「保険会社の格付けって、どこまで『あて』になるのか?」
そう聞かれると、筆者は
「あくまで目安。A以上ならまず問題ないが、基本的には『あて』にならないもの」
と答えている。
格付けはAAA(トリプルエー)を最上として、AA、A、BBB、BB、Bと続いて「信用が低い」と判断される。
「+」と「-」を併記する場合もあり、A+とA-では、Aを基準としてA+の方が「Aよりちょっと良い」、A-の方が「Aよりちょっと劣る」というイメージ。
ただ、率直なところ、この格付け。保険業界で真に受けている奴は少ない。
最もトラウマになっているのが、アリコジャパン。(今は買収されてメットライフになっている)
今の人たちは知らないかもしれないが、そういう名前の会社がリーマンショック前にあった。
当時、日本で唯一の「AAA」に格付けされており、そのことを広く広告していた。
「アリコは日本唯一のAAA!!」
というCMを覚えている方もいるかもしれない。
しかし、リーマンでアリコジャパンの親会社であるAIGの経営危機が報じられると、その子会社であるアリコも「ヤバいのではないか?」と噂され、当時の契約者たちは
自分たちの積み立てたお金はどうなるか?・・・
と随分肝を冷やした。
結局、その後、紆余曲折あって今のメットライフに買収され、今も事業を継続しており(契約内容にも変更はない)、結果的には、誰も損をしていないが、その騒動を見ていた業界関係者は皆こう思っていた。
「AAAで買収されるって、格付けって何の意味があんの?」
と。
そういう意味では、あまりあてにしても仕方ないし、格付け機関の調査と言っても、表面的な部分のみを見ているに過ぎない。
アリコの例でいれば、親会社のAIGがリーマンショックの引き金となったサブプライム(貧乏な人向けの住宅ローンを「証券化」したもの。プライム「最高級」のサブ(次)という意味)のデリバティブ取引を手広くやっていた。
サブプライムが「怪しい商品」であることは、知っている人は知っていたので、それが暴落した時の「保険」をかける。
これを専門用語でCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と言う。
AIGはこのCDSを大量に受けていた。(受け手)
「受け手」はサブプライムの値段が安定していれば、何もせずに定常的に「保険料」を受け取るだけなので、非常に美味しい運用が出来る。
しかし、一度、サブプライムが暴落すれば、「受け手」はその損失額を補填しなくてはならず、数十兆円が吹き飛ぶ。
そして、実際、リーマンショックによってサブプライムの価格が下がると、AIGは多額の支払いを求められて破綻しかけた。
最終的にはアメリカ政府に救済されたが、実態としては、顧客から集めた金で、こんな危険なギャンブルを張っていたということが白日の下に晒された。
しかし、それ以前には格付機関はこのことに気づいておらず、その子会社のアリコジャパンに
AAAの称号
を与えていたわけである。
もちろん、格付機関もしっかりと調査をして「格付け」しているのだろうが、あくまで公表されている決算書や財務状況を分析だけでは「裏の裏」は分からない。
そのため筆者自身、格付けについては
A以上なら「表面的には問題ない」
しかし、どの保険会社がどんな爆弾を抱えているかは分からない
あくまで参考
というように、わりと冷めた目で見ている。
ちなみに、2020年3月時点で、A以下の保険会社は、国内では朝日生命(BBB)とFWD富士生命(BBB)の2社となっている。
つい最近までは三井生命もBBBだったが、日本生命の買収され「大樹生命」となってからは、ニッセイという後ろ盾を得たことから、AやAAに「昇格」した。
では、BBBの朝日とFWD富士に加入するのはやめておいた方が良いのか?
BBBとは言え、一つ上は「A」であり、その差は小さいので、そこまで気にする必要はないかと思うが、例えばほとんど同じ保障内容、同じ保険料で
X社 AA
Y社 BBB
なら、わざわざY社を選ぶ理由はない。
また、商品の種類によっても考え方は変わる。
掛け捨ての保険(医療保険や定期保険など)であれば、別に保険会社が潰れても、そもそもが「掛け捨て」なのだから、契約者は別に損はしない。
ヤバいと思えば、すぐに解約してしまえば良いだけ。
別の保険会社と契約しないといけないという手間や、年齢が上がったことによる保険料アップなどの弊害もなくはないが、そこまで深刻な事態にはならないだろう。
逆に貯蓄性のある保険は、注意が必要。
貯蓄性商品は長い間、保険会社に資産を預けることになるし、かつ、早期で解約してしまうと損をしてしまうので、仮に預け先の保険会社の「経営危機」というような報道がされた時「解約も出来ない。」ということになってしまう。
無論、保険会社などはよほどのことがないと潰れないし、だいたいは潰れる前のどこかの保険会社が買収するので、そうなれば契約自体は以前と同じ条件が維持される。
しかし、結果的には問題なくても、経過途中でドキドキするのも嫌なものだ。
そうなると、先ほどの話の通り、全く同じような内容、保険料なら、格付けが上の会社の方が良いかもしれない。
しかし、冒頭でも述べた通り「AAA」のアリコですら破綻しかけるわけだから、結局のところ
「格付けなんてあてにならないが、わざわざ低いところを選ぶ理由もない」
と思っていた方が正解かもしれない。
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