保険会社が保険料を改定する際の理由として、
平均寿命が長くなったから
というものがある。
ご存知の通り、年々その年齢が長くなっているが、それらの実情を踏まえ、各保険会社が保険料を見直すのである。
とは言え、平均寿命は毎年発表されているが、それを見て保険会社が毎年変えているわけではない。
だいたい「3年おきくらい」というのが慣例で、その都度、保険料が変わる。
この時、「保険料が安くなる保険」と「保険料が高くなる保険」があるのが不思議なところ。
本コラムではそのあたりの事情を解説する。
まず、安くなる保険の代表例は死亡保険である。
平均寿命が延びるということは、すなわち全体的に「長生きになる」ということ。
つまり「若くして死ぬ人が減る」ということなので、当然保険料は下がる。
あくまで例だが、保険会社は
「100人いたら3人くらい死ぬだろう」
と思って保険料を計算する。
つまりは、3人に支払う保険金を用意しておかないといけないのだが、これが2人に減れば単純にその分保険金が減る。
だから、皆から集める保険料も少なくて済むということ。
逆に値上がりする保険の代表例が「年金保険」
特に「終身型」と呼ばれるものである。
年金保険の終身型は、例えばこんな契約。
65歳になってから、毎月5万円を一生涯お支払いします。
こんな内容の場合、大変不謹慎な言い方だが「早く死んでくれた方が」保険会社はありがたい。
66歳で亡くなれば1年間しか年金を払わずに済む。
注:実際の契約では「最低保障期間」などが設けられているので、亡くなったとしても元本+αは遺族に支払われる
しかし、逆に80歳になっても90歳になっても、いや100歳になっても元気でおられると、保険会社はずっと年金を払い続けないといけないので大損である。
平均寿命が延びる
ということは、保険会社からすれば「年金を払う期間が長くなる」ということになる。
そのため、年金の原資となる保険料も「前よりちょっと多く貰わないと」ということになるので、「高くなる」のである。
最後に難しいのが「医療保険」
これは「安くなる」ことも「高くなる」こともある。
結論から言えば、終身払いは「安くなる」が、短期払いは「高くなる」
まず医療保険の終身払と短期払について解説する。
例えば、こんな例を見てみよう。
30歳 男性 入院日額 5,000円
終身払 2,000円/月
短期払(65歳払込) 3,000円/月
終身払とは、その名の通り「終身(一生涯)払う」ということ。
入院したら1日あたり5,000円を受け取れる保障を用意するために、生きている間はずっと毎月2,000円を負担する。
対して短期払(65歳払込)は、65歳まで払えばその後は一生入院に関する保障が続く。
ダラダラ払うか、期限を決めて払うか
という違いである。
終身払の場合、「平均寿命が長くなる」のであれば、支払う期間も長くなるということ。つまり保険会社からすれば収入が増える。
対して短期払は、始めから期間が決まっているので収入は変わらない。
それに対して、「平均寿命が伸びる」ということは、保険会社からすれば
「給付金を払う金額も増えるかも」
と考える。
生きている時間が長くなれば、その分、病院のお世話になることも多くなるからである。
とは言え、平均寿命が1年やそこら延びたところで、そこまでは変わらないのだが、「増える」ことだけは確実だろう。
ここで話を整理する。
保険会社からすると、
収入に関して
終身払 支払う期間が長くなるのでその分増える
イメージで言えば、100が102くらい。
短期払 以前と変わらない(100は100のまま)
支出(給付金の支払)に関して
生きている期間が長くなるため「ちょっと増える」
イメージで言えば、100が101くらい。
という関係になる。
終身払いは収入が「結構増える」のに、支出は「ちょっと増える」くらいなので、値下げできる余地がある。
そして実際に多くの保険会社は保険料を安くする。
本当のところはどうなるか分からないが、「そうなるだろう」と読んでいるのだろう。
このあたりは各社、頭の良い人が色々な統計データとかシミュレーションとに睨めっこをして決めている。
対して、短期払いの方は簡単な話で、収入は変わらないのに、支出は「ちょっと増える」ので、保険会社からすれば単純に損ということになる。
だから「値上げ」することになる。
これが医療保険が支払いタイプによって、保険料が安くなったり、高くなったりする仕組みである。
保険を検討している際、
「平均寿命が伸びたのでそろそろ保険料が改定されます」
と言われたら、「改定前」に入るのが良いのか、「改定後」の入るの良いのは商品によって変わる。
その点にご注意頂ければ幸いである。
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