提供会社:T&Dフィナンシャル
商品名:ハイブリットあんしんライフ/アセットライフ
この保険の弱点はここだ!!
一時払いの変額保険。
銀行の窓口などで販売されている商品で、例えば1,000万円などの一時金を保険会社に一度にドカンと預けて、保険会社をそれを運用する。
運用にあたっては契約者自身が以下の5つのファンドから運用先を決めなくてはいけない。(ファンドについては、弱点1で詳細を述べる)
・安定型
・やや安定型
・中間型
・やや積極型
・積極型
商品名としては、以下2つのラインナップがある。
・ハイブリッドあんしんライフ
-死亡保障確保コース
-生前贈与コース
・ハイブリッドアセットライフ
-超過給付コース
-生前贈与コース
-年金コース
各コースの違いは「出口」
つまりお金の受け取り方が違う。
死亡保障確保コースは、一番ベーシックな内容で、預けたお金が運用の結果で増えたり減ったりするものの、それらは
・死亡
・解約
のどちらのタイミングでしか戻ってこない。
例えば、預けた1,000万円が数年後に1,100万円になっていたとする。その時に解約すれば当然1,100万円が戻ってくるし、死亡しても1,100万円を保険金として受け取れる。
逆に900万円に「減ってしまっている場合」だが、解約すれば当然900万円しか戻ってこず、これは自己責任。
ただ死亡した場合のみ、純粋な価値は900万円なのだが、保険金としては1,000万円、つまり支払った1,000万円は元本が保証されて戻ってくる。一応、この面では「保険」の機能があるので、
「手元にお金を置いておいても増えないので、何かで運用したい。でも減るのは嫌だなぁ」
なんてことを考えている人(高齢者など)にとっては、
「仮に運用が失敗しても死ねば保険金として1,000万円は戻ってくる」
というのはそれなりにメリットがあるのだろう。(だからこそ銀行の窓口でこのような商品が売れる)
また、死亡保障確保型にはターゲット機能というものがあり、支払った金額が運用で増えて110%(105%、120%も選択可能)になった時には、自動的に運用を停止して利益確保をすることも出来る。
参考コラム:ターゲット?保険金保障?外貨建一時払商品に「よくある」特約を解説!!
このような商品にお金を入れる方はお金の運用に詳しくない方が多く、日々資産が上がったり、下がったりしていても、それをチェックしていない。
そのため、自身が投資しているファンドの調子が良い時に
「今全てのファンドを売れば支払った金額1,000万円が1,100万円になる」
というタイミングが来ても、それに気づかない。
その後、ファンドの調子が悪くなって、後から振り返れば「あの時売っておけば・・・・」ということにもなるので、このようなターゲットをあらかじめ決めておくのである。
「110%になればそれで御の字だよ」
そのような方は110%で設定しておけば、売り時を逃さずに済むし、「私はもうちょっと強気に120%まで」ということでも良い。
反面、ターゲットを設定すると、その後、更に伸びる可能性がある時でも強制的に利益確定をしてしまうというデメリットもある。
そのため、ターゲットは「設定しない」ということも出来る。
設定しなければ、自動的に売ることはないので、自分で売り時を判断できる。
以上が死亡保障確保型の特徴。
超過給付コースは、基本的には死亡保障確保コースに似ており、同じくターゲットを105%、110%、120%から選択するのだが、こちらはそのターゲットを達成した時には、その都度「お小遣い」のように100%を超えた分(超過した分)を受け取れる(給付)
だから超過給付コース。
例えば1,000万円を預けて、ターゲットを105%に設定したとする。
運用をしていて、どこかのタイミングで105%、1,050万円になった。
その時点で「超過」している50万円分だけをファンドから現金化して、契約者に返す。
当然、残金はスタート時と同じ1,000万円となり、またそこから運用をしていく。
これを繰り返す。要は運用が上手くいった場合、その利益をちょこちょこ受け取れるということ。
いかにも老人が好きそうだな、という印象。
なお、超過給付コースであっても、ターゲットを設定せずに、「お小遣いを貰わず、ずっと運用を続ける」ことも可能で、この場合、先に説明した死亡保障確保コースとほぼ同じということになる。
生前贈与コースは110万円の暦年贈与の制度を利用したもので、資産家の父親が、この商品にお金を預け、その中から子供や孫などに毎年110万円を自動的に贈与してくれる。
贈与などは、別に自分でやれば良いのだが、親子間であっても贈与の契約書を作ったりする手間もあるので、それを保険会社が代行してくれるのが本プラン。
筆者の個人的な感想では、別に保険商品を使う必要もないし、折角運用するために預けたお金が「贈与で毎年削られてしまう」ため、あまり意味はないかな?という気もする。
最後の年金コース(アセットライフ)は、自分が年金を受け取れるコース。
お金を預け、それを運用してもらいながら、自分のお小遣いも貰える、というようなコンセプトだが、これも「運用中で元本が減ってしまう」というデメリットがあるので、あまりお勧めはしない。
先に説明した死亡保障確保コースで、なるべく「大きな塊」のまま運用をしておいて、お金が必要であれば都度一部解約などをすれば良い気もする。
以上が商品概要。
弱点1 ファンドが弱い
本商品では、5つのファンドが設定されており、契約者はこの中から自分の資産をどれで運用するが選ぶ。
安定型、やや安定型、中間型、やや積極型、積極型の5つがあり、筆者からすると「やや安定型とかやや積極型の『やや』って何だよ?」などと思ってしまうが、まあ、高齢者向けなので、分りやすさを重視しているのだろう。
例えば「安定型」は、資産の70%が国内債券(日本国債など)となっており、残りは国内株式15%、国内リート(不動産ファンド)15%となっている。
国内市場だけに投資しているので、確かに「安定」ではあるが、何の面白みもない印象。
これが「やや安定型」になると、国内株式25%、国内リート25%、先進国債券15%、新興国債券35%となる。国内市場に50%、残り50%を海外(先進国+新興国)に投資しているが、海外といっても全て債券(アメリカ国債など)なので、そこまでの変動リスクはない。確かに「やや安定型」だな。という感じ。
「中間型」はかなり細かく投資先を分散していて、50%は先進国債券(アメリカ国債など)だが、他は国内、先進国、新興国の株やリートに細切れに資金を投入している。
中間型などと言っているが、筆者の感覚としては「実はこれが一番危ないんじゃない?」という気もしていて、詳しくは後述するが実際に激下がりしている。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と言うが、分散投資も「やり過ぎる」とよくない。
投資先の一つ一つがあまりに小さ過ぎるので、仮に市場が全面安というような時、その中のパーツの一つが「逆に上がった」としても全体を助けるほどのパワーがないのである。
「船の乗組員が全員子供」
という感じで、何とも心もとない。
「やや積極型」は100%先進国の株式、「積極型」も同じく100%先進国株式となっていて、積極型はIT企業などが上場する米国ナスダック市場に連動しているのに対し、やや積極型の方は、日本を除く先進国22カ国に上場している大型株をメインに投資をしている。
正直言って、このあたりはどちらが「積極型」で、どちらが「やや積極型」なのか怪しいが、ナスダック市場の方が値動きは激しいので、そちらを「積極型」と定義しているのだろう。
で、これらのファンドの現在の状況(2022/10/7)は以下の通り。
安定型 96.52
やや安定型 94.51
中間型 73.55
やや積極型 107.74
積極型 107.79
どのファンドも開始時には100から始まり、本ファンドは2019年1月に開始しているので、そこから2022年10月まで、約3年間運用をしてきた結果がこの数字ということ。
はっきり言うが、落第だろう。
特に中間型が酷い。
中間型の50%は先進国債券で、ほぼアメリカ国債なのだろう。
おそらくコロナ禍で掴んでしまった低利回りのアメリカ国債が、昨今の利上げで暴落し、その評価損が反映されてこの数値になっているのでは?と推測するが、本来それをサポートするはずの株式やリートも振るわず(投資があまりに少ないため、50%のアメリカ国債の下落を補えない)というところだろう。
だが、本商品が「中間リスクです」と言っているものがこれだけ下げているのは「面目丸つぶれ」とも言える。
中間型ほどひどくはないが、安定型、やや安定型もマイナスであり、そうなると、何が安定で中間なのか良く分からない。
かろうじてアメリカ市場などに投資しているやや積極型と積極型がプラスを維持してはいるが、これも107台と、「3年間運用してきた割には・・・・」という感じ。
なお、武士の情けでこれ以上細かくは言わないが、各ファンドの運用手数料も総じて高く、
ファンドが弱い
としか表現のしようがない。
変額保険とは、契約者がリスクをとって株式市場などに投資をする商品で、保険会社はそのツールとして「ファンド」という選択肢を提供する。
もちろん結果は自己責任ではあるが、そのファンドを提供した側の「評価」もまた時を経過した「結果」でしか見ることが出来ない。
その結果だけを見ると「良くないね」という評価になる。
この保険の弱点、こう考えろ!!(解決策)
正直なところ「今は選べないよね」と思う。
ただ、筆者は本商品のファンドの中で、「積極型」は悪くはないと思う。
ナスダックに100%連動しているので、シンプルで良い。
他の変額でもアメリカ市場のインデックス型はあるが、ダイレクトにナスダックだけに連動するファンドは少ない。
なお、インデックスファンドについては、以下のコラムにて詳細を解説しているのでご参照頂きたい。
参考コラム:変額保険の「ファンド」を超解説!!インデックスとは?アクティブとは?
ナスダックには、アップル、マイクロソフトなどのGAFAMが上場しており、かつ10年後、20年後を作る新興ベンチャーもこの市場を目指しているので、成長力はどこの市場よりも強い。
そのため、今後、株の暴落などが発生して、全世界全面安というような状況になった時、手元にある資金をこの商品の「積極型」に入れると面白いかもしれない。
が、「だったらナスダック連動の投資信託買えば良いじゃん」という話でもあるのだが、保険にしておけば保険の非課税枠も使えるので、特に高齢者などには「資産の保険化」はそれなりにメリットがある。
なお、現状この保険に入っていて、特に中間型などにお金を入れてしまった方は
「メタメタだよ。騙されたよ・・・」
などと嘆いているだろうが、そのような方も、今後、株価が暴落して積極型のファンドが100を大きく切ったようなタイミングで資産をそちらに振り替えて(スイッチングと言う)も良いかもしれない。
検討した方がいい他社商品
ソニー生命 バリアブルライフ 変額終身・変額定期 ★★★☆☆
アクサ生命 アクサの「資産形成」の変額保険 ユニット・リンク ★★☆☆☆
プルデンシャル生命 変額保険(終身タイプ/一時払タイプ) ★★☆☆☆
メットライフ生命 ライフインベスト/ライフインベスト プラス ★★☆☆☆
編集後記