この保険の弱点はここだ!三井住友海上プライマリー生命「新通貨選択利率更改型終身保険」

提供会社:三井住友海上プライマリー生命

商品名:新通貨選択利率更改型終身保険
別名:
しあわせ、ずっと:三井住友銀行
しあわせ、ずっと3:秋田銀行、佐賀銀行、鹿児島銀行、等、地方銀行多数
しあわせの架け橋2:みずほ銀行
グローイングライフ:SMBC信託銀行
たのしみ、ずっと:大和証券

参考コラム:
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この保険の弱点はここだ!!

三井プライマリー生命は三井住友海上の子会社で、主に銀行で販売される保険商品の開発・販売を手掛けている。

なお、三井生命(現 大樹生命)とは何の関係もない。

本商品は同社の主力商品で、基本的には一時払の外貨で運用を行うだけなのだが、そこに細かいバージョン違いの商品がある上、販売を委託している金融機関によって商品名を変えていることから、

しあわせ、ずっと
しあわせ、ずっと3
しあわせの架け橋
グローイングライフ
たのしみ、ずっと
しあわせの架け橋

などなど、様々な名前が存在している。

しかし、根本となる内容は同じ。

1 一時払で保険料を預ける
2 その時の為替レートで「米ドル」、「豪ドル」、「ユーロ」に変える
3 加入時に決まっている利率で運用を行う

というもの。

オプションとして、

・ターゲット機能
 例:1,000万円を預ける。それが110%(1,100万円)になった段階で円に戻し運用を終了する。
   急激な円安(1ドル120円など)が起こり「今、日本円に戻せば1,100万円になる」となったタイミングで自動的に円に変換してくれる。

・要介護2以上で年金支払機能

・毎年の運用益を「お小遣い」形式で受け取れる(定期支払プラン)

などが用意されている。

基本的にはただの「外貨定期預金」で、そこに色々とオマケを付けただけなのだが、一応は「保険」なので、保険金の非課税枠には使える。

保険金の非課税枠とは、保険金を受け取った時に

500万円×法定相続人

までは、税金が免除されるというもので、例えば、父親が死亡した場合、遺された家族が、妻、子供2人の場合、

500万円×3人=1,500万円

までは非課税となる制度。

つまりは、現金で持っていれば相続税の対象になってしまうのに、それを「保険」という形にしておくだけで、税金がかからない。




そのため、銀行の窓口では

「保険にしておいた方が良いですよ」

と盛んにこのような商品をセールスしている。

以上が商品の概要。

それでは、具体的な弱点に移ろう。

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弱点1 利率が低い

2020年5月16日現在の利率は以下の通り。(同社サイトより抜粋)

新型コロナの影響により、どこの国も金利を下げている。

そのため、本商品の運用対象である国債(米国債、オーストラリア国債、など)の利回りも低下しており、どの通貨でも1%を切っている。

他社比較では、米ドル0.65%は「まあまあかな」という感じ、豪ドル0.82%は高い方だろう。

なお、ユーロ建に関しては他社ではほとんどが「取扱中止」となっているので、まだ継続しているだけ凄いとは思うが、0.01%と「超低い」ので、実際これに預ける人などいないだろう。

ドル、豪ドル、ユーロ、どれも他社と比べてどうこうというよりは、そもそもが低すぎる。

本商品は為替のリスクを抱えるのだから、せめて2~3%程度の利ザヤは欲しいところ。

流石に1%以下はちょっと寂しい。

別に無理して今やらなくても・・・

という印象。




本商品は加入時の利率が「固定」してしまうので、あと数年様子を見て、せめて利率が1%を超えてからでも良いのでは?とは思う。

弱点2 解約時の「市場調整価格」が複雑、つーか約款くらいあげとけ

この商品のような一時払の保険には、解約時に「市場調整価格」というものがある。

入った時の利率より、解約した時の利率の方が低ければ「得」をして、入った時の利率より、解約した時の利率の方が高ければ「損」をする。

例を挙げて説明してみよう。

Aさんが、米ドルで予定利率1.5%の時に本商品に入り、数年後解約をした。

例えば、今、2020年5月に解約をしたとしよう。

現在の予定利率は、0.65%。

Aさんが入った時は1.5%で、Aさんの契約はずっと1.5%が約束されているのだが、今新しく入った人は0.65%ということ。

この「ギャップ」が何故解約した時の払戻金に影響するのか?

保険会社の立場に立って考えると分かりやすい。

Aさんが加入した時に約束した1.5%は、保険会社としては「それだけのリターンを返せる」と思って引き受けたわけだが、もちろん何らかしらの裏付けが必要だ。

本商品の運用は主に米国債(豪ドルの場合はオーストラリア国債)で行われるので、その時には1.5%以上の利回りがあったのだろう。

単純な話、この時に発行された米国債10年物の利回りが1.8%くらいあれば、保険会社としては、Aさんの金でそれを買うだけで

毎年1.8%のリターンを10年間得られる

ということになる。Aさんに毎年1.5%を返しても「上澄み」の0.3%は利益となる。
(実際にはAさん、Bさんというように、契約ごとに買っているわけではなく、保険会社として大量に米国債を購入している)

要は契約した段階で、Aさんへのリターンはほぼ約束されているようなものだ。

しかし、数年後、Aさんは解約したいと言う。

これ、保険会社としては嬉しい。

何故ならば、今のお客さんへは0.65%のリターンで良いのに、Aさんが1.5%を受け取る権利を「放棄」してくれたのだから、それを0.65%の客用に使えば良い。

保険会社の利益は増える。

そのため、

「いやー、1.5%の権利返してくれてありがとうございます。助かりますよ。儲かった分の一部を払戻金に上乗せしておきますね。」

ということになり、払戻金は増える。




では逆はどうだろうか?

入った時には1.5%、解約した時に2%(新たに契約した場合)

こんなケースだと、保険会社としては困る。

そりゃそうだ。新たに米国債を買えば2%のリターンがある状態で、1.5%の米国債などだれも買わないだろう。

「いやー、Aさんの持っている1.5%。今だと評価損が出ちゃうんですよねー」

ということで、その損失分は払戻金から引かれる。つまり損をすることになる。

これが市場調整価格の理屈で、一時払系の商品にはだいたいこれが適用される。

それ自体は仕方がないのだが、本商品の場合、その計算方法が他社より複雑で、単純に利率だけを比較するわけでもなく、更に「満期まであと何年か?」などの期間や、数値に+0.5%をしたり、何やら怪奇な計算式がある。

パッと一目では理解出来ず、パンフレットを見ても「詳細は約款を」と書いてあるだけ。

そして、その肝心の約款もなんだかえらい使いにくいシステム経由(何故かNTTデータの管理するシステム)で「検索コード」なるものを入れないと見れない。

色々探したが、結局見ることは出来なかった。

つーか、今の時代、約款くらい見つけやすいところにあげとけよ・・・

と内心イラっとするが、わざと見せないのか、何だか知らないが、そういうスタンスなのだろう。

と言うことで、解約時の払戻金の仕組みについては

「よくわからない」

という結論。

筆者のようなプロでも分からない仕組みを、高齢者相手に窓口で「ちゃんと説明している」のだろうから頭が下がる。

流石、プライマリー(初歩的な、原始的な)を名乗るだけはある。




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弱点3 銀行から入る必要あるか?

まあ、このような銀行窓販の商品全般に言えることだが、

これ、銀行で入る必要あるのか?

という気がしている。

相続対策だ、やれ保険金非課税だ、と色々切り口はあるのだろうが、安全な円資産をわざわざリスクを取って外貨にして、更に今は利率も低い。

そもそも銀行にお金を預けている人(主に高齢者)は、別に銀行に保険のコンサルティグを期待しているわけでもないだろう。

筆者が過去に相談を受けたケースでも、

・そもそも相続税が発生するほどの資産でもないのに、窓口で「このままでは相続税がかかる」と言われ、外貨保険に入っていた

・本人の生活費が困窮するほどの保険料を預けており、それを解約するとペナルティが発生してしまう

などの問題事例もあった。

はっきり言ってしまえば、騙される老人の方も悪いが「銀行」という信用力抜群の皮を被って荒いセールスをしている連中も質が悪い。

もちろん、顧客のことを考えて、ちゃんとやっている人間も多いだろうが、全般的には銀行窓販には問題が多いと思っている。

また、最大のデメリットは、担当者が2.3年でいなくなってしまうこと。

本商品も始め、銀行窓販で売られている商品はやたらと複雑なものが多いので、後から「言った、言わない」の問題になることも多い。

実際に解約したり、死亡して保険金が支払われる時には「売った本人はいない」のでは、こんな無責任なこともないだろう・・・

大きな資産を預けるのだから「銀行だから安心」などと安直に考えず、相続であれば税理士やFPなどに相談し、ちゃんと「裏を取ってから」決めた方が良い。

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