「低解約返戻金型」という商品がある。
保険会社によっては「低解約払戻金型」などと言う場合もあるが、意味は同じ。
円建・ドル建の終身保険や、年金保険などの貯蓄型の保険商品で導入されていることが多いが、その意味は、読んで字の如く
解約返戻金が低い
ということ。
まずは具体的な事例を見た方が早いだろう。
ここでは、通常型(低解約返戻金型ではない)の終身保険と、低解約返戻金型の終身保険とを比較してみよう。
30歳 男性
終身保険 500万円
払込期間 60歳(60歳まで保険料を支払えば終了。その後も保障は続く)
・通常型
保険料 13,000円/月
60歳までの総支払保険料 468万円
ー 途中解約のシミュレーション
1 仮に10年後(40歳の時)に解約した場合
それまでの総支払保険料 156万円
解約返戻金 140万円(返戻率 90%)
2 仮に31年後(61歳の時)に解約した場合
それまでの総支払保険料 468万円
解約返戻金 472万円(返戻率 101%)
・低解約返戻金型
保険料 12,000円/月
60歳までの総支払保険料 432万円
ー 途中解約のシミュレーション
1 仮に10年後(40歳の時)に解約した場合
それまでの総支払保険料 144万円
解約返戻金 91万円(返戻率 63%)
2 仮に31年後(61歳の時)に解約した場合
それまでの総支払保険料 432万円
解約返戻金 472万円(返戻率 109%)
通常型と低解約返戻金型、違いは3つある。
1 低解約返戻金型の方が保険料が安い
通常型13,000円に対し、12,000円
2 途中で解約した場合、低解約返戻金型の方が、返戻金が少ない
通常型 90%に対し、63%(おおよそ、通常型の7割に設定されていることが多い)
3 保険料支払期間終了後(60歳)は、低解約返戻金型の方が、返戻金が多い
通常型 101%に対し、109%
低解約返戻金型は、保険料が安く、将来の返戻率も高いのだが、とにかく途中の解約には厳しいわけだ。
これはつまり「ほぼ途中解約出来ない」ということ。
一度入ったら、最後まで続けてね、ということで、実際に低解約返戻金型は、通常型に比べて解約率が低い。
これはそのまま、保険会社側のメリットになる。
保険会社からすれば「途中で解約される心配が『ほぼ』ない」わけだから、その分、腰を据えて運用に取り組む事ができる。
例えば、債権などに投資するにしても、途中解約された場合、その債権を解約して現金化しないといけないので、そのようなケースを想定して10年満期などの比較的期間の短いものを購入することになる。
だが、「ほとんど契約者が、かなりの確率で60歳まで続けてくれる」という保障があれば、期間30年などの超長期債権にも投資が出来る。
10年債権より、30年債権の方が利回りは良いので、投資した資金は後者の方が増えるわけだ。
なお、これは「全体的に見て」という話であって、個人の契約ごとに「これはどの債権に入れよう」などとやっているわけではない。
保険会社は、多くの契約者から集めたお金を「大きな塊」にして運用をしているので、実際には通常型の終身保険の保険料でも、超長期債権などを買っているのだが、それとは別に「途中解約された場合の資金用」として、解約しやすい定期預金(金利は極めて低い)などにもお金を振り分けている。
「大きな塊」となった資金のうち、通常型の契約が多ければ、必然的に途中解約のリスクも高い(低解約返戻金型に比べ)ので、先の定期預金に預けるお金の比率も「高め」に設定する必要があるのだが、それが低解約返戻金型の契約が多ければ、その分、定期預金を持つ量が少なくて済む。
これらの結果、契約者にとっては
・保険料が安くなる
・将来の返礼率が高くなる
という2つのメリットを提供出来ることになる。
いずれにせよ、途中解約は、契約者にとっても、保険会社にとってもマイナスしかないという点では共通しており、そのリスクを極力除いたものが低解約返戻金型ということになる。
「絶対にやめない」
と決めれれるのであれば、低解約返戻金型は良い選択ということになる。
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