損額保険 保険金請求 4つのコツ




損保の請求にはコツがある

このコツを抑えるか、抑えないかで、支払われる保険金は随分と変わる。

ちなみに、損保とは損害保険のこと。

人の生死、病気、怪我に関わることが生命保険であるのに対し、物に関わる保険が損害保険。

身近なものでは、

・自動車保険

・火災保険

・賠償責任保険

などがある。

今回は、その損害保険の請求のコツを解説したい。

まず、その前に損害保険会社側の保険金支払いの「仕組み」を説明しよう。

保険金支払いの「仕組み」

言い方は悪いが、「敵(保険会社の支払部門)」を知らねば勝ちは見えないのである。

まずは「担当」について。

事故が発生すると、どこの保険会社でも「担当」が付く。

但し、この担当には2種類ある。

1 自分が加入している保険会社の担当者

2 被害者になった場合、加害者側が加入している保険会社の担当者(ほとんどが交通事故)

原則的に1は優しい。それも当たり前で、担当からすれば相手はお客様。

普段から保険料を徴収しているのに、何かあった時に冷たくするわけにもいかない。

そのため、こちらの言い分をちゃんと聞いてくれる。

厄介なのは2。

この場合、担当からすれば相手は客ではない。

保険料を貰っているわけでもないので、なるべく支払いは抑えたい。という心理が働く。

これが基本的なスタンスである。

なお、1と2、両者に共通するが、これらの担当は保険会社の社員で、つまりサラリーマン。

保険金を自分の財布から払うわけでもなし、請求されたものを拒否し、相手とけんけんがくがくやり合ってストレスを感じるよりは、さっさと支払って「ありがとう」と言われる方が良いに決まっている。95%はこのタイプで、出来れば穏便に済ましたいと思っている。

但し、中には、この業務にこだわりを持っているのか、それとも単調な仕事を長くやり過ぎて性根がねじ曲がってしまったのか、

「請求の重箱の隅をつつくような」

ことを言う意地悪い奴もいる。

2のように、自分とは関係のない(保険料を支払っていない)保険会社の担当者であればまだ分かるのだが、1の場合でも、変なのが出てくることがあって困ることがある。

こればかりは運としか言いようがない。

そして、各担当には「担当レベルで承認できる上限金額」が決まっている。

例えば、請求金額が5万円の事故が起こったとする。

この金額であれば、まず担当が決済できる。

しかし、金額が30万、50万となると、その決済権限は・・・

その会社による

としか言いようがない。

ここで名前は出さないが、支払いが渋いことで有名なA社などは、担当決済の上限が20万円で、それ以上は全て上司に決済してもらわないといけない、そう聞いたことがある。

逆に担当が100万円まで決済できる会社もある。

なお、これは会社ごとに違ってはいるが、同じ会社の中でXさんは50万、Yさんは100万というようなことはない。

保険会社には毎日膨大な請求が来るので、このように「上限」を決め、被害金額が安いものに関しては担当者レベルで処理できるようになっているのである。

こんな保険会社の支払部門だが、1年を通して「繁忙期」がある。

それが台風シーズン。

年に何個かは各地に甚大な被害を及ぼす台風が発生し、その結果、保険会社には

浸水した、屋根の瓦が飛んだ、窓ガラスが割れた

というような、火災保険の保険金請求が集中する。

例年、7月から9月ごろだろう。

当然、支払部門は大忙しで、場合によっては他部門(営業など)からも人員が増強される。

また、このような緊急事態には、一時的に担当が決済できる金額が上がる場合もある。(これも会社による)

事故の件数や被害額が多過ぎて、いちいち上司に相談していられないので、

「〇〇〇万円までは、お前の判断でやれ!!」

と権限委譲されるのである。

以上、保険会社の保険金支払いのシステム。

ポイントは3つ。

1 担当には2種類いる。自分が入っている保険会社と、自分とは関係のない保険会社(被害者になった時)

2 担当レベルで決済できる上限がある

3 保険支払部門には繁忙期がある。だいたいは台風シーズン。このような時には人員が増員され、決済権が増える(こともある。)

さて、ではこれらの背景を踏まえた上で、保険金請求の「4つのコツ」をお伝えしたい。




コツ1 写真・動画を撮りまくる

基礎的なことだが、意外とこれがおろそかになっている場合が多い。

何かの事故や被害にあった時に一番重要なのがこれで、とにかく写真、動画を撮りまくること。

接写、遠写、どちらもとる。

同じ事故でも、写真の撮り方一つで随分印象が違う。

まずはバシバシ写真を撮って、後からその中で「被害が大きそう」と思わせるような写真を出せば良い。

保険金請求には「担当者の心証」も重要で、その点、写真や動画は、その事故を文章で説明する以上の説得力がある。

物についた傷などはなるべく陰影をつけて、傷が深く見えるように撮ったり、破壊されたものは、なるべくそのままの状態、物が散乱している姿を捉えた方が良い。

浸水などで、液体状のものが広がってしまうと、心理的にはすぐに片付けたくなるが、それもまずは写真を撮ってから。

初期にこれをやっておかないと、一度、片づけが済んだ後では同じ写真は撮れないので、注意して欲しい。




コツ2 見積もりは複数社から取る

事故にあった場合、

・金額がすぐに分かるもの(電気製品や家具など)

・専門業者に依頼しないと金額が分からないもの(修理、修繕など)

の2つがある。

前者は、ある程度金額が決まっているし、保険会社側でもデータベースを持っているので、領収書があればそれを提出すれば良いし、なければ何となく覚えている値段で請求するしかない。

注:買った時の領収書がないとダメだと思っている人が多いが、そんなことはない。品物のメーカーと型番さえ分かれば請求はできる。

ただ、この時、本当は5万円で買ったのに「8万円だった」と嘘をつくような人がいるが、率直なところその金額で通ることは稀。

前述の通り、保険会社も色々な「物」の価格の推移を調査しているので、

「こちらの調査では、当時5万円程度だったはずです」

と言われ、その金額しか払われない。

とは言え、これは仕方がない。嘘なのだから。

保険会社もバカではない。こんな下らない嘘はすぐに見抜く。

それよりは後者、つまり「専門業者に依頼しないと分からない」ものの方が、金額も大きく重要。

例えば、大雨の影響で床上浸水の被害にあった。

床材、壁紙もボロボロ。

そんな時には、複数社から見積もりを取る。

また、それらの業者には

「保険を請求するので、被害にあったと思われるところは全て直す前提で見積もってくれ」

と伝えること。

そうでないと業者も仕事が欲しいので、料金をなるべく安く抑えた見積もりを作ってくる。

普段ならそれで良いのだが、こと保険の請求に関してはマイナス。

あらかじめ「保険で」と言えば、勘の良い業者であれば少々「盛った」見積もりを作ってくれるだろう。

その結果、

A社 78万円

B社 150万円

C社 103万円

このような見積もりが出てきたとする。

保険会社にはB社の150万円の見積もりを出す。

もちろん保険会社側でもその見積もりを精査し、一般常識の範囲内か?今回の被害と関係あるか?などをチェックする。

場合によっては業者に電話でヒアリングをすることもある。

が、筆者の経験上、よっぽど無茶な項目が入っていない限り、ほぼそのまま通る。

一応は「専門業者」というプロが言っていることなので、その意見を優先しているのと、厳密な意味で

「同じ事故(台風の被害でも、似たような事例はあっても、全く同じ被害はない)」

はないので比較対象が少ないのである。

そのため、保険会社としても認めることが多い。

で、保険金請求が通った後、改めて、A、B、C、三社と交渉し、一番安いところでやってもらう。

これは違法ではない。

保険会社に聞いても、「別に構いません」と言うだろう。

請求の根拠となる見積もりと、実際の工事が違っていても、それは保険会社は関知しないのである。

意外とこのことを知らない人が多い。

中には、実際に工事をやって、業者への支払いが済んでから、その領収書を証拠に保険金を支払ってくれる。などと思っている方もいるが、それは違う。

何と言っても事故の被害に会っているのである。

そして、そのための保険だし、保険料も支払っているのだ。

別に遠慮する必要はない。

出来るだけ多くの保険金を受け取って、被害にあった部分をしっかりとメンテナンスするべきだろう。

なお、ネットなどで「保険金で直せます!!」と言うようなことを謳っている業者がいる。

特に屋根周りが多い。

これらの業者は出来れば避けた方が良い。

保険請求を悪用するために、見積りを「盛りまくっている」ので、保険会社もチェックしていて、場合によっては「悪徳業者」として登録されている場合もある。

また、総じて仕事も適当なので、このような業者ではなく、地場で真面目にやっているような業者が良い。

そのような業者を2,3社探すのは骨が折れるが、それでも手間をかけた分だけ請求できる保険金は変わるのである。




コツ3 加入後1年以上、初回請求であればまず通る

保険の請求は初回であれば、多少無茶でも通ってしまうことが多い。

これは良くも悪くも損害保険会社の体質で、逆に「頻繁に何度も」請求する人には相当厳しくチェックする。

損害保険の中には詐欺まがいのものも多いので、常習者はリストアップされ、保険会社間でも共有されている。

初回に甘く、複数回に厳しい

これはどこの保険会社でも共通している。

そのため、細かい被害、例えば、

・子供がタブレットを風呂に落とした

・部屋の模様替えの際に壁紙を傷つけた

・自宅前の停めておいた自転車を盗まれた

・ノート型パソコンの上にコーヒーをこぼして壊してしまった

等々に関しては、イチイチ請求せずに、まとめて「初回」にやった方が良い。

なお、これらの項目を見て、

「こんなのでも保険がでるの?」

と思った方も多いかもしれないが、これらは火災保険の「破損・汚損」という項目。

加入している保険にこれらの項目が補償されていれば保険金の支払い対象である。

破損・汚損を入れると火災保険の保険料が高くなるので、外している人も少なくないが、これを付けておくと、些細なことで保険金が受け取れるので筆者は必ずお勧めしている。

事故の都度に、

「証拠写真」

「領収書(あれば)」

「修理の見積もり(修理した場合)」

「修理不能証明書」
注:型が古く、メーカーでも既に修理出来ない場合に出される証明書。
最近ではメールだけで「修理できません」と連絡が来るだけの場合もあるが、その時にはそのメールを印刷したものでも代用可。

これらをとっておいて、ある程度、数がまとまった時にまとめて請求しても良いだろう。

「請求しなきゃとは思っていたが、面倒でやっていなかった」

という程度の言い訳で保険会社も納得する。

但し、完全な嘘はやめた方が良い。

保険会社の担当は経験豊富。そして勘がするどい人が多い。

「なんとなくおかしい」

というのは分かるらしい。

その場合、「水をかけて壊れた現物を送って下さい」もしくは「調査員を送りますので、現物を見せて下さい。」などと言われる。

初回でもバレる時はバレる。

こんなコスイ詐欺で前科者になる可能性もあるので、やめておいた方が無難だろう。




コツ4 被害者になった時は、ネチネチと。常に冷静に、声を荒げないこと

保険会社と交渉をすると、どうしても納得できない場面がある。

特に交通事故の被害者となって、加害者側の保険会社の担当と交渉している時に、このようなことが多い。

まずはお金。

補償金として〇〇万円

と提示されて、それが納得できない。

あとは事故割合の話も揉める。

もしくは、相手の慇懃無礼な態度に腹が立つこともある。

こんな時に興奮して声を荒げる人がいるが、

全く効果がない

保険の支払担当者は、普段から色々な人から怒鳴られまくっていて、その部分の神経はぶっ壊れている人が多い。

怒号や罵声はまず効かない。

それどころか、上司に「暴言多し、感情的で会話が成り立たない」などと報告され、「ヤバイ奴」だと烙印を押されることもある。

そうなると、たとえこちらが言っていることが正しくても、通らなくなってしまう。

また、

「お前じゃ話にならん。上司を出せ」

と言っても、まず上司は出てこない。

「この件は私にまかされておりますので」

と言われるのがオチ。

まずは、冷静に対応し、

「納得できないので、こちらでも反論を検討します」

とでも返しておけば良い。

その上で、弁護士に相談すれば、勝てるか勝てないかはすぐ分かる。(だいたい交通事故関係の相談は初回無料のところが多い)

勝てるなら弁護士に任せれば良いし(一定の成功報酬は取られるが)、「ちょっと難しい」と言われたら、諦めるしかない。

なお、勝ち目がなくても、一つだけ反撃方法がある。

それは、

持久戦に持ち込むこと

保険会社の支払担当は、同時に複数の事故処理を抱えている。

人事考査上、「1年間で何件さばいた」というポイントは高く、要はさっさと片付けたいのである。

長期化すればするほど、その能力を疑われる。

そのため、「その後どうですか?示談に応じてくれますか?」と連絡があるが、その都度、

・弁護士と協議中

・忙しくてなかなかちゃんと考えられない

・新しい条件が出てくれば考えますが、今のままでは到底示談できない

などと、のらりくらいかわす。

もしくは、何度かに一回は電話を無視しても良い。

担当によっては全く怯まない奴もいるが、この「時間がかかる」というのは一般的には嫌がる担当者が多い。

そして、台風シーズンや、大きな災害が起こった時、つまり「相手が忙しい時」に、あえて問題を蒸す返し、

「そちらの主張をもう一度聞かせてくれますか?」

などと揺さぶるをかける。

その結果、

「具体的な条件を提示してくれませんか?」

などと言われればこちらのものである。

保険の請求には一定のルールはあるものの、最終的には人と人の交渉。

怒って大声を上げるよりは、ネチネチやった方が保険会社の担当者には効果がある。

 

以上、4つのコツをお伝えした。

何らかの被害にあった時には、保険会社の言いなりにならず、しっかりとした補償を受け取って頂きたい。