提供会社:ソニー生命
商品名:逓減定期保険
この保険の弱点はここだ!!
懐かさを感じる商品だが、今はほとんど売れていないだろう。
「逓減」とは、決まった割合で減っていく、という意味で、本商品でも「減り方」の違いにより、Ⅰ型とⅡ型が用意されている。
ここではパンフレットに記載されている事例を紹介する。
35歳で保障スタートで、60歳まで、当初の保険金 6,000万円の場合
Ⅰ型 1年目 100%(6,000万円)から毎年4%ずつ逓減(240万円ずつ減る)、55歳の時に20%(1,200万円)まで減り、以後は60歳まで1,200万円が続き、60歳で終了
Ⅱ型 1年目から5年目まで100%(6,000万円)が継続、以後3~4%程度が低減。60歳まで減り続け、60歳時点で30%(1,800万円)で終了
「使い方」としては、主に2つ。
1つは法人の借入金対策で、例えば先の例で言えば、ある企業が6000万円を借りたとする。
社長が死んだ時に、すぐに借金が返せるように、借入金額に見合った保険に入るのである。
しかし、借入金は返済がすすめば、その額は減る。
それに合わせて、保険金も減って良いはず。
そのような場面で、この逓減定期を使う。
借金の返済が「すぐ始まる」場合には、保険金も「すぐ減る」Ⅰ型を。返済が「一定期間猶予された後に始まる」場合には、保険金も「一定期間後から減る」Ⅱ型を。という感じ。
これが逓減定期のメジャーな使い方。
2つ目は、個人の死亡保障。
こちらも、理論上「時間の経過によって保険金は減っても良い」はずである。
例えば、35歳でお子さんが生まれたお父さんの場合、仮にその時点で死亡してしまうと、家族の生活費、子供の教育費など、かなりの保険金を遺してあげないといけない。
しかし、20年後はどうだろうか?
お父さんも55歳になり、子供も20歳。あと2年で大学を卒後して、社会人になる。妻もそれなりの年齢になっているだろう。
こうなれば35歳の時ほどの保険金を遺す必要はない。
先の逓減Ⅰ型では、35歳時点では6,000万円の保険金が用意されているが、55歳時点では1,200万円となっているので、このご家庭には「ちょうど良い」ということになる。
逓減定期は、このような使い方をされていたのだが、昨今ではほとんど収入保障保険に置き換わっている。
収入保障保険も、ある種の逓減定期で、逓減定期が保険金を一時金で支払うのに対して、収入保障は
毎月20万円を60歳まで
というような「お給料形式」で支払う。
再び35歳のお父さんに登場してもらうと「20万円65歳」というプランに入っていれば、
35歳 死亡 20万円×12ヶ月×25年=6,000万円
55歳 死亡 20万円×12ヶ月×5年=1,200万円
となるので、本商品の逓増Ⅰ型が全く同じ機能を提供していることになる。
次に保険料を比較してみよう。
本商品のⅠ型の保険料は以下のようになっている。
なお、本商品では非喫煙割引と健康優良体割引(身長体重のバランス:BMIや血圧に異常なし)が用意されているので、その組み合わせにより以下の4つの保険料が存在する。
35歳 60歳まで 保険金6,000万円
非喫煙&優良体 4,440円
非喫煙のみ 5,460円
優良体のみ 6,000円
割引一切なし 6,660円
これに対して、収入保障保険では、ざっと見た感じ、保険料は以下のようになる。
非喫煙 3,285円(はなさく生命)
割引なし 4,970円(アクサダイレクト生命)
これを見れば分かるが、保険料において競争力がない。
理由としては、逓減定期は保険金を一時金で支払うが、収入保障保険では、給与方式の毎月払いであること。
保険会社としては、一時金はその時点で大きな金額が手元から無くなるが、収入保障保険では、保険会社は「毎月チビチビ払う」ので、手元に大きなお金をもっていられて、そのお金を運用できる。
そのため、収入保障保険の方が保険料を割安に設定できるのある。
また、保険金を受け取る方の家族としても、給与方式の方が「今までと同じ生活スタイル」を送れる。
逆にあまりに大きな現金が一度に入ってきてしまうと、持ち慣れていない高額な現金は「運用の失敗で全財産を失う」、「金に困った親類縁者が群がってくる」などの無用のトラブルを生む。
保険会社、契約者、双方にとって輸入保障保険の方が都合が良いのである。
更に保険料の安いのでは太刀打ちできない。
そのため、逓減定期は、その「進化版」とも言える収入保障に駆逐され、マーケットにはほとんど残っていない。
言ってみれば老兵のようなものだろう。
ほとんどの保険会社で退役させられているが、ソニー生命にはまだ残っている。
筆者のようにこの世界が長いと、昔、逓減定期を随分販売したので、古い戦友に会ったような懐かしい気分になる。
ソニーの知人に聞いても、ほとんど売れていないそうだが、気分としては今後も残していって欲しいと思っている。
弱点1 収入保障保険の方が良い
本稿にて、もうほとんど書いてしまったが、収入保障保険の方が良い。
逓減定期の利点は「保険金を一時金で受け取れること」だが、収入保障保険でも、希望すれば「一時金受け取り」も可能。
また、保険会社によっては「一部一時金+残りを給料方式」というようなことも出来る。
更には死亡だけでなく、就業不能の保障を上乗せすることが出来るような商品も増えているので、古い商品である逓減定期では太刀打ち出来ない。
なお、セールスの現場では、それでも逓減定期が売れるケースがある。
それは保障を分ける提案をした場合。
「ご主人に万が一のことがあった場合、生活費は収入保障で対策するのが一般的ですが、学資などは入学金などもあるので、一時金として手元に持っていた方が良いです。それには逓減定期がぴったりです。」
こんなトークで、死亡保障を収入保障と逓減定期に分ける提案をする営業が「稀に」いる。
まあ、理屈としてはそれなりに分かるのだが、先に述べたように収入保障保険でも一時金を受け取れるので、別に一緒にしてしまっても良いと思う。
では何故こんな提案をするのか?
言ってみれば「件数稼ぎ」だ。
保険の営業の世界では、保険料(業界ではPと言う)、保障内容(保険金:業界ではSと言う)、件数、継続率などが評価の対象となる。
その中でも、「件数」は結構重要だ。
保険会社もプロモーションで「〇年度、新規契約数〇万件増!!」などと言いたいので、自社の営業マンには積極的に「件数」を積み上げることを奨励している。
要は件数が多いと褒められるのだ。
そのため、本来は「収入保障保険1件にまとめて良い」ものを「わざわざ2件に割る」というようなことをする営業がいる。
小手先、口先の提案で客を丸め込んで、余計な書類を1枚書かせて、かつ保険料もちょっとアップする。
客側からすれば、全く良いことはないのだが、そのために逓減定期が使われることがあるようだ。
手口として「古い」やり方だが、今は結構あるかもしれない。
特に若い営業マンは件数が欲しがる傾向がある(褒められたいから)
仮に逓減定期が提案に出てきたら、こう言ってみると良い。
「収入保障にまとめられないですか?契約数ばかり増えるのは面倒なので」
その時、営業が動揺するなら、きっと件数稼ぎだろう。
比較した方が良い商品
逓減定期としては、他社比較をする必要なく、収入保障保険で十分。
当サイトで高評価の収入保障保険は以下の通り。
編集後記