提供会社:楽天生命
商品名:スーパー終身保険
この保険の弱点
参考コラム:終身保険総論 終身保険の「まとめ」
かなり特徴的な商品だが悪くはない。
「使い方次第かな」
という印象を持つ。
保険料はかなり安いが、それを実現するために、以下の2つの工夫をしている。
1 終身払のみ
2 解約返戻金が「ずっと」低い
通常の終身保険では「◯◯歳払」という払い方を選ぶことが多く、例えば65歳払などがある。
これは「65歳まで支払えば、それ以後、保険料の負担はありませんよ」ということ。
なお、支払い自体は65歳で終わるのだが、保障(保険の効力)はその後も効いている。
一生涯の保険、その保険料を65歳までに払い切ってしまう。ということ。
対して、終身払とは「身が終わるまで」払う。
つまり、生きている間はずっと支払いが続く。
30歳の男性が65歳払で契約すれば、支払期間は35年だが、終身払となれば、男性の平均寿命の84歳まで生きた場合でも、その支払期間は54年となる。
支払う期間が長いということは、その分、保険料は安くなる。
3000万円の住宅ローンを10年で返すのと、45年で返すのでは毎月の負担は全然違う。それと同じだ。
そういうロジックで、終身払は毎月の負担は軽いのである。
しかし、本商品の終身払は、他社の終身保険の終身払より更に安い。
その理由が2つ目。「解約返戻金がずっと低い」ということ。
他社の終身保険では、解約返戻金は歳をおうごとに増えてくる。
若い頃から入っていれば、大抵、65歳くらいになる頃にはトントン(支払った金額と解約返戻金が同じ)になるので、貯蓄としても機能するようになる。
つまり、解約すればそれなりの金額が戻ってくるのだが、本商品ではそれが極端に少ない。
解約をすると大損するということだ。
しかし、損をすると分かっていても解約する人はいる。
個人側の損は、保険会社側の得。つまり儲けだ。
それらの儲けをある程度見込んでいるため、全体の保険料をより一段安くすることが出来る。
保険商品の設計思想としては、「かなり振り切れている」が、それによって他社を下回る保険料を実現している。
以上が商品概要。
では、弱点の解説に移る。
弱点1 払済が出来ない
払済とは、終身保険のメンテナンスの一つだが、話が少々複雑なので、実際の例を挙げて説明したい。
例えば、30歳男性が終身保険500万円に入っていたとする。
支払期間は65歳まで。
65歳まで支払えば、一生涯の500万円の保障が続くということ。
しかし、55歳の時、何かしらの事情で、毎月の保険料の負担ができなくなった。(経済的事情など)
その場合「払済保険」を選択する。
業界では「払済にする」というような言い方をする。
これをすると、今後保険料を支払わなくても、その後も終身保険が続く。
しかし、本来であれば65歳(30歳から35年間)まで払う約束だったのに、55歳だと30歳から25年間(7割程度)しか経過していない。
そのため、500万円そのままというわけにはいかない。
支払ってきた期間に応じて、保険金も7割程度に減額され、350万円ほどの終身保険がその後続く。
これが払済保険。
長い人生、保険料の支払いが厳しくなるような場面もあるので、そのような時にこの払済はかなり有効ではある。
しかし、本商品ではそれが出来ない。
商品として払済が出来ないのである。
その理由は至極明確。
解約返戻金が低いから。
商品の仕様として、常に解約返戻金が低く抑えられている、つまりお金の貯まりが悪いため、それを原資にして払済保険にすると、驚くほど低い保険金しか用意出来ないのである。
そのため、そもそも払済保険に変更することが「出来ない」というルールになっている。
これは明確な弱点。
弱点2 やめられない・・・・
本商品は一度加入したら一生涯支払いが続き、かつ解約をしたら大きく損をするので、
解約出来ない
と思った方が良い。
これは弱点と言うより、商品の仕様なので仕方がないが、それでも肝に銘じておいた方が良い。
安易に「これくらいなら払えるか」などと考えず、保険金と保険料の設定は「何があっても絶対払えるレベル」にしておくべきだろう。
弱点3 長生きすると逆ザヤ!!
終身払には致命的な弱点がある。
それが、長生きすると支払った保険料と保険金が逆転する「逆ザヤ現象」が発生すること。
実際の例を見てみよう。
本商品では、保険金300万円の場合、40歳男性だと毎月の保険料は5,070円となる。
仮に男性の平均寿命の82歳で亡くなったと仮定すると、それまでに支払う総額は約255万円。
毎月5,070円と言えど、長い年月を支払うと、これくらいの金額になる。
で、保険金は300万円。
つまり45万円ほど儲かっていることになる。
しかし、82歳で死亡せず、そのまま長生きしたら?
保険料の負担は続くので、支払総額はどんどん増えていく。
計算すると89歳になった段階で、保険料の総額は300万円を超える。
そうなると、89歳以上まで長生きした場合、300万円の保険金を受け取っても損をすることになる。
終身払は構造上、長生きする人が損をする。
しかし、どんな人間も自分がいつ死ぬかは分からない。
酒もタバコをやっていて、
「俺は80歳までは生きられないよ」
そんなことを言っている人に限って、凄い長生きすることもあるし、物凄く健康に気を使っているのに、早いうちのポックリ死んでしまう人もいる。
目先の保険料は安いものの、終身払には常に逆ザヤのリスクがあることは知っておくべきだろう。
この保険の弱点、こう考えろ!!(解決策)
弱点で挙げた通り、払済も出来ないし、解約すれば大損するし、本商品の設計思想はかなり「極端」ではある。
しかし、保険料は安い。
それが本商品の最大のメリットで、はっきり言えば「それしかない」商品とも言える。
そのため、本商品がハマる人は
・とにかく一生涯の保障が欲しい
・しかも出来るだけ安く
というニーズをもった方だ。
一番わかりやすいのは高齢者ではないだろうか?
実際、本商品は告知の項目も少なくなっており、軽度な持病などがあっても加入出来る場合が多いだろう。
また、本商品は75歳まで加入出来る。他社では終身保険は69歳まで、というようなところも多いので、その点もありがたい。
高齢者の場合、終身保険に入る目的は、あくまで「葬式代(もしくはお墓代)を用意する」ため。
子供たちに迷惑をかけたくない、という思いだ。
そのため、将来、解約返戻金を得るために解約するようなこともないので、それが少なかろうが関係ない。
その点、本商品の設計思想とニーズが合致している。
対して、若い方に関しては本商品はあまりお勧めしない。
本商品に限らず、そもそも日本円の終身保険はやめた方が良い。
理由はインフレ。
日本は長いデフレに苦しんでいるが、今まで20年間物価が上がらなかったからと言って、これから20年間も物価が上がらないわけではない。
そういう意味では、50年後、60年後の300万円が今の300万円と同じ価値である可能性は極めて低い。
そのようなものに若い頃から「コツコツ」積み立てる必要はないだろう。
終身保険に入るのであれば、多少リスクをとっても外貨建や、株などに連動する変額保険などの方が良いと思う。
比較検討した方が良い商品
SOMPOひまわり生命 新・誰でも終身(無選択型終身保険) ★★★☆☆
改訂履歴
2021年4月8日初稿