変額保険とは?
変額保険とは、その名の通り「額が変わる保険」という意味で、運用成績の結果に応じて、
・死亡保険金
・解約返戻金
が変化する。
但し、死亡保険金には「最低保証」が設定されており、例えば「死亡保険金1,000万円」という内容で契約していれば、死亡時にどんなに運用成績が悪くても、保険金1,000万円は保障されている。
逆に運用成績が良好な場合、死亡保険金が1,100万円などに増えることもあるので、保険金については
最低1,000万円 運用結果によっては1,000万円以上
と理解しておけば良い。
つまり、「保険」としての最低機能は備えているということ。
一方、返戻金については、一切の保障はない。
そのため、運用が振るわず、解約時に損をすることもあるし、運用がうまく行けばプラスになって戻ってくることもある。
貯蓄という面では、完全な「自己責任」ということ。
通常の生命保険では、原則的に「利率が固定」されていることが多いので、死亡保険金は一定で、返戻金も加入時に見せられたシミュレーション通りになる。(保険会社が破綻した場合を除く)
だが、変額の場合「死亡保険金の最低保証」以外は全て変動する。
変額保険の仕組み
変額保険は現在、以下の8社から販売されている(当サイト調べ)
各商品には株式、債権、不動産など投資対象ごとに「ファンド」が用意されており、自分で何に投資するかを決める事ができる。
投資先は1つだけでなく、例えば、株式50%、債券30%、不動産20%というように複数に分散することも可能。
また、ほとんどの保険会社で株式、債券、不動産などをミックスした「総合型(バランス型などとも言う)」が用意されており、自分で考えるのが面倒な人はこれを選ぶ場合が多い。
なお、各ファンドには「インデックス型」と「アクティブ型」があるのだが、これらの詳細は以下コラムにてまとめてあるので、ご一読頂きたい。
参考コラム:変額保険の「ファンド」を超解説!!インデックスとは?アクティブとは?
これらの各ファンドには「ユニット単価(ユニットプライス)」というものがあり、運用を開始した日の価値を「100」として、以後運用成績を反映しながら、その価格は日々上下している。
契約者はこのユニットを毎月の保険料で買っていくのだが、これを2万円の保険料を支払ったとした場合で説明していこう。
今回は株式に投資をしていたとしょう。
まず、大前提だが・・・
この2万円の保険料は
全額投資されるわけではない
先程、「変額保険は死亡保険金の最低保証がある」と説明したが、これを実現するためにはコストが必要になる。
運用がメタメタでも、保険金を用意するための「必要最低限のコスト(純粋な保険料)」は、別途「引かれている」のである。
では、2万円のうちどの程度の保険料が引かれるのか?
これは年齢、性別、保険会社などによって異なり、原則、公表はされていないのだが、だいたい
保険料の10~15%程度が相場
と言われている。
そのため、2万円支払っても、まず2,000円(10%)から3,000円(15%)程度は引かれ、残りがファンドに投資されていく。
ここでは2,000円引かれ、18,000円が投資に向かうということにしよう。
ある月の株式ファンドのユニット単価が125であれば、18,000円で144ユニットが変える。
翌月は株式市場が上昇し、それにつられてユニット単価も上がり150になった。
そうなる同じ18,000円でも120ユニットしか買えない。
現状、18,000円を2回支払い、合計36,000円で264個(144+120)のユニットを買ったことになる。
ユニットの取得単価は136.36ということになる。
だが、忘れてはいけないのは、支払っている保険料は2万円×2=4万円ということになる。
整理すると、こんな感じだ。
支払った保険料 4万円
ユニット取得数 264
取得単価 136.36
こんな感じで数年続けた結果、ある時点で以下のように状態になった。
支払った保険料 240万円(10年間)
ユニット取得数 14,400
取得単価 150
この時点で解約をしようと思いたち、現在のユニット単価を調べてみると、1ユニット180だと言う。
この場合、解約返戻金は
14,400×180=259万2,000円
ということになる。
240万円支払って、259万2,000円だから、多少得をしたことになるだろう。
だが、運悪くリーマンショックなみの大暴落が発生し、ユニット単価が90になっていたりすると、
14,400×90=129万6,000円
となってしまい、支払った保険料の総額240万円は約半分になってしまう。
つまり、長い年月かけてユニットをコツコツ買ってくのだが、解約時には「その時の単価」が重要になるということ。
等式先の市場が悪い時などに解約をすると損をしてしまうので、このあたりは自己責任となる。
変額保険のメリットとは?
さて、今まで述べてきたように、なかなか複雑な商品である変額保険だが、これにはどのようなメリットがあるのだろうか?
これを一言で言えば「返戻金・保険金の増加が青天井」ということだろう。
また、販売の現場では「インフレ対応する保険」などとも言われる。
基本的には世界の株式市場は、短期的には上がったり、下がったりしないがらも、長期的には成長を続けている。
そのため、そこを対象に10年、20年の長いスパンで投資をしていけば、結果的に資産は増える。
また株式市場は経済成長率(インフレ)も反映するため、それに連動する変額保険は結果的に「インフレにも対応する」ということになる。
投資先の運用が順調であれば、死亡保険金や返戻金も増えるからだ。
変額保険、どこの会社の商品が良いか?
では、これらの変額保険。
どこの会社の商品が良いのだろうか?
まずはじめに結論を言ってしまえば、
正直、どこの商品もそこまで差はない
ということになる。
もちろん、売れ筋、という意味では変額保険の老舗で長い運用実績を持つソニー生命や、同じくアクサ生命、メットライフ生命などの外資系も人気がある。
また、運用が長いと、100で始まったはずのファンドのユニット単価が300とか500とか、中には1000を超えているようなものもあり、その価格推移などのグラフを見てしまうと、
この会社は運用が上手いのではないか?
などと思ってしまう。
A社の変額は運用期間も長く、100でスタートしたユニットが現在500となっている。そして1年後550になった。
B社の変額は運用期間が短く、かつスタート直後に株式市場が暴落し100でスタートしたユニットが80になっている。そして1年後88になった。
この2社を比較した場合、何となくA社の方が良さそうな気がしてしまうが、1年後の「結果」で見れば、どちらも+10%増ということで、結局、どちらに投資をしても同じである。
何が言いたいのか?
結局は自分の契約がスタートしてからのユニットの変動率が重要
であり、過去の実績や現在の単価などは「基本的には関係ない」ということ。
特に株式市場のインデックス型などであれば、どこの保険会社のファンドも「同じ投資先」にお金を投じているので、必然的に結果も同じになる。
例えば、日経平均のインデックスファンドの場合、日経平均を更生する225社の株式(日経平均とは、この225社の株価の平均値)にほぼ自動的に投資をしているので、日々のプラス・マイナス日経平均と同じ動きをするようになっている。
と言うことは日経平均のインデックス型であれば、どこの保険会社も同じことをやっているだけなので、結果に差など生まれようがないのである。
ただし、「同じようなもの」でも手数料などは保険会社ごとに異なるので、それだったら安い方が良い。
先に例であげた、A社、B社の場合、B社の方は手数料が安いのであれば、たとえユニット単価が低くても(イメージが悪くても)そちらの方がベターということになる。
とは言っても、実際には「売れている変額保険」の方が、手数料も安いことが多い。
多くの資金が集まるため、ボリュームディスカウント(保険会社から運用会社などに支払うコスト)が効き、結果、契約者の運用手数料も下がるためだ。
逆に弱小の変額保険の場合、資金が集まらないので、小さな規模でファンドを運用しなくてはならず、どうしても高コスト体質になりがち。
結局のところ、過去の成績も良くて、順調に契約者を集めているファンドがどんどん強くなるという構造ではある。
この論法で言えば、ソニー、アクサ、メットライフ、あんしん生命あたりから選んでおくのが無難かな?というところ。
変額保険の運用方法について
出来る、出来ないというのは置いておいて、変額保険の運用は
・株式や不動産ファンド(REIT)などが安い時、つまり景気停滞期にそれらのファンドを買っておく
・値段が上がり始めたら「ユニット価格が高い時」に債券ファンドなどにスイッチング(詳しくは後述)
・また、株式や不動産が下がったら債券からスイッチング
これを繰り返すのが一番良い。
株式投資などと同じで、安い時に買って、高い時に売る、ということなのだが、まあ、実際には難しいし、これが出来るのであれば、変額保険など入らず、株でバリバリ運用した方が良い。
だが、株式はドカンと一気に下がるわけでもなく、何度かに分けて下がっていくので、それらの「サイン」を見逃さずに、そのような時に、債券などにスイッチングしておくことは素人でも出来る。
具体的には「今」だ。
本稿を書いている2022年10月時点で、日米、どちらの株も冴えない。
今後大きく上がる気配もなく、下がる可能性の方が高いような状態だが、このような時には株式やREITなどから、ほとんど価格が動かない債券ファンドになどに、資産を「避難」させておいた方が良い。
スイッチングはそのための手法だ。
スイッチングは、株式ファンドなどに預けておいたお金を、全て別のファンドに移すことを指し、変額保険ではどこの会社でもこれが可能である。
例えば、株式ファンドに1000のユニットを持っていて、その時にユニット単価が150だとする。
価値としては、1,000×150=150,000となるが、これを債券ファンドに移す。(会社によっては市場金利型などとも呼ぶ)
主に日本国債で運用している債券ファンドのユニットなどは「開始以来ほとんど変わらない」ので、ユニット単価などは、常に100近辺で推移している。
そのため、先の株式ファンドの150,000を債券ファンドに変換(スイッチング)すると、1500のユニット(債券ファンド)を手に入れることになる。
この債券ファンドに入れているうちは、価値は動かないので、しばらくはこのままにしておいて、株式市場が下がったら、また株式にスイッチングする。
これを繰り返せば良いのだが、先程も述べた通り「そんな上手くはいかない」
だが、株が下がり始めたら「様子を見るために債券にうつしておく」くらいのことは出来るだろう。
もちろん、面倒なので「株式ファンド(もしくは総合ファンド)に入れっぱなし」という人も多いし、多分、変額保険の契約者の9割くらいはこれだろう。
ただ、上記のようなスイッチングも出来ればやった方が良い。
以上、変額保険総論。
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