告知義務違反「2年経てば平気」は本当か?

保険に加入する場合、自身の健康状態を報告する「告知」というものがある。

嘘をつかずに正直に報告する、というのが大原則ではあるが、高血圧や糖尿病などを言えば、保険料が上がってしまったり(特別条件と言う)、最悪「入れない」ということもあり得る。

そのため、営業の現場ではセールスマンが

「それは言わなくても良いです。加入してから2年経てば平気(払う)ですから」

などと言う場合がある。

保険の営業マンとしても、正直に告知されて「入れない」となれば、販売成績にならないし、手数料も入ってこないので、何とかごまかして保険を成立させようとするのである。

では、この「2年経てば平気」というのは本当なのだろうか?

これに対する回答は、

99%は本当だが1%は嘘

ということになる。

何故2年なのか?と言うと、保険商品の約款にはだいたい

「契約して2年経過していれば、告知義務違反があったとしても保険会社から契約は解除出来ない」

と書いてあるからだ。

これを持って保険の営業マンは「2年経てばOK」と言っているのだが「解除出来ない」からと言って「保険金を払う」わけではない。

約款にも「告知義務違反の場合、保険金は払わない」と明記してある。

「2年経ったら解除出来ない」、なのに「告知義務違反は払わない」

このあたり、何とも矛盾しておりややこしい。

これについて医療保険を例に解説したい。

例えば、高血圧であることを隠して(嘘をついて)医療保険に入ったとする。

そして2年経過してから、高血圧で入院した。

こんな事例。

このような場合、明確に「告知義務違反」にあたる。

なお、ここでいきなり横道にそれるが、本件、告知義務違反ではあるものの実務上では「払われること」が多い。

医療保険の場合、保険会社は加入1年以内の入院、手術に関しては、かなり細かく調査をするのだが、1年経過してしまうと、ほとんどノーチェックなのである。

医療保険の請求など、日に何百も来るのでいちいちチェックしていられない。

そのため、実際には審査をすり抜けて支払われることが多いのだが、ランダムに抜き打ち調査はしているので、それに引っかかれば告知義務違反は発覚する。

ここで話は戻る。

この場合でも「2年経過していれば大丈夫(払われる)」のだろうか?

いや、このケースだとおそらくダメだろう。

高血圧を隠して、高血圧で入院しているのだから、因果関係は明白で保険会社は「告知義務違反」を理由に十中八九支払いを拒む。

だが「解除は出来ない」のである。

通常、告知義務違反などがあると、保険会社は「こいつは悪質な契約者だ」と判断し、契約を解除するのだが、加入していから2年経過していると、保険会社側にこの解除権がなくなるので、契約自体は続行される。

そうなると、こう思われるだろう。

「支払われない医療保険を続けていて、何の意味があるのか?」

まさにその通りなのだが「払わない」のは、あくまで告知義務違反にかかわるものだけだから、例えばこの翌年、交通事故で骨折をして入院すれば、それは「払う」

高血圧と骨折には何の関係もないからだ。

ここまでご理解頂いただろうか?

・大前提として告知義務違反の場合は「払わない」

・2年経過すると保険会社の「解除権」がなくなるので、告知義務違反をしても契約は続く

・以後、告知義務違反した項目と因果関係のあるものは「払わない」が、因果関係のないものは「払う」

では、次に死亡保障の例を見てみよう。

先ほどと同じく高血圧を隠して死亡時5,000万円の保険に入ったとする。

2年経過後に死亡。

医療保険に比べ、死亡保障は支払う金額も大きいため、それなりに調査はする。

そこで「高血圧未告知(告知義務違反)」が見つかった。

この場合、保険金を支払うかどうかは死因による。

例えばがん。この場合、がんと高血圧には因果関係はないので払うだろう。

先に挙げた交通事故も同様。

では、心筋梗塞や脳卒中は?

高血圧は、これらの病気を引き起こす遠因であることが知られている。

しかし、この場合でも「おそらくは払う」

確かに高血圧は心筋梗塞や脳卒中の要因の一つではあるが、直接的な原因か?と言われると、その証明が難しいからだ。

保険会社が保険金を払わない場合、告知義務違反の内容が死因に関係していることを「証明」しなくてはいけない。

それも裁判でも通用するレベルでやらないといけないので、「おそらくそうだろう」などというような甘い説明は通らない。

「死因の心筋梗塞は告知義務違反の高血圧によるもの」

と言ったところで、

「血圧が高くなくても心筋梗塞になる人はいますけど?」

そう反論されればそれで終わりだ。

結局のところ、決定的な理由ではないので、「因果関係がある」とは言い切れないのである。

保険会社もこのあたりの事情は分かっているので、渋々払う公算が高い。

「保険料を受け取っているのに、いざという時に保険金を払わない」

普通に考えればとんでもないことで、この手の裁判では裁判所も原則契約者に有利な判断をする。

そのため、保険会社としても保険金の支払いを拒否するというのは、相当な覚悟がないと出来ないのである。

なお、仮にこれが2年以内の場合、保険会社は告知義務違反を理由に契約を解除することが出来るので、保険金を支払わないということも許される。
(注:それでも実際に解除するかどうかは保険会社の判断。実務上は保険金を支払ってしまうことも多い。)

また、がんであることを隠して、がんで死亡した。これもダメだ。

明確に直接的な原因であり、誰がどう見ても死因と告知義務違反の内容に因果関係が存在する。

以上、「2年経てば大丈夫」について解説した。

これを読んで「告知義務違反しても大丈夫なんだ」と思った方もいるかもしれないが、冒頭でも述べた通り100%ではないし、実際に死に直面するような病気になった時

「ホントに払われるのか?・・・」

と疑心暗鬼になる精神状態は半端ではないし、確かめように自分が死んだ後の話なので、確かめる術がない。

またこれらのストレスは治療にも絶対良くないだろう。

そのため、無難に言うのであれば告知義務違反はやめた方が良い。

もし、それでもやるならあくまで自己責任で。

当サイトは一切関知しない。

なお、

「こういう場合は大丈夫ですか?」

的な質問は無視するので、その点、ご理解いただきたい。