法人保険 全損の功罪

2月中旬。

保険業界に激震が走る。

国税庁より、各保険会社に対して「行き過ぎた節税商品への懸念」が伝えられ、各社が一斉に法人向け商品の販売を自粛したのである。

保険の営業マンにとっては死活問題で、特に翌月の3月には決算を迎える会社も多いため、その直前に「販売停止」されては大打撃である。

国税も分かっていてやっている、ある種の「お灸」のようなものだが、何ともえげつない。

特に問題視しているのが「全額損金商品」

保険料の全額を処理出来るのに、貯蓄性があり、年齢が若ければ返戻率は90%近くに上る。

法人から「経費」として消えたはずのお金が、実は帳簿外で貯まっているというようなもの。

昔からある商品だが、特に最近は各社の競争が激しくなり、業界にいる筆者でも

「ちょっと行き過ぎでは?」

と感じていたが、その矢先に国税庁という「先生」に怒られたという感じだ。




特に4,5年前に業界最大手の日本生命が出した「プラチナフェニックス」という商品が、その引き金となった。

加入して当初10年間は通常の死亡保障がなく、交通事故などの災害死亡のみが対象。

要は加入して10年間は病死では保険金を払わない。

保険支払いの99%は病気による死亡で、交通事故などは1%程度。そのため「病死は払わない」のであれば保険会社にはリスクはない。

そのため保険会社の診査(保険加入時の健康チェック)が軽く、2,3の質問に答えるだけで高齢者でも加入できる。

保険金を払わない(災害除く)のだから、当たり前の話、返戻率は高くなる。

おおよそ加入10年程度で80%台後半まで返戻率が延び、例えば年間1,000万円支払えば、10年後には総支払保険料1億円(1,000万円×10年)に対し、8千数百万円の返戻金がある。




正直なところ、この商品を指して「保険」というのには違和感がある。

完全にただの節税だ。

と言うか正確には節税にもなっていない。

一度消えたはずのお金が、いきなりボンっと出てくるのだから、8千数百万円は「雑収入」となり、課税対象になる。

もちろんその時にこのお金を消せるくらいの「経費」が他にあれば良いが、そう上手くもいかない。

結局課税されれば、

・保険会社に10数%取られ

・更に法人税が課税

されるので、後から振り返れば「普通に納税しておいた方が得」ということになる。

お客さんも損、そして本来取れるはずの税金を保険会社に横取りされた国税も損ということで、今回の国税のお灸騒動となる。

今後の流れは何ともいえないが、国税としては

「税制を変えて、過去の契約にも改正した税制を遡及させる」

という可能性すら匂わせている。

過去に一度、アリコジャパンが出していた商品で、過去にまで遡及された例があるが、その一例のみ。

さて、今回はどうなることか?

既に一部では、この騒動に巻き込まれたくないと、全損の解約ラッシュが始まっているそうだが、保険会社、国税、お客さん、その3者を巻き込んだ混乱は当分収まりそうにない。

本ブログでも最新情報が入り次第、お伝えしたい。