大雨、台風、洪水。
最近では数日前には、川の決壊や土砂災害などについて
・どのあたりにどれほどの被害がが発生するか?
を精緻にシミュレーション出来るようになったため、自分の家がそのエリアに属するのかどうか事前に分かる。
そのような危機が目の前に迫っている時、ハッと思えば家の保険である「火災保険」に入っていないことに気付く。
そんなことがある。
築浅の家であれば住宅ローンを組む時に長期(25年、35年など:注 現在では最長でも10年まで)の火災保険に入っているが、古い家ではローン終了後に火災保険を更新していない場合もあり、以後無保険となっている家は結構多いのである。
なお、火災保険と言うと、その名称から「火災」の保険だと思う方が多いのが、保険金の支払実態としては火災は全体の10%もない。
例えば2019年のデータでは、火災保険全体の保険金支払額は6,206億円だが、その内訳は
・火災(落雷、破裂、爆発含む) 438億円
・自然災害(水害、雪害、雹害など) 5,070億円
・その他(水漏れなど) 698億円
となっている。
実際には火災保険では「火災」の保険金支払い額がもっとも少なく、自然災害が8割強を占めており、むしろ「自然災害保険」と呼ぶ方がふさわしい。(個人的には改名した方が良いと思っている)
自然災害の中でも台風、大雨による「水害」は大きなウエイトを占めており、町が水没してしまい家の1階、2階が浸水したようなケースでは、これらの補償が元の生活を取り戻すための大きな手助けとなる。
例えば、
・〇〇川が決壊しそうだ
・〇〇エリアが浸水する可能性が高い
このような事前予測を目の当たりにして、
「今すぐ保険(火災保険)に入りたい」
と思ったとする。
さしかし実際に「今すぐ」火災保険に入ることは可能なのか?
結論としては、流石に今すぐは無理だが「明日」なら出来ないこともない。
これが「可能」になったきっかけは皮肉にもコロナ。
多くの保険会社がコロナ禍により、業務の大半をネット化したため、現在では見積もり提示、各種書類の提出、そして最後の申込までメール、ネットで行える。
もちろん以前からネット対応出来ていた部分もあるのだが、損害保険会社と言うのは、驚くほどの「紙文化」なので、手続きフローの一部に「ここは紙でないと」というものが意外とあった。
特に一軒家の場合、耐震、耐火などの等級によって、保険料が変わる(ディスカウントされる)ので、それらの証拠となる書類を提出する必要がある。
そのような情報を整理して、保険会社に郵送などをしていると、あっという間に1,2週間経過してしまうのである。
しかし、現在では、ほとんどの保険会社で「完全ネット対応」となっているため、これらの書類のやり取りをネットで行えば、「明日から保険開始」も出来るようになっている。
だが、「可能」ではあるが、それを実際受けてくれる代理店は「かなり少数」でもある。
おそらく、ほとんどは断られるだろう。
まず「明日から保険開始」を実現するためには、契約者、代理店ともに相当な労力を要する。
資料をpdf化してもらってメールしたり、ネットで申し込み手続きをしたり。
契約者側にある程度のITリテラシーが必要になり、ここが小さくないハードルとなる。
このやり方を教えてたり、場合によっては「書類を取りにきて欲しい」などと言われれば、代理店側には大きな負担となる。
また、代理店側でも預かった資料などを「時差なく(時間がないのですぐやる必要あり)」大元の保険会社に転送する必要があり、これらの急な仕事で他の仕事の大半が滞る。
これが面倒で、
「いやー、無理ですね」
となってしまうことも多い。
これらに対して、
「目の前に危機が迫って切羽詰まっているのに冷たくないか?何のための保険だよ!!」
というご批判も分かる。
だが、一方で保険業界の人間の立場から言えば、
ほとんどの契約者が長らく保険料を支払って危機に備えている。
「危ないから」と言って昨日今日来て、事故で大きな保険料を持っていかれても困る。
というのも本音で、要は「美味しいところどり」をしたいだけで、しかもこちらの迷惑を顧みない客など、代理店からすれば「好まざる客」ということだろう。
また、こういう客に限って、「入ってやる」というような妙に横柄な態度のやつも多い。
火災保険の手数料など、だいたい10%程度。
仮に火災保険10年契約で保険料が30万円だとしても、手数料は3万円程度。
しかも、
「急に30万円は払えない。とりあえず明日が怖いので、1年更新タイプで。その後はゆっくり考える」
なんて言われた日には、保険料は3、4万円くらい。
手数料も3,000、4,000円と少額だ。
それで大きな顔をされて、日々の業務も邪魔されて、しかも「明日」事故が発生する可能性が高いとなれば、普通なら断る。
また、保険会社は加入してからすぐ保険金が発生するような取引には厳しいので、急いで手続きして、加入した日や翌日に事故でも起これば?・・・
下手をすれば代理店が「何でこんな危険な契約を受けた?」とやり玉に挙げられる可能性もある。
3,000円でそこまでのリスクを負う奴なんていないだろう。
保険屋だからと言って、契約すると言えば喜んでやってくれると思ったら、大間違い。
原則的には「飛び込み」で「すぐ入りたい客」には、何か裏があると思って断れる可能性が高いのである。
まず、本当に「明日から火災保険を始めて欲しい」と思うなら、これらの代理店側の事情を理解した方が良い。
ではどうするべきか?
ポイントは4つ。
1 基本的に「断られる」と思って、家の近くにある保険の代理店(駅前やショッピングモールにある保険ショップなど)に電話をかけまくる
しかし、同じエリアにある代理店だと「明日あたり〇〇が危ない」という情報を持っているので、そこの契約など受けない可能性もある。
その場合、東京や大阪、福岡などの大都市で「事情を知らない代理店(台風や大雨の情報を知らない)」に連絡しても良い。
もしくは、旧知の保険屋さんがいるなら、それに頼るのも良い。
2 保険料算出に必要な、家の「広さ」、「工法」などが記載された売買契約書や、重要事項説明書などを事前に用意する
3 偉そうにせず、必要があれば(pdf化などが出来なければ)自分で資料を持っていく
なお、書類のpdf化はコンビニの複合機などでも出来る場合もある(解説はコチラ)
4 出来れば10年契約など、なるべく保険料を高く契約してあげる(その方が代理店も食いついてくる)。
無理なら、「こんな少額の契約で手間をかけること」を詫び、来年以降も必ず更新することを約束する。
(別にそれを守る必要はないが、とりあえず誠意を見せる)
これらの努力をすれば「入れることもある」という感じだろうか。
途中で疲れて「もういいや」と思うなら、そこで終わり。
仮に次の日に災害にあっても「保険に入っていないあなたが悪い」としか言いようがない。
もし目の前に自然災害の危機が迫っていて、保険に入っていなかったとしたら・・・
筆者なら駈けずり回っても保険に入る。
但し、既に大雨や台風などで、外出も危険というような場合には、無理して外に出ないこと。
保険に入るために自分自身が災害に巻き込まれては、シャレにならない。
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