法人向け「団体定期保険」総論

団体定期保険とは?

法人が、自社の社員を対象に1年更新の短期の定期保険に加入するための商品を「団体定期保険」と言う。

保険会社によっては、単に「短期保険」、もしくは「団体定期」などと呼ぶこともあるが、意味は同じ。

16歳-25歳、26歳-30歳、31歳-35歳、36歳-40歳、など「年齢帯」によって保険料が決まっていることが多いが、厳密に「年齢」ごとに保険料が決まっている保険会社もある。

社員の福利厚生の一環として

・社員が死亡した時に、法人が死亡退職金や弔慰金としてまとまったお金を支払うための準備

のために入ることが多い。

なお、保険業界で「福利厚生プラン」というものがあり、同じ福利厚生を目的としているため「団体定期」と混同しやすいが、福利厚生プランは貯蓄性の養老保険を使ったものであり、建前上は「社員の死亡保障の準備」ということになってはいるものの、メインの目的は節税と貯蓄。

法人の内部留保を貯めることが主旨で、死亡時の保障はオマケという感じ。

参考コラム:全員加入の養老の保険料を1/2損金で落とす!!の「落とし穴」

対して、団体定期保険は、掛け捨ての定期保険を使用するため、法人側としての貯蓄性はない。

そのため、純粋に「社員のための保障」である。

なお、福利厚生プラン(養老)は保険料の1/2が損金処理だが、団体定期保険は貯蓄性がないため、全額損金となる。

団体定期保険を導入している法人は、どちらかと言うと「古い会社(製造系、建設系など)」が多い。

社員のことを思い

「(社員が)死んだからと言って、後は知らんとは言えない」

というような「家族的な経営思想」を持った経営者が入る傾向がある。

対して、ITなど、社員の流動性が高い業界では、団体定期に入っている会社はほとんどない。

会社が、貯蓄にもならないのに社員の保険料を負担しているということから、団体定期は「ホワイト企業の証」とも言われる。

筆者の経験でも、団体定期に入っている法人は概して社員思いの「良い会社」であることが多いように思う。

ちなみに団体定期保険は、ネット生保や外資、もしくは、大手生保がネットや保険ショップ向けの商品の開発・販売専用に立ち上げた「第二生保(メディケア、ネオファースト、はなさく、なないろ、等)」などの「新興保険会社」では取り扱っていないが、国内大手や損保子会社生保などでは今でも販売が続いている。

だが、どこの保険会社も「過去にやっていたから、今も仕方なく続けている」という感じ。

要は、団体定期保険を導入した法人では今でも社員が入ると「追加」で加入をさせることになるので、過去に販売してしまった以上、それらの追加を受けないわけにはいかないということ。

売る時だけ調子良いことを言って、「追加」などの後フォローを放棄すれば、信用問題にかかわるし、

「だったら全部まとめて他社に移る」

という話にもなってしまう。

団体定期自体、保険料も安く、また今どきこの制度を新規で導入する企業も少ないので、追加だけではさほどの契約数にならないので、本音で言えば

「面倒だし、儲からないし、辞めたい」

というところらしいが、前述の事情により渋々続けているというところだろう。

このあたりは、代理店の販売手数料に表れている。

団体定期保険の手数料は、どこの保険会社も「異様に安い」ので、率直に言えば「新規では売らないで下さい」ということなのだろう。

保険料に関しては、

・国内大手は全体的に高い

・損保系生保子会社は安い

という傾向があるものの、年齢帯や性別によってもまちまちで、その法人の社員の年齢構成によっても変わるので、ダントツで「この保険会社が強い」というようなことはない。

但し、安いと言っても、あくまで「団体定期としては」というだけで、個人でネットで入るような定期保険に比べるとそもそもが高い。

理由は2つある。

団体定期保険の保険料が高い「ワケ」

1つは、団体定期の保険料がずっと高いまま据え置かれているのに対し、個人向けはネット生保が出てきてから保険料の競争が激しくなり、「劇的に安く」なってしまったこと。

昔は団体定期の保険料は、個人向けより「多少は安いかな」という感じだったのだが、今では完全に逆転してしまった。

であるならば、団体定期保険の保険料も「ネット並」に下げれば良いのだが、まあ、これは保険会社としても痛いところだ。

団体定期保険は年齢帯ごとに保険料が決まっているため「保険料を見直し」すれば、翌年から全年代で保険料が下がることになり、全体の保険料はガクッ下がる。

つまり保険会社からすれば「今まで取れていた保険料収入」が激減することになり、これはなかなか決断出来ない。

また、いまどき会社が保険料を負担して社員を保険に入れるような「人の良い会社」など少ないので、保険料を下げたところで新規の契約も望めない。

団体定期は法人側でも既に制度として導入しているので、保険料を下げなくても、それなりには続けてくれるので、そうなると、

「黙っていれば分からないから、このままで・・・」

ということになるのだろう。

2つ目は「一括告知」という制度。

一括告知は、社員〇〇名以上(保険会社によって基準が異なる。10名以上、20名以上というところが多い)で加入する場合、法人が

「うちの社員は全員健康です」

と一括で告知(健康状態の申告)をするもの。

本来、生命保険に入る場合、保険会社や代理店の職員が個々の社員と面談し、3ヵ月以内の通院の有無や、5年以内の入院、手術、病歴などを事細かく聞かないといけない。

だが、社員全体で入るとなると、その全員と面談するのは容易ではない。

10名程度であれば、何とか出来るが、100名、1,000名となると、面談をセッティングするだけで法人の担当者に膨大な負担がかかる。

そのため、一括告知という制度があるのだが、この制度を使うとどうしても診査が緩くなる。

正直、法人も自社の社員の健康状態など正確には把握していないので、あからさまに病気や怪我で休職している人間を除き、

「まあ、みんな健康だろ?」

という程度で「全社員、健康状態問題なし」と一括告知をする。

しかし、保険会社としてはこれはリスクである。

事務処理上、一括告知にせざるを得ないが、中には確実に血圧が高かったり、肥満だったり、酒の飲み過ぎて肝臓が悪いような人が紛れている。

そのような死亡リスクが高い人も含めて「まとめて」保険を受けているため、その分、保険料を少しだけ高めに設定しているのである。

以上の理由。

・ネット生保の隆盛で、個人向けの定期保険が激安になり、法人向けの保険料を逆転してしまった

・しかし、団体定期の保険料を下げると既存契約の保険料がガクッと下がって保険会社が困る

・一括告知というリスクを受けている(保険会社としては多少割高な保険料が欲しい)

これらのことから、現状、団体定期は競争力のない保険料となってしまっている。

そのため、仮に10名以下のような法人で定期保険に入るのであれば、「団体定期保険」よりは、通常の定期保険(一括告知制度がなく、個々に告知を取る)方が良いだろう。

「これから」団体定期保険に入るべきか?

筆者の個人的な感想で言えば、社員のために保険に入ってあげるのは、経営者の「徳」を積むという意味では素晴らしいことだと思う。

話が少々逸れるが、結局のところ、経営は「愛」だ。

もちろん、そんな綺麗ごとだけでは済まないが、縁あって自分の下に来た人間を育て、守って、活用する。

そのベースにあるのは、人間に対する愛だろう。

逆にこれがない経営者は短期的には成功しても、どこかでつまずく。

かと言って愛だけで厳しさがない人間もダメ。

筆者も色々な会社を側面から見てきたが、このあたりのバランスは難しい。

で、保険だが、会社負担で社員を保険に入れてあげれば、単純に社員は喜ぶ。

特に単身者など、自分自身で保険に入っていないような人にとってはメリットは大きい。

「会社はそこまで俺たちのことを考えてくれているのか」

と意気に感じる人も多い(「だったら保険料分だけ給料上げてくれよ」などとネガティブなことを言う奴もいるが)

このあたりの「家族感」を共有するのは、団体定期保険は良いツールだと思う。

但し、こういう家族感(ある種の甘ったれた関係)が嫌いな経営者もいる。

「あくまで仕事をするために集まっている。貢献には給与で応える。社員に対して余計なサービスはいらない」

それも正解だし、そういう社風であれば、保険など必要ない。

つまりは、経営者の考え方や社風にもよる。

団体定期は「良いね」と言う人と「必要ない」と言う人とハッキリしている。

こればかりは、経営者の性質だろう。

なお、団体定期は一方的に社員にメリットがある制度だが、養老保険を使った福利厚生プランなら、法人側にも節税、内部留保という利点がある。

こちらも併用して検討しても良いかもしれない。

参考コラム:全員加入の養老の保険料を1/2損金で落とす!!の「落とし穴」

団体定期保険、制度を止めるべきか?

逆に、今既に団体的保険をやっているが、これからも続けるべきか?止めるべきか?それとも違う制度に移行するべきか悩んでいる方もいるだろう。

これは、正直、かなり難しい。

もちろん、経営が苦しくてどうしてもコストカットが必要なのであれば議論の余地はない。

すぐにやめるべきだ。

だが、そうでない場合は慎重に考えた方が良い。

実際のところ、団体定期保険は制度導入時こそ「タダで保険に入れる」と喜ぶ社員も多いが、何年も継続されると、それが「当たり前」になり何の感謝もなくなる。

経営者からすれば「意味あるか?これ?」というところだろう。

だが、止めると色々と問題がある。

まず、

「今まで会社が保険料を出してくれてたのに制度をやめるのか・・・・苦しいのかな?」

などと、無用なことを考える社員が出てくる。

このあたり、社員は意外と会社のやることを見ている。

また、普段仕事が出来ない奴に限って「保険停止=経営危機」のように大袈裟に周囲に吹聴したりするので厄介だ。

社員が何と言おうが関係ない!!無駄なものはやめる!!

そんな強権的な会社であれば、こんな便所の噂話を気にする必要はないが(まあ、そんな会社であれば、そもそも団体定期などやっていないだろうが・・・)今どき、こういうタイプの会社も少ないので、多少の配慮は必要かもしれない。

筆者がすすめるのは「新しい餌」と「お小遣い解消」

「死亡保障だと、死亡した時だけしかカバーされないから、それより病気などで働けなくなった時の就業不能保険の方が社員のためになる」

こんな説明で、就業不能保険(GLTD)などに入る。

もしくは、医療保険、怪我に対応する傷害保険などでも良い。

GLTDは損害保険会社が提供しているが、団体定期より全然保険料が安い。

医療保険、傷害保険も内容次第だが、団体定期よりは安く済むことが多い。

要は、死亡より身近な「新たな餌(就業不能、医療など)」を用意することで「会社はやってくれている」という気分だけを残して、コストダウンする。

また数年経ったら、より軽度の保障にする。

そうして徐々に制度を縮小していく。

もしくは、「お小遣い」的に一律給与アップでも良い。

説明の主旨としては、以下のような感じ。

・今まで会社で保険を用意してきたが、入りたい保険は個々人で違う。

・単身者は医療保険の方が良いと言うし、家族持ちは死亡保障の方が良いと言う。

・そのような『多様性』に合わせるには、会社が一律で同じものを提供するより、今までの保険料相当を給与に上乗せして、それぞれが自由に使ってもらった方が良い

一見、凄い社員のことを思っているように感じるし、給与アップは誰だって嬉しい。

これで「ボーナス」に数千円上乗せしてあげる。

団体定期の保険料がいくらかなんて、社員は知らないので「これが今までの保険料です」と言われれば納得せざるを得ない。

あくまで「ボーナス」なので、翌年以降は業績によって変動してしまうので「保険料分を上乗せ」するか、しないかはその時の状況で判断すれば良い。

要は「制度やめちゃうけど、お詫びに1年分の保険料を差し上げます」ということ。

シンプルだが、効果てきめんで、何の不満もなく制度廃止が実現できることが多い。

 

以上、団体定期保険の総論。