親会社が損害保険会社の生命保険会社を「損保系生保」と言う。
日本には損害保険会社の大手3社が自社グループ内に生命保険会社を持っている。
損保ジャパン系のSOMPOひまわり生命
東京海上日動系の東京海上日動あんしん生命
そして三井住友海上、あいおい損保系の三井住友海上あいおい生命の3社。
共通するのは、どこも異常に社名が長いこと。
契約者の利便性を無視し、バカらしいほど長ったらしい。
いかにも日本的なセクショナリズムを体現しているよう。
さて、そんな社名の長い損保系生保だが、どこも「とにかく商品数が多い」というのが特徴でもある。
その理由は、彼らの代理店網にある。
損保系生保というのは、従来の保険会社(日本生命や第一生命)などに比べると、歴史が短い。
1990年代に設立されたところが多く、生命保険業界側からすれば「新規参入組」であるため、立ち上げ当初は自社の商品を「親会社の代理店」に卸していた。
親会社の損保には数万という代理店がある。
損保代理店である。
その損保代理店に子会社の生保の商品も取り扱わせて、損保、生保どちらも販売できるようにした。
とりあえずの販売網を作ったのである。
ちなみに、一般の方からすれば「損保も生保も同じ保険だろ?」と思うかもしれないが、実はかなり違う。
業界では、
損保は農耕系、生保は狩猟系
などと言われ、営業の難易度としては生保の方が高い。
車を買えば自動車保険、家を買えば火災保険など、契約者が自然と「保険に入らないと」と思ってくれる損保に比べ、生保はすぐに必要性を感じるものでもないので「かなりグイグイ行かないと」売れない。そのため、損害を保険をメインとしている代理店は生保の販売にかなり抵抗があるようだ。
そんな損保系代理店だから「生保もやれ!!」と言われて渋々、生命保険を取り扱ってはみたものの、さっぱり売れない。
そのため、ほとんどの代理店が「同じグループの○○生命だけ(1社専属代理店)」を細々と(半分お付き合いで)やっているという状況が続いている。
損保のお客さんから、稀に「生保もやってるの?」となどと言われ生保の話をする。
そのような時、一社しか扱っていないのだから、当然ながら提案するのもその一社。
だが、元々の人間関係もある客なので比較検討などされない。
「提案さえすれば」十中八九は決まる(契約になる)
そのため「どんな要望が来ても、とりあえず打ち返せる」ことが重要。
死亡保険なら、収入保障、一般的な定期保険、終身保険、そしてほとんど売れない養老保険。
医療保険、がん保険、年金保険などなど。
「自分のところの商品しか扱っていない代理店」のために、とにかく商品数だけは多く揃えるというオールマイティな体制を取っておく必要がある。
しかし、それらの商品が良い悪いはまた別の話で、中には糞みたいな商品も多いのだが、そんなことは関係ないのである。
「とにかく提案できること」
が大事であり、品質(保険料や保障内容)は二の次ということ。
とは言っても限界はある。
ドル建などの運用系商品は「始めるのも大変」なので、先の3社はどこも提供していない。
また、株式市場などに連動する変額保険も損保系生保の中では唯一あんしん生命が提供しているが、他2社はやっていない。
そのため、このあたりの要望が来た時は「お手上げ」なのだが、それでも「ドルはリスクがある」とか「自分のお客さんで変額で大損した」とか、嘘かホントか分からない話で煙に巻いて、自社の商品に誘導をしているようだ。
以上のような事情で、損保系生保には、自社の商品しか扱っていない「小規模な専属代理店」が多いため、そのニーズに応えるために大小様々な商品がある。
ちなみに、その会社の人間でも「売れたのを見たことがない」というような化石級の商品も結構あったりしするのだが、それすら肺梅停止にすると「代理店から文句が出る」かららしい。
「売りもしないくせに文句だけは一人前に言う」
と苦笑していた。
以上のようなことから、
1年に1つでも売れるなら続ける。
3社はそういうポリシーで商品のラインナップを構成させている。
本稿をお読みの方は、おそらく「損保代理店」に保険の相談をされて、かなりマニアックな商品を提案されている方だろう。
しかし、その商品に関しては、おそらく提案している本人ですら「良い物」だとは思っていない。
「ああ、他の保険会社の商品は提案出来ないから無理してこんなものを提案しているんだな。」
そう思って、静かに断った方が身のためだろう。
もちろん付き合ってあげても良いが、あまり高額なものはやめておいた方が良いとは思う。
参考コラム:「お付き合い保険」の断り方と「お付き合い保険」に入るメリット
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