提供会社:SOMPOひまわり生命
商品名:吸わんトク がん保険
この保険の弱点はここだ!!
参考コラム:
商品の詳細に入る前に「そもそもがん保険って何?」という方は、
『保険屋の口車に乗る前に読みたい、がんと保険の真実』
をご覧いただきたい。
ひまわり生命の「吸わんトク がん保険」は、タバコを吸わない方専用のがん保険。
原則、ネット経由での加入となっている。
まあ、本題に入る前に一つ。
ひまわり生命。真剣にネットで保険を売る気があるなら、もう少しサイトのデザインに力を入れた方が良い。
既存のサイトの枠組みの中で何とかやろうとしているのだろうが、全体的な印象が「古臭い」し、動線も悪い。
専用サイトを構築した方が良いのではないか?
大きなお世話ではあるが、せっかく良い商品なのに、サイトの構成が地味過ぎるのと、説明があっさりし過ぎていて、あまり伝わってこない。
さて、本商品、率直な感想としては
・保障内容のわりには保険料は安い
という感じる。
タバコを吸わない人しか入れないが、それをクリアした人にとっては悪くはない。
がん治療の「最悪のケース」を想定した仕様で、好感が持てる。
まずは商品の概要から解説しよう。
ここでは30歳 男性の例で説明する。
保険料は2,250円/月
この保険料で、以下の3つの保障が含まれている。
1 がん診断給付金
2 がん治療給付金
3 自由診療抗がん剤・ホルモン剤治療給付金
なお、女性の場合、更に
4 自由診療にゅう房再建給付金
が追加される。
これらはパッケージになっているので、「3だけを外す」というようなことは出来ない。
1のがん診断給付金は、「がんです」と言われた時に、一時金として100万円が受け取れるというもの。
1年に1回を上限に何度でも受け取れる。
他社でも良く見かけるものだが、本商品の特筆するべきところは、
「1年後にがん治療が続いていれば、再び100万円が給付される」
ということ。
例えば、肺がんになったとする。
この時、本商品でも他社でも診断給付金(100万円)が受け取れる。
そして1年経過後に胃がんになった。この時も両社とも診断給付金の対象となる。
まさに「1年に1回の給付」ということ。
ここまでは同じ。
しかし、1回目の肺がんが完治せずに1年後にも治療をしていたとする。
この場合、他社は支払わない。肺がんでは既に一時金を支払っているからだ。
が、本商品では再び診断給付金を支払う。
つまり、本商品の場合、がんの治療が継続していれば、1年ごとに100万円を受け取れることになる。
些細な差に感じるかもしれないが、これは意外と大きい。
特に肺がんなどは、外科的手術で切れず、放射線や抗がん剤治療に頼らないといけない場合もあり、そのようなケースでは、治療が数年に及ぶこともあるからだ。
このようなケースで、他社では100万円一回こっきりなのが、本商品であれば毎年100万円が受け取れることになるので、これはなかなか親切な設計だと思う。
次に2のがん治療給付金。
手術、放射線、抗がん剤・ホルモン剤、緩和療養、入院
がんにより、このいずれかの治療を行った場合、その月に10万円を受け取れる。
なお、同一の月に、2種類の治療を行ったとしても、最初の治療だけが対象となり、2回分(20万円)を受け取れることはない。
これも継続治療に関する手当。(通算120ヶ月が限度)
がんの治療が続く限り、毎月10万円を受け取れるということ。
3の自由診療抗がん剤・ホルモン剤治療給付金は、2のがん治療給付金に更に「上乗せ」をするもの。
抗がん剤治療、もしくはホルモン剤治療を行った月は、20万円が受け取れる。
つまり、先の「2 がん治療給付金」と合わせ10万円+20万円 計30万円が給付されるということで、これはかなり心強いだろう。
但し、こちらの給付は通算12ヶ月が限度となっている。
これらの内容で30歳 男性で2,250円/月であれば、保障内容からすれば「安い」とは感じる。
商品の構成を見ても分かる通り、本商品は完全に「長期療養」にフォーカスしている。
一口に「がん」と言っても、その症状や治療の困難さは千差万別。
1週間程度の入院で済んでしまう人もいれば、1年以上の治療を要することもある。
ポイントとなるのは「外科手術」
外科的処置で、切ってしまえるなら、割と話は簡単で回復も早いことが多いのだが、前述したように肺がんなどは「切りにくい」。
もしくは脳の腫瘍や、そもそも外科的アプローチが出来ない「血液のがん」である白血病なども、治療期間が長くなる傾向がある。
このような時には放射線や抗がん剤・ホルモン剤などに頼らないといけないのだが、除々にしかがん細胞を弱められないので、どうしても時間がかかる。
半年、1年、毎月抗がん剤を実施するような生活は、心身ともに疲労するし、仕事も思うようには出来ないので、収入にも響く。
このようなケースで、本商品は毎月30万円(但し通算12ヶ月だけ)が受け取れるため、金銭面ではかなり助かるだろう。
なお、このような話をすると
「傷病手当(給与の2/3程度が補償される国の制度)があるから、それで大丈夫では?」
というような指摘をする人がいる。
もちろん、給与の2/3の補償があればなんとか食ってはいけるだろうが、収入減であることは事実で、ただでさえがんと戦っている状態、更にお金の心配までしないといけないのは辛いだろう。
その点、「毎月30万円」は大きいし、12ヶ月経過後に10万円だけになったとしても、その頃にも治療が継続していれば、1のがん診断給付金100万円が受け取れるわけで、つまり治療が続いていれば、以下の金額を受け取れることになる。
初年度
一時金100万円
月額30万円×12ヶ月=360万円
合計 460万円
2年目以降
一時金100万円
月額10万円×12ヶ月=120万円
合計 220万円
治療が長引いた時に、かなり有効ながん保険と言えるだろう。
筆者は「保険は自分の力ではどうしようもない時のためのもの」だと思っているので、その観点から言えば、良い商品だと思う。
なお、余談ながら、女性が加入した時に付く「4 自由診療にゅう房再建給付金」は、にゅうがんなどで「ちぶさ」を失い、再建術を受けた際に10万円/1ちぶさあたり、が受け取れるというもの。
再建術は美容整形の分野だと思っている方も少なくないが、そのため50万円、100万円といった高額の費用がかかる印象があるが、昨今は「シリコンバック再建術」が保険適用されていることもあり、実際にはそこまで費用がかからないことの方が多い。
そのため、10万円程度の給付で妥当かと思われる。
そのあたり詳細は、
にまとめてあるので、興味があればご一読頂きたい。
以上が商品概要。
では弱点の解説に入りたい。
弱点1 がん先進医療特約がない
冒頭でも述べたが、本商品「がんで本当に大変になった時」にフォーカスした構成となっており、その点、良い商品だと思う。
正直、4つ星か、3つ星が迷い、限りなく4つ星評価に近いのだが、「先進医療特約がない」という点だけが見逃せず、星3つとした。
先進医療特約は、保険適用外の先進医療を受けた場合に、その実費(2000万円まで)を支払ってくれるもので、多くのがん保険には
「がん先進医療特約」
などが用意されている。
しかし、本商品にはそれがない。
筆者としてはこれは相当マイナス。
例えば重粒子線治療という先進医療がある。
平たく言えば重粒子というレーザー光線(正確には違うが、それを説明すると長くなるので割愛)のようなもので、がん細胞をピンポイントで焼くことが出来る治療。
女優の樹木希林さんや、高須クリニックの高須院長なども、これらの治療を受けていると聞いている。
体への負担が軽く、かつかなり効果が高い治療であるが、保険適用外なので、とにかく高い。
一回400万円、500万円くらいのお金がかかるのである。
しかし、先進医療特約に入っていれば、これらのコストは保険会社が出してくれる。
だが、もしこの特約に入っていなかったら?
樹木さんや高須院長のような人であれば良いが、一般の方にとっての400万円、500万円はかなりの負担だろう。
その治療さえ受けられれば助かるかもしれない。
そんな状況で、人によっては「お金の問題で諦める」という事態になるかもしれない。
そのため、筆者は先進医療特約は必ず入っておいた方が良いと考えている。
それなのに、本商品にはその選択肢するない。
そうなると、他に医療保険に入って、そちらで先進医療特約に加入する必要がある。
なお、先進医療特約は医療保険か、がん保険のオプションで入れるので、どちらで入っていても良いのだが(逆に言えば、ダブルで入る必要はない。)、つまり本商品に入る場合、先進医療特約に関しては
「別途、他で考えないといけない」
ということになる。
これとは既に医療保険などに入っていて、そちらで先進を付けていれば良いが、そうでない場合、つまり
「普通の入院はそれほどお金もかからないので医療保険は必要ない。ただし、がんだけは治療が長引くと厄介なので、がん保険だけは入っておきたい」
という方には、先進医療特約をつけるチャンスがなくなってしまう。
それが怖い。
サイトの申込み時に、「がん先進医療特約」というオプションがあれば、付ける、付けないは本人の判断だとしても、一旦は「これは何だ?」と考えることが出来る。
つまり問題提起されている。
しかし、そもそも選択肢がなければ、先進医療特約について考える機会もなく、「これだけでOK」と思ってしまうかもしれない。
この点は非常に残念。
がん先進医療特約だけは、オプション扱いで用意して欲しかった。
この点さえクリアすれば文句なしに四つ星なだけに残念。
弱点2 本当にタバコを吸わないのか?の確認が不十分
本商品。レビューを書くために、実際に自分でも入ってみた。
しかし、告知項目に「タバコを吸わないですか?」という一問があるだけで、実際には何の確認もしない。
他社では、非喫煙割引(タバコを吸わない方向けの割引制度)がある場合、唾液などを採取し、ニコチンチェックを受けるのだが、本商品では質問だけ。
それに「はい」と答えれば入れる。
注意事項に「実際にチェックに行くこともある」などの脅し文句は書いてあるが、何千件に1件程度のチェックだろう。
また、その結果、タバコを吸っていた、ということが判明しても、
「加入時にはやめていたが、加入してしばらくしてからまた吸い始めてしまった」
とでも言われれば、それ以上の追求は出来ない。
日本初!!タバコを吸わない人専用のがん保険
というのが本商品のキャッチフレーズであり、そのコンセプトは斬新だと思うが、いささかチェックが甘すぎまいか?
国立がん研究センターの調査でも、がんで死亡する人のうち、男性34%、女性6%がタバコが原因というデータもある。
つまり、男性に限って言えば、「タバコを吸わない」というだけで、がんのリスクはかなり下がること。
逆の言い方をすれば、保険会社としてはがんに関する給付金を支払うリスクが減る。ということで、だからこそ本商品の保険料は割安に設定されているのだが、その根拠となる「タバコを吸わない」というチェックが曖昧だと、そこに
「実は吸ってるけど、それを隠して加入した」
という人が紛れ込んでくる。
当然、その人ががんになるリスクは「タバコを吸わない人」に比べて高い。
それらの人ががんになった時に支払う給付金、その原資は全員の保険料なので「その他」が損害をこうむることになる。
これはフェアではない。
体の健康状態の「嘘」は後から調査(健康保険の利用履歴など)で判明するが、タバコは加入時にニコチンチェックをしないと、まず分からないだろう。
日本人は嘘をつかない
という性善説に立っているのかもしれないが、このあたり、制度設計に問題があるような気がする。
この保険の弱点、こう考えろ!!
弱点1の先進医療に関しては、「他で手当するしかない」だろう。
別途、医療保険に加入し、そこのオプションとして先進医療を付けても良いし、もしくはひまわり生命にはリンククロス コインズという先進医療「だけ」を提供する商品もある。
解説は下記参照。
この保険の弱点はここだ!SOMPOひまわり生命「先進医療保険リンククロスコインズ」
本当に「先進だけ」が必要なら、これを付けても良いが、先進医療にしては保険料が少々高いので(通常100円/月くらいのものが500円/月)、そこは悩みどころ。
ひまわり生命としては、
「リンククロスコインズがあるから、先進が必要ならそれを」
というアプローチなのだろうが、そうなのであれば、本商品のサイト内で「先進医療が気になる方は」等の項目を作り、リンククロスコインズの方への動線を作るべきだろう。
既に前述したが、そうでないと、そもそも先進医療について検討するきっかけがない。
このあたりは極めて不親切。
いずれにせよ、別の手立てで、先進医療特約に加入出来ているなら、弱点1についてはクリア出来る。
弱点2は、商品としての構造上の問題。
筆者としては「商品としてそもそも設計が甘い」と思い指摘したが、これは今後保険会社がしっかり対策をするべきこと。
そのため、個々人はあまり気にしなくて良い。
自分の年齢、性別ではじき出された保険料に納得出来るのであれば、加入すれば良いだろう。
「嘘つきの加入者」が入ってきて、保険会社の収支が悪化しても、それは契約者の知ったことではない。
「がん治療の最悪のケース」をカバーするという点から見れば、悪くない商品だと思う。
参考コラム
比較した方が良い商品
当サイト、4つ星評価は以下の通り。
アフラック 生きるためのがん保険寄りそうDays ★★★★☆
編集履歴
・2021/4/24 初稿