学資保険は今も昔も人気のある保険商品。
各社から「学資を貯める」ことを目的とした商品が多く販売されている。
ここでは、2019年8月現在の
学資保険の考え方
を解説する。
なお、筆者の私見であるため、あくまで参考として読んでいただきたい。
他社の学資保険の☆評価一覧は、コチラ
学資保険の現状
まず、学資保険だが、主な目的は2つある。
1 子がある年齢になった時(だいたい18歳)までにお金を貯める
2 万が一、そこまでに父親(もしくは母親)が亡くなった時には「貯まるはずだったお金」を一時金で受け取れる。
もしくは毎月の支払いがなくなり、子がある年齢(18歳など)になった時に受け取れる。
まず結論から言うが、現状、学資保険の利回りは過去最低に低い。
その理由はマイナス金利。
この手の貯蓄商品の運用は主に日本国債で行うのだが、現時点での国債の利回りは0.05%程度。
100万円預けても1年間に500円の利回りしかない。
仮に18年間この国債を持ち続けたとしても、
500円×18年間 =9,000円(0.9%)
の運用益しかなく、ほとんど増えないことになる。
仕方がないので、保険会社は国債だけでなく、社債や地方債などを組み合わせて、なんとか利回りが高くするように努力しているが、それでも102%~105%程度が関の山だろう。
10年くらい前だと、学資保険は110%~120%くらいの利回りが当たり前だったので、そのころを知っていると何とも寂しく感じる。
ではどんな商品があるのか?
ここでは、最も条件が良いと思われる明治安田を例にとってみよう。
保険会社:明治安田生命
商品名:つみたて学資
・10年間払込プラン
父親の年齢:25歳
子の年齢:0歳
毎月の保険料:23,623円/月
10年間の支払い合計:283万4,760円
まずは10年間支払って、その後は「放っておく」
子が18歳になった時にまず75万円、その後、19歳、20歳、21歳とそれぞれ75万円を受け取れて、その総額は300万円となる。
283万4,760円を支払って300万円を受け取れるので、
300万円÷283万4,760円 =105.82%
となる。
また、途中で父が死亡した場合、保険料の支払いもなくなり、その後、約束通り子が18歳になってから75万円が4回支払われるとのこと。
各社の商品をざっと見た感じ、これが一番良い条件だった。
つまり、子が21歳になるまでに+5.82%増えていることになる。
21年で割ると、1年で0.277%となり、昨今の低金利を表している。
なお、このプランでは、
1 10年間払込
2 父が25歳と若い
3 子が0歳から開始
4 高額割引適用
という貯蓄を目的とする場合の好条件がすべてそろっている。
1の10年間払込は保険会社にとってありがたいことで、ギュッと短期で支払ってもらうことで、早めにまとまった「塊」のお金になるので運用しやすい。
逆に15年とか18年間とか、ダラダラと支払う場合、運用利回りは下がる。
2の「父が若い」という点は、若い分、死亡リスクが低いので、途中で亡くなって保険料を免除する可能性が低い。その分、利回りが上がる。
3の「子が0歳」も、18歳になるまで「まるまる18年間」ある。その分運用期間が長くなる。
4の高額割引は一定以上の保険料を支払う場合(いくら以上なのかは保険会社によって違う)、保険料が少しだけ安くなる。
保険料が安くなっても、将来貰えるお金は同じなので、その分、利回りが上がる。
これらの条件がそろった上で「105.82%」なので、どれか一つでも欠けると1~3%程度は下がってしまうだろう。
何が言いたいのかと言うと、
これだけ最高の条件が揃っても所詮105.82%程度
ということ。
実際のところ、お父さんがもっと高齢だったり、保険料をもっと抑えたりすれば103%前後になってしまうのではないだろうか?
そのため、学資保険のメインプレイヤーと言えば、この明治安田の他に、フコク生命、aflac、ソニー生命あたりだが、どこの商品でも103%前後というのが相場。
20年かけたリターンが3~5%程度で本当に良いのか?
ということはしっかり考えた方が良いだろう。
ちなみに筆者は、顧客から学資保険の相談をされても、
「今は金利が低いからやめておいた方が良い」
とはっきり言っている。
正直な話、私なら20年で+3%、かりに5%だとしてもやらない。
保険は一度始めてしまえば解約できないし、もし解約したら大損してしまう。
「長い」ということは保険のリスクである。
それなのに3~5%程度のリターンでは、やらない方が良い。というのが筆者の考え。
とは言え、これは保険会社の責任ではない。
国の金利政策のせいでこんな状況になっているのだが、それでも各社は良く頑張っていると思う。
裏側を話せば、これらの学資保険。各社ともほとんど利益がない。
冒頭で述べたように0.05%程度の金利しかない状況(20年で0.9%)で、顧客に3~5%のリターンを出す。
しかも、途中で死亡すれば、その分の「学資」は丸々保険会社が負担するのだから、儲かるはずがない。
それでもこのような商品を出すのは、
ドアノッカー商品
としての効果があるから。
ドアノッカー商品とは、とりあえず魅力的な商品で各家庭にアポイントを取り、まずは口座を作ってもらうための武器で、ある種の撒き餌的なもの。
どこの会社も学資保険のコストは「宣伝広告費」と割り切っている。
そのため、学資保険はネットでは加入できず、原則、面談が必要になる。
そこで、死亡保障は大丈夫ですか?医療保険は?働けない時の保険は?と話を拡大させるのである。
とは言え、契約する側からすれば、「利回りが高ければ」そんな話はどうでも良いこと。
そうなると、
3~5%で良いのか?
という話に戻るが、これはあくまで個人の感覚。
筆者は嫌だが、それでも「定期預金よりは良いから」、「保険がついるから」と納得する人も多いだろう。
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学資保険「以外」の選択肢
では、学資保険「以外」にはどんな選択肢があるのだろうか?
ここでは3つの方法を提示したい。
1 自分で貯めて様子を見る
今の低金利下で保険商品に加入すると、その「低金利」がずっと固定されてしまう。
これが問題。
だから、とりあえずは様子見で、自分でしっかりとお金を貯めておく。
金利が回復したら(いつになるのか全く闇の中だが)、それまでに貯めておいた「まとまった資金」を銀行、保険、証券などから、分野にこだわらず良い商品を探す。
例えば、今でもソフトバンクや銀行など、かなり安定性の高い企業の社債が1.5~2%程度で販売されている。
まずは100万円を貯めて、これらの社債を買うだけでも、18年間で
1.5%(1.5万円)×18年=27%(27万円)
となり、学資保険の5~10倍のリターンがある。
会社がつぶれない限り、元本は丸々戻ってくる。
しかし、このような社債を買う場合、最低50万円などの条件があるため「月々支払って買う」ということはできない。
そのためにも、まとまったお金を貯める必要がある。
2 投資信託を買う
元本割れのリスクはあるが、月々型の投資信託を買うのも良い。
ただし、元本割れのリスクがある。
そのため「何となく怖い」という人も多いが、なんせ18年もの運用期間があるのだから、一時的に元本割れしても、トータルでは増えている可能性が高い。
筆者なら、海外株式インデックス型という投資信託か、低リスクの債券型の投資信託が良いと思う。
だが、この手法を取るにはまずは勉強すること。
そもそもが日本人は金融リテラシーが低すぎる。
何も勉強する気がないなら18年で3%のリターンで満足しろよ。
そう言われて発奮するなら、お子さんが産まれたのを良いタイミングとして、金融とは何か?投資信託とは何か?ということを少しだけ学んでみても良いのではないか?
本を2,3冊も読めば十分だ。
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3 貯める自信もない、勉強も嫌なら終身保険、外貨建保険
1で「まずは貯めなさい」、2で「勉強しなさい」ということを偉そうに話したが、現実問題として、
・自分では貯められない
・金融なんて全然分からない
という人もいる。
そういう人はやはり保険が向いている。
学資保険でも良いが、選択の対象として「終身保険」、「外貨建保険」も入れた方が良い。
終身保険では「10年間で支払ってあとは放っておく」という短期払い終身というものがある。
代表的なものではオリックス生命のライズなどが有名。
10年間で支払い、その後18歳になった時に何%になっているか?
これは性別、年齢などによっても違うが、学資保険よりリターンが良い場合も多い。
保険代理店などで「学資保険を」とオーダーすると、ズラッと各社の商品を並べてくれるが、気の利いた販売員なら、
「これも学資保険代わりとして良いですよ」
とおススメしてくれるかもしれない。
学資保険と違って、
・いつでも使える
・使わずにずっとそのままにしておくことも出来る
という特徴がある。
学資保険の場合、18歳まで一切手を付けられない商品が多いが、終身保険の場合、高校進学(15歳)などのタイミングでも解約することが出来る。
もちろん解約を早めているので、その分、リターンは少なくなるが、「私立に行きたい」などという理由で、急遽資金が必要になることもある。
そのような時に便利。
また、昨今は「大学に行くのが良い」とも言い切れない。
大工、美容師、職人など「手に職をつけたい」と自分の道を進むのであれば、それも良い決断だろう。
そうなれば学資も特に必要なくなる。
学資保険であれば22歳の満期があれば強制的にお金が戻ってきてしまうが、終身保険であれば原則「終身」の保険なので、いつまででも預けておける。
22歳を超えても運用を続けてくれるので、その分、増える。
結婚したタイミングなどで、それらの資金を渡しても良いだろう。
と、このように終身保険にはメリットも多いが、とは言え、目的は学資。
まずは、
18歳の時に学資保険より増えるか?
という点に絞って比較検討した方が良い。
次に外貨建保険。
外貨建保険であれば、学資保険よりは確実に増える。18年間くらいの期間があれば、110%~120%程度(あくまでドルベース)には増えるのではないだろうか?
しかし、為替リスクがある。
肝心の為替がー10%(110円が100円くらい)になってしまえば、10%のリターンも吹き飛んでしまう。
とは言え、為替には波があるので、一時的に損をしても、自分が買った値段、例えば1ドル110円くらいで買ってきたのであれば、その同水準まで戻るのを待って解約すれば良い。
そうすれば、10~20%のリターンもそのまま得ることが出来る。
しかし、為替は学資とは相性が悪い。
子が18歳。大学進学の時の為替レートがいくらか?なんていうことは、神様でないと分からないし、本当に必要な時に為替の調子が悪いと損をする可能性も出てくる。
だからこそ、外貨建保険で学資保険の代わりにするなら、
最悪、学費は貯金でなんとかなる
ということが条件となる。
例えば子が18歳の時に、大学進学で150万円が必要になったが、その時運悪く1ドル90円になってしまい保険を解約すると損をしてしまう。
そんな時は「貯金から出しておけば良い」という余裕がある家なら、外貨建保険も良いだろう。
そこから数年して、為替の調子が良い時に解約して、貯蓄の穴埋めをすれば良いのだから。
逆に、「この学資保険がなければ学費を賄えない。」とというような家は、外貨建てはやめておいた方が良い。
タイミングだけは何とも言えないので、外貨をあまりあてにするのは危険。
そのため経済的に余裕のある家であれば、学資を外貨建保険で積み立てるのもアリだろう。
まとめ
・今は超低金利。学資保険にとって受難の時代であることは間違いない。
・減るわけではないので、悪い商品ではないが、この低金利の状況で契約するべきか?その点はしっかり考えた方が良い。
・学資保険でなく「とりあえず貯めておく」か「しっかり勉強して子のために投資する」が筆者のおススメ
・その2つが無理なら、学資保険という商品名だけにこだわらず、「18年後に何が一番貯まっているか?」という点から、終身保険、外貨建保険など色々な商品を比較検討した方が良い。
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