この保険の弱点はここだ!ジブラルタ生命「米国ドル建特定疾病保障終身保険(低解約返戻金型)」

提供会社:ジブラルタ生命

商品名:米国ドル建特定疾病保障終身保険(低解約返戻金型)

この保険の弱点はここだ!!

参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

 

ジブラルタ生命が2020年4月から販売を始めたドル建終身保険の新商品。

本商品の特徴は、以下の2点。

1.特定疾病の保障がついている
2.予定利率が固定型

普通のドル建終身保険では「死亡・高度障害」のときにしか保険金の支払対象にならないが、本商品ではそれに加え以下の3つの時にも保険金が支払われる。

・がんと診断

・急性心筋梗塞で、手術または60日以上の労働制限

・脳卒中で、手術または60日以上の後遺障害

このように、普通のドル建終身保険に「3つの病気(特定疾病)の保障」が加えられているのが特徴だ。
なお、一度でも保険金を受け取れば、その時点で契約はなくなるので、その後、死亡した時には保険金はない。その点、勘違いしないように。

筆者の感想としては、素直にいい商品だと思う。

重度のがんの場合や、脳卒中で後遺症が残ってしまった場合には、治療が長期化することもあり、用途を選ばずにまとまった保険金が受け取れるのは、今後の生活の不安を取り除いてくれるだろう。

死亡保障とは別に、がん保険や医療保険に「三大疾病一時金特約(3つの病気になった時に50万円、100万円などの一時金)」などを付けて、これらの病気をカバーしている人も多いが、本商品ならそれらのリスクを一度にカバーできる。

また、がん保険、医療保険の特約のように掛け捨てではないのでムダがない。

バランスの取れた商品だと思う。

では次の特徴。

2.予定利率が固定型

予定利率には「固定型」「変動型」の2種類ある。

本商品は固定型。

参考コラム!!そ予定利率とは何という方は、以下を参照。
『同じ3%でも何故違う?「超」わかりやすい!!予定利率と利回りの違い!!』

「固定型」とは、加入時に決められた予定利率がずっと継続する。固定されているので固定型。

固定型の場合、加入した段階で将来の返戻金、返戻率も「固定」される。

そのため、先が見通しやすい。

本商品の場合、予定利率は、3.2%となっている。(2020年4月現在)

他社では、ソニー生命(3.0%)、プルデンシャル生命(3.0%)となっているので、本商品は比較的高い方だろう。

逆に変動型は、毎月、利率が変動する。

その時、その時のアメリカ国債の利回りや、金利情報などを基に上がったり、下がったりするので、それが将来どのような結果をもたらすのかは、加入時には分からない。

固定型 or 変動型、どちらが良いか?

ということに関しては、なかなか難しい。

不景気で予定利率が低い時に固定型にすると、それがずっと「固定」されてしまうので、数年後に景気が回復して予定利率が上がった時、その波に乗れない。

そのような場合、変動型であれば、当初は景気の低迷で利率が低くても、景気・金利の上昇により利率が上がることが期待出来る。

ただ、筆者としては3.2%で固定してくれるのであれば、まあ、十分かなぁという気もする。

今後、コロナの影響で米国債の利回りも急降下するだろうから、それにより本商品の予定利率も低下することが予想される(多分、下がる)

その結果2%台とか、1%台にまで下がってしまうのであれば、将来に期待して変動型の方が良いだろう。

このあたりは、その時々の経済状態を見て判断するしかない。

以上、商品概要。

では、弱点の解説に入る。

 

参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

各社の外貨建終身保険の☆評価一覧は、コチラ




弱点1 3つの病気に「ならなければ」払い損

本商品は通常のドル建終身保険に比べ、保険料が割高に設定されている。

同じジブラルタ生命の、死亡・高度障害のみを対象としてドル終身保険と比較してみよう。

条件:30歳男性
保険金額:5万ドル
払込期間:10年

ドル建終身保険(低解約型)
5万ドル(死亡・高度障害時)      保険料:148.45ドル

ドル建特定疾病保障終身保険(低解約型)
5万ドル(死亡・高度障害・特定疾病時) 保険料 193.95ドル

となっている。

その差額は、45.5ドル。

特定疾病がついている分30%の割増ということ。

総支払保険料の差は、

ドル建終身保険(低解約型)
5万ドル(死亡・高度障害時)      総支払保険料:17,814ドル

ドル建特定疾病保障終身保険(低解約型)
5万ドル(死亡・高度障害・特定疾病時) 総支払保険料 23,274ドル

となり、総額で5,460ドル、日本円で約60万円(1ドル=110円と仮定)ほど多く保険料を負担することになる。

なお、保険料は割高だが、これは将来の返戻金に反映されるので、掛け捨てではない。

しかし、これは保障範囲が広い分、仕方がない。

保険会社からすれば、死亡と高度障害だけを支払対象としていれば、保険金を支払うタイミングはおよそ平均寿命(男性81歳、女性87歳)の前後だと推測できる。

つまり、運用期間を長くとれる。




しかし、本商品の場合、死亡・高度障害以外でも

・がんと診断されたら払う
・急性心筋梗塞で手術したら払う(もしくは60日以上の労働制限)
・脳卒中で手術したら払う(もしくは60日以上の労働制限)

という条件なので、全契約者を平均すれば、保険金を支払うタイミングはかなり早くなる。

当然、運用する期間は短くなる。

そのため、より手前で保険金の原資となるお金を積立てもらわねばならず、結果、

「30%増しで払って下さいね」

となるわけだ。

先の例で言えば、本来は死亡時にしか受け取れない5万ドル(550万円)を、がん、急性心筋梗塞、脳卒中の時にも受け取れるようにするために5,460ドル(60万円)のオプション料を払っている。とも言い換えられる。

但し、これはあくまで3つの病気になればメリットがある。ということなので、ややネガティブに言えば、

一生涯のうちで3つの病気にならないならムダ

ということでもある。

人生の中で、がん、急性心筋梗塞、脳卒中を一度も経験しない人もいる。統計上、全体の2~3割くらいだろう。

逆に言えば、7~8割の人は経験するので、そのような人にとっては本商品の「割増」は納得できるが、そうでない2~3割の人にとっては「ただの払い損」になる。

とは言え、これは「保険」なので仕方がない話。

実際のところ7~8割という「高確率」でこれらの病気のリスクがあるわけだから、何の対策もしないのも問題がある。

他でがん保険などの掛け捨ての保険に入っても良いが、本商品のようなもので、貯蓄を兼ねて3つの病気へのリスクを軽減しても良いだろう。

弱点というよりは、「割高ではある」という事実を伝えたいだけで、悪いと言っているわけではない。




弱点2 死亡保障がなくなる

本商品でがんや脳卒中で保険金を受け取ってしまうと、死亡時の保険はなくなる。

商品の特性上、仕方がないのだが、もし30代、40代などの若い時に保険金を受け取ってしまうと、将来死亡した時には何の保険金もおりないことになる。

受取ったお金を必要以上に使わずにとっておくか、運用しておけば良いだけの話なのだが、意思が弱い人などは使ってしまうかもしれない。

そのような人は、本商品と通常のドル建終身保険とを2本立てで入っておく方が良い。

もしくは、ジブラルタ生命には、そもそもその2つをセットにするための通常のドル建終身保険に付加できる特約(オプション)がある。

商品解説については、『米国ドル建終身保険(低解約返戻金型)』をご覧いただきたい。

こちらであれば、例えば5万ドルの保険金のうち、

・2万ドルは死亡保障のみ
・3万ドルは特定疾病の時にも出る(本商品と同じ)

というような設定が可能。

がんや急性心筋梗塞、脳卒中は心配ではあるが、あくまで死亡保障が必要。というような方は、他の商品を検討しても良いだろう。




弱点3 低解約型のみなので、無理のない範囲での保険料設定が必要

本商品は「低解約型」というもので、保険料の払込中は、解約返戻金がかなり低く抑えられている。(下図参照)

そのため、払込中に解約をすると大損するので、基本的には一度始めたら

絶対解約できない

と思った方が良い。

そのため「必ず払える」という保険料にしておくべき。

若い年齢で加入すれば、将来かなり増えるので

「ちょっと無理をしてでも多めに・・・」

という気持ちになるかもしれないし、営業マンもそれを勧めるかもしれないが、繰り返すが、絶対に解約できないのである。

今回のコロナのような「緊急事態」も起こりえるので、保険料の設定は慎重に。




弱点4 為替リスク

当たり前の話だが、外貨建ての商品なので為替リスクはある。

本商品は保険料がドルで決まるため、毎月保険料が変動する。

例えば保険料が100ドルだとすれば、

1ドル 110円 → 11,000円
1ドル 120円 → 12,000円(円安)
1ドル 80円   → 8,000円(円高)

と、為替の影響により、かなりブレる。

今のところドル商品は利率が高いので、将来の返戻率が高く見えるが、通貨自体が120円→80円などに下落すれば、33%も価値が下がっていることになり、そうなればいくら返戻率が高くても損をする可能性もある。

「為替は結局、110円くらいに戻りますから」

「ドルに対して円は、今後弱くなる」

などなど、保険の営業マンは為替の予想屋のようなことを言うが、はっきり言ってあてにはならない。

と言うか、誰にも分からない。

高い返戻率ばかりに目を奪われずに、

リスクはある

という当たり前のことを認識して、自分の資産の中でどの程度を「ドル化」するべきか?ということは冷静に考えた方が良い。

筆者の見解では、多くても1/4~1/3程度にとどめておいて、他は日本円、株、不動産などに散らした方が良い。




弱点5 為替手数料が高い

どんなドル商品でもそうだが、ドルを購入する時に「為替手数料」がかかる。

本商品の場合、1ドルあたり0.50円。

これは他社に比べちょっと高い。

最も安いのはオリックス生命の0.01円で、50倍も違うということになる。

なお、同じプルデンシャルグループのプルデンシャル生命が1ドルあたり0.25円なので、何故に同じグループで手数料が違うのが疑問だが、為替手数料などはただの「コスト」

安いに越したことはない。

商品自体の検討に影響するほどの話ではないが「他社より高い」というのは明確な弱点。

 

参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

各社の外貨建終身保険の☆評価一覧は、コチラ