半身不随は(6)、(7)あたりに該当しそうなものだ。

だが、文章を良く読むと「1上肢(腕のこと)を手間接以上で失い」と書いてある。

対して「その用を全く永久に失ったもの」という書き方は、麻痺でも該当する。

これを総合すると、片手、片足を「失う」ことで初めて高度障害となるのである。

つまり、片手、片足の麻痺である半身不随では保険金はおりないということ。

なお、これ、保険業界の人間でも勘違いしている者がいる。

「脳梗塞などで右半身不随とかになったら、高度障害ですから保険金が受け取れます」

などと説明している不届き者もいるので、気を付けて欲しい。

正確にはおりないし、これで保険会社と揉めるケースは結構多い。

だが、本商品においては、払われると思って良いだろう。

左右の半身不随になると、だいたい障害手帳の2級、3級あたりに該当するからだ。

わりと麻痺が重くないと2級は難しいかもしれないが、3級はほぼほぼ認められる。

そのため支払い対象となる。

先にも述べた通り、実際には色々なケースがあるだろうが、支払い事例の大半を占めるのは脳系の病気による左右の半身不随だと思う。
(他社の類似商品でも、支払い事例は脳系の病気が多い)

あとは交通事故、スポーツ中の事故などだろう。

ソニー生命のパンフレットを見ると、通常の定期保険の保険料が、35歳 男性 5,000万円 60歳まで、という条件で毎月12,550円/月。

同じ条件で本商品の保険料は18,500円/月となっている。

保険料は1.5倍ほど高いが、この保険料の差は、筆者が思うに「脳系の病気のリスク分」だろう。

また障害手帳1,2,3級で支払われるということは「働けないリスクへの対策(就業不能)」にもつながる。

死亡保障と就業不能をセットにした、と考えれば、この保険料も「まあ、妥当かな」という印象。

以上、商品を解説した。

冒頭でも述べた通り、悪い商品ではないが、ここまで筆を尽くして説明せねばメリットが伝わらず、そういう意味では「分かりにくい商品」とも言える。




弱点1 がんに弱い

本商品は死亡に障害と介護を付けたものだが、本稿でも述べた通り「働けないリスク(就業不能)」を意識しているのだろう。

しかし、商品パンフレットなどからは「働けないリスクもカバー」的な記載はなく、このあたり「大げさなことは書かない」というソニー生命の伝統でもあり、何とも奥ゆかしい。

ただし、実際のところ本商品が「働けないリスク」の全てをカバーしているか?と言うと、それも違う。

筆者の感覚だが、6,7割かな。という感じ。

大きな抜けが「がん」

がんで入退院を繰り返しているような場面では、おそらくこの商品は役に立たない。

肺がんで呼吸系の障害手帳を交付された

脳腫瘍などで、寝たきりになり、介護認定を受けた

このようなケースも考えられるが、がん患者全体から見ればごく一部。

現在のがん治療はかなり進化していて、わりと日常生活に近い状態で「月一抗がん剤」などで延命をはかれるため、障害手帳を受けられることは稀なのである。

だが、月一抗がん剤をやれば、仕事にはかなりの影響がある。

1週間入院、1週間具合悪い。何とか普通なのは2週間。月の半分程度なので、その状態で出来る仕事はかなり限られてしまう。

こんな時こそ、まさに「就業不能状態」であり、本来は保険金が受け取れれば良いのだが、本商品はこの場面には弱いだろう。

これが大きな弱点となる。

対がん、に関しては就業不能だけに特化した商品に勝てない。
(就業不能専用の保険では、がん治療中なども支払い対象になることが多い)

もしくは、本商品と似ているのに、がんに強い商品として特定疾病保障型定期(終身型もある)がある。

特定疾病保障型では、以下の5つが保障されている。

・死亡
・高度障害
・がん(がんです、と診断されただけで死亡保険金と同額)
・急性心筋梗塞(60日以上の労働制限で死亡保険金と同額)
・脳卒中(60日以上の労働制限、後遺障害等で死亡保険金と同額)

特定疾病保障型は、がんの「診断」だけで死亡保険金と同額が受け取れるので、がんには強い。

また、急性心筋梗塞、脳卒中でも「60日以上は働けないような重症」の場合には、支払い対象となる。

反面、がん、心筋梗塞、脳卒中「以外」の病気や怪我で、 障害等級1,2,3級になったとしても、支払対象外である。

こちらは「範囲が狭い」のである。

なお、ソニー生命でも特定疾病保障型を販売しているので、比較しても良い。

ソニー生命 リビング・ベネフィット20( 特定疾病保障型定期)★☆☆☆☆

逆に本商品(定期保険:障害介護型)は範囲はかなり広い。

広く、薄いという感じ。

このあたりはデメリットだが、メリットでもある。

がんに関する「考え方」は、次項でも述べたい。




この商品の弱点、こう考えろ!!(解決策)

昨今、死亡保障に障害や介護の保障をセットにして「働けないリスク」もカバーしようとする試みが盛んである。

本商品もその一つだろう。

参考コラム:就労不能保険「損保系」、「特化型」、「特約型」の違いを理解しよう

他社商品で多いのは、収入保障保険に就業不能の保障をセットにしたもの。

収入保障保険は死亡時に

「毎月10万円を60歳まで」

というようなお給料形式で保険金を受け取れる商品だが、死亡だけでなく

「働けない時には契約者本人に払う」

というオプションが選べる商品が増えている。

対して本商品は一時金タイプ。

死亡時も5000万円なら、障害も介護も5,000万円という形だ。

これはどちらが良い、悪いというものでもなく、本人の好みだろう。

だが、保険料は総じて、本商品のような一時金タイプの方が高い。

収入保障型は年齢が上がるにつれ保険金が減るが、一時金タイプはずっと保険金が同じだからだ。

例えば30歳で「働けない」となった場合、収入保障型では「毎月10万円を60歳まで」という条件であれば

10万円 × 12ヵ月 × 30年(30歳から60歳) = 3,600万円

の保険金を受け取れることになるが、これが55歳の場合、

10万円 × 12ヵ月 × 5年(55歳から60歳) = 600万円

となる。

ゴールが60歳というのは同じなので、歳をとればとるほど、残りの時間が減ってしまうのである。

そのため、受け取れる保険金が減る。

しかし、本商品のような一時金タイプは「いつでも5,000万円」なので、30歳でも55歳でも5,000万円が受け取れる。

「年齢が上がっても(その分リスクが増えるのに)保険金は同じ」

そのため、当然ながら収入保障型より保険料が高い。

「月々受け取れて、保険料が安い方が良い」

と考えるなら収入保障型の方が、

「一時金でドカンと受け取れる方が良い。また歳をとった方がリスクが上がるのだから、保険金もずっと変わらない方が良い」

そう考えるなら、本商品のようなものが良いだろう。

最後に弱点で挙げた「がん」に関して。

筆者自身は、がんによる就業不能は「割り切りかな」と考えている。

まず、大前提として「がんによる就業不能もカバーした方が良いか?」と聞かれれば、それはもちろんイエスである。

だが、がんは日本人が一番死亡する病気であり、やはり死に向かう数ヶ月間はほとんどの人が「働けない」状態となる。

その時に保険金を払うとなると、正直、保険会社の負担は大きい。

結果、がんを支払い対象とすると、保険料が高くなってしまうのである。

現状、死亡と就業不能をセットにした商品の多くで「がんは払われずらい」ものが多い。

これは保険料のことを考慮してのことだろう。

これをどう「割り切る」か?

例えば、がんによる就業不能は、医療保険などで用意されている「抗がん剤治療特約(抗がん剤を受けた月は10万円など)」で対策して、がん以外の働けないリスクを本商品のような死亡+就業不能の保険でカバーする。そんな考え方もありだと思う。

がんには弱い、ということを理解した上で、死亡だけでなく、障害、介護などでも「一時金で欲しい」と思うなら、本商品は悪くないだろう。

筆者としては、本商品は個人向けというよりは、建設業などの法人の福利厚生で、現場作業員などに入れておくのも良いかな?という気もする。




比較した方が良い商品

以下の商品には、死亡だけでなく、障害や介護を対象にするオプションが用意されている。

はなさく生命 はなさく収入保障 ★★★★☆

三井住友海上あいおい生命 新総合収入保障 ★★★★☆

SOMPOひまわり生命 じぶんと家族のお守り ★★★☆☆

FWD生命 FWD収入保障 ★★★★☆

編集後記

約款