提供会社:ソニー生命
商品名:米ドル建一時払終身保険
この保険の弱点はここだ!!
シンプルで良い。
一時払のドル建終身保険。
ドルを一時払でおさめ、まずは、それが保険金となる。
10万ドルを払えば、死亡時に10万ドル(保険金)ということ。
そして、この保険金は加入時に決定される「逓増率(定期的に増えるという意味)」によって、毎年増える。
どの程度増えるのか?ということは、加入時の年齢や性別、またその時に予定利率によっても変わる。
パンフレットによれば、男性 予定利率1.5%という条件で
50歳 毎年 +1.4559%
60歳 毎年 +0.9495%
70歳 毎年 +0.5362%
80歳 毎年 +0.1229%
となっている。
50歳くらいであれば、すぐに死ぬ可能性は低いので、毎年1.45%づつ増やせるが、高齢になればなるほど「すぐ死ぬ可能性が高い」ので、増える率は低下していく仕組み。
つまり、70歳男性が予定利率1.5%の条件でこの保険に10万ドルで入ったとする。
払ったその年に亡くなれば10万ドルが返ってくるだけだが、翌年に死亡した場合、10万536.20ドル(100.5362%)が保険金として支払われわけだ。
まあ、言ってみればドルの定期預金のようなものだと思えば分かりやすい。
なお、本商品は、パンフレットの冒頭にも説明があるように、完全に「相続対策」に絞ったものだろう。
生命保険料非課税枠を利用するための商品。
生命保険で受け取る保険金には保険金の非課税控除というものがあり、保険金のうち
法定相続人 × 500万円
までは、非課税とされる。
参考コラム:保険金の非課税枠とは?使用する保険商品の流行り廃り
例えば、お父さんが亡くなり、お母さん、子供2人が遺された場合、
500万円 × 3人(お母さん、子供2人)=1,500万円
までは非課税となる。
現金(銀行預金)で残した場合、相続税の対象となるのに「保険金に形を変えただけ」で、非課税になるというお得な制度であるため、ほとんどの資産家が利用している。
本商品はこの制度を利用するために「特化」している。
まず、加入時に診査(健康チェック)が必要ない。
そのため、持病がある高齢者などでも入りやすいし、究極的には入院中でも、末期がんでも入れる。
つまり、「やばい!!そろそろ亡くなりそうだ・・・今からでも非課税枠を埋めたい」というような方でも入れるということ。
少々話が横道に逸れるが、意外とこのようなニーズはある。
資産家のおじいちゃん(もしくはおばあちゃん)が元気なうちは、周囲も気を使って相続対策など口に出来ないが、具合が悪くなって「そろそろお迎えがきそう」となると、親族の誰かが「保険金にしておけば相続税がかかないらしい」などと言い出し、焦って手続きをするのである。
筆者の知人の保険営業マンも、末期ガンの資産家の契約を病院の個室まで取りに行った、という人がいるが、長い人生の最終幕に何とも忙しい話である。
本商品も、そのような場面で使うことが多いだろう。
一昔前は、これの「円建」、つまり通常の一時払終身保険が各保険会社から販売されていたのだが、昨今ではかなり減ってしまった。
何故か?
保険会社から見たこのタイプの商品の旨味は、「死ぬまでの時間」にあるからだ。
保険会社は契約者から大きな現金を一括であずかり、それを運用に回す。
死ぬまでに1ヶ月なのか、1年なのか、10年なのか、それはその人によるので分からないが、保険会社としてはその間の運用益が利益になる。
言い方は悪いが、契約者から金を借りて、その間に運用益は保険会社が得て、契約者には元本そのもの(多少は色を付けるが)を返すだけなのである。
それでも契約者からすればメリットがある。
「現金」を「保険金」にすることで非課税となるからだ。
言ってみれば、保険会社は預かった金を「保険化」出来るという特権を活かして、低金利(ほぼゼロ金利)で契約者から金を借りているようなものだ。
しかし、この低金利。
契約者から預かった金を運用してもほとんど増えない。
しかも、商品の性質上、契約者が短期間に亡くなれば、預かったお金を「保険金」に仕立て直してすぐに返さないといけない。
その事務コストもバカにならない。
それで、
「手間ばかりかかって、儲からないよ」
ということになり、円建の一時払商品は下火なのである。
が、ドル建であれば、まだ多少旨味がある。
本商品も通常のドル定期預金に比べて、保険金の増加率はかなり抑えられているので、先の話で言えば「保険会社が利ざやを抜ける」のである。
そのため、商品として存続しているのである。
なお、他社でも似たような商品があるにはあるのだが、もっと複雑と言うか、利率が都度変動したり、一部の資金が株式運用に回っていたり、等々、なかなか面倒臭い仕様になっていることが多い。
その点、本商品。冒頭でも述べた通りシンプルで分かりやすい。
そのため星3つとした。
だが、ドル建商品としては利率はかなり抑えれているし、保険金は増えるが、解約した場合の返戻金はほとんど増えない。(それどころか短期間で解約をすると損をする)
そのため、貯蓄商品としての価値はない。
解約せずに「保険金で受け取る(非課税枠を使う)」と決めている人だけが対象の商品であり、そのようなニーズがある人にとっては悪い商品ではない。
では弱点。
弱点1 為替リスクがあるため保険金が読めない
本商品はドル建であるため、当然為替リスクがある。
そのため、死亡時の保険金はその時のレートによって変わってしまう。
保険金非課税枠を狙う場合、これは地味に困る。
例えば1,500万円の非課税枠を埋めるために、1ドル120円で125,000ドル(日本円換算1,500万円)を払い込んだとする。
そして死亡時に、1ドル100円になっていた。
この場合、保険金の評価は1,250万円となるので、非課税枠1,500万円に届かない。
250万円分の非課税枠を無駄にしたということになってしまう。
また、投資としても1,500万円が1,250万円に目減りしているので、これでは「税金が安くなっても、投資で損をした」ということになる。
ただし、本商品は保険金をドルで受け取ることも出来るので、円高の場合、ひとまずはドルで受け取っておいて、為替が回復してから(1ドル120円を超えてから)円に替えれば損はしない。
資産家であれば目先の現金に困ることもないだろうから、急いで円に替えずに、このような対策をすれば良いのだが、非課税枠は「使い切れなかった」ということになる。
また、逆の場合、円安(1ドル130円など)にふれてしまった場合、保険金の評価は1,625万円となる。
非課税枠1,500万円をオーバーしてしまっているので、超過分には相続税がかかる。(この場合は「増えている」ので別に構わないが)
要は非課税枠ぴったりになることは極めて稀で、少なかったり、多かったり、ということはかなりの高確率で発生してしまう。
面倒と言えば面倒ではある。
この商品の弱点、こう考えろ!!(解決策)
非課税枠を埋めるためなら悪い商品ではない。
だが運用商品としては魅力はないので、仮に若い方が
「ドルを一時払で預ければ、定期的に増える」
というようなセールスをされているなら、断った方が良い。(そんなセンスのない営業はいないだろうが)
また、前述の通り、為替リスクがあるため、非課税を「きれいに埋める」ことは難しいことも認識しておくべき。
円高(1ドル100円など)になれば、非課税枠が余ってしまうし、円安(1ドル130円など)になれば、枠を超えてしまう。
「まあ、多少ブレるけど、それなりに非課税枠を利用出来ればOK」
そんな程度に考えた方が良いだろう。
参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。
各社の外貨建終身保険の☆評価一覧は、コチラ
編集後記