提供会社:PGF生命
商品名:米国ドル建終身保険(保険料円払込型)基本タイプ
円払込定額型 米国ドル建終身保険Neo(三菱UFJでの取扱の名称)
円ぴた終身US(みずほ・三井住友他での取扱の名称)
この保険の弱点はここだ!!
参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。
PGF生命が販売するドル建終身保険。その中でも「変化球」という感じの商品。
なお、同系列の商品で「介護タイプ」というものもある。 解説はコチラ
なお、本商品は銀行窓口専用の商品で、PGFは卸元という位置づけ。つまり「メーカー(作り手)」
それを実際に販売する銀行が「お店」
家電製品で例えれば、PGFがソニー、Pansonicなどで、銀行がビックカメラ、ヤマダ電機だと思うと分かりやすい。
なお、この商品はPGF側では「米国ドル建終身保険(保険料円払込型)基本タイプ」という名前だが、扱う銀行によっては、以下のように名前が変わる。
三菱UFJ銀行 … 円払込定額型 米国ドル建終身保険Neo
みずほ銀行、三井住友銀行他 … 円ぴた終身US
電化製品であれば、お店で名前が変わることなどないのだが、金融商品では間々あることで、何となく「その銀行のオリジナル商品」という感じを演出しているだけで、中身は全く一緒。
この商品の大きな特徴は
保険料が日本円で「一定」金額である。
ということ。
通常ドル建の終身保険は、保険料が「ドル」で決まっていることが多い。
例えば毎月の保険料を100ドルだとすると、円に換算した保険料はその時、その時のレートによって変動する。
1ドル=110円の時であれば、11,000円になるし、急に円高になって1ドル=80円などに下がれば、その月の保険料は8,000円まで下がる。
このように毎月の保険料が変わることが一般的なのだが、本商品では保険料は「一定金額の円」で固定される。
これは本商品が銀行の窓口で売られていること無縁ではない。
PGF生命は、ほとんどの方が「聞いたことがない」という保険会社だが、米系のプルデンシャルグループの保険会社で、主に銀行窓口で販売する商品の開発、供給をしている。
そのため、本商品も基本的には銀行の窓口(保険相談)でしか見ることはないのだが、このような相談窓口にはどうしても高齢者が来ることが多い。
そこで、ドル建の商品、しかも毎月保険料が変わるとなると、
「良く分からないが、怖い・・・」
というような反応が少なからずある。
この程度が怖いなら、本来ならドル建なんてやめておいた方が良いのだが、その恐怖心を上手く誤魔化したのが本商品の特徴
保険料が日本円で一定
ということである。
毎月保険料が一定なら安心ね!!
という感じだろ。
しかし、この「円で一定」を実現するために、本商品はとんでもなく複雑な「仕組み」をとっているし、別に為替リスクがなくなったわけでもない。
このあたりを解説していきたい。
既に一つは冒頭で説明したが、本商品の特徴は大きく2つある。
1 保険料が日本円で「一定」である
2 為替の影響により、将来の保険金が増減する
1に関しては、保険料は日本円で一定ではあるが、その裏側の処理としては、
「その月のレートで買えるだけのドルを買う」
ということをしている。
例えば、保険料が1万円/月だとする。
ある月のレートは円安で1ドル=120円であれば、
1万円÷120円 = 83.33ドル
を購入する。
そして別の月には急な円高となり、1ドル=80円。この場合は
1万円÷80円 = 125ドル
となる。
要はドルが高ければ(円安)買えるドルの量が減り、逆にドルが安ければ(円高)買えるドルの量が増えるということ。
保険料は毎月一定だが、為替によって、購入するドルの量は減るので、確実に為替リスクはある。
2 為替の影響により、将来の保険金が増減する
この商品は何とも珍しいことに、将来の保険金が増減する。
その理由は1で述べた「保険料が円で一定」ということに大いに関係している。
これを実現するために、本商品では
基準為替レート
という、この商品独自のレートが出てくる。
この基準為替レートは「仮レート」とでも呼ぶ方が分かりやすいので、ここではそのように呼びたい。
この仮レートを理解するためには、まず終身保険における保険料と保険金の関係について知る必要がある。
保険会社は、契約者が払ってくれる保険料の総額によって、保険金を決める。
例えばAさんは毎月300ドル、それを10年間支払うとする。
そうなると最終的に支払う総支払保険料は36,000ドルとなる(300ドル×12か月×10年)
これに対して、保険会社は自社の計算ルールに従って、死亡時の保険金を算出する。
ここでは、その保険金を7万ドル(日本円で約770万円)だとしよう。
注:実際には性別、年齢などによってことなる。あくまで参考例。
契約者と保険会社の関係を表すと、
契約者 10年間で3,6000ドルを払います
保険会社 死亡時には7万ドルをお支払いします
こういう契約になる。
しかし、本商品は「毎月決まった金額(日本円)」で、その月のレートで買えるだけのドルを購入する。ということを繰り返すので、
最終的にどのくらいのドルが買えるか分からない
のである。
そのため、このままでは保険金を決められない。
そこで利用するのが先ほどの基準為替レート、「仮レート」である。
下記の表を使い(パンフレットより抜粋)この商品に加入した段階での為替レートから+20~25円程度高いレートを使って保険金を計算する。
例えば、加入時のレートが109円だったとすると、上の表では130円が仮レートになる。
例えば月3万円で毎月1ドル=130円で購入すれば230.77ドルとなる。
これを10年間続けると、27692.40ドルとなる。
これが「契約期間中、ずっと続く」と仮定し、総支払ドルを決め、それに対応した保険金を決める。
先ほどの例のように、ここでは保険会社がその総額から「保険金は5万ドル(日本円で550万円)」とした。
なお、繰り返すが、これはあくまで「仮」の話で、保険金を算出するためだけに、こんな面倒な処理をしている。
実際のレートは月々変動し、契約者はそれを毎月購入していく。
仮レートは130円だが、実際のところは、1ドル=110円、105円、116円など、「130円以下」で買えることの方が多いだろう。
そうなると、ある段階で先ほどの仮レートで計算した27692.40ドルを上回ってしまう。
保険会社としては、「5万ドルの保険金のために必要」な27692.40ドルを積立てくれれば、何のリスクもない。
それ以上に上積みしてくれるのだから、
「では保険金を増やします by PGF生命」
ということになる。
そのため、本商品は契約の途中でも保険金が増えることがある。
逆に1ドル=150円などの「超円安」が続いた場合、買えるドルの量は少ない。
本来1ドル=130円なら積み上がっているはずの27692.40ドルに届かない。
その場合は、
「申し訳ないですが、お支払いが足りないので、保険金を減らさせて頂きます。」
ということになる。
これが保険金が増減する理由。
但し、実際には仮レートは+20~25円と相当割高にしているので、毎月購入するドルのレートがそこまで高騰することは、まずないだろう。(一瞬はあっても、平均で130円を超えるような事態)
そのため、ほとんどの場合、保険金は多少は増えるようになると思う。
パンフレットにもそのように書いてあることから、PGF側も保険金を増やせる自信があるのだろう。
まあ、これだけ高いレートで保険金を計算していれば、当然と言えば当然だが。
しかし、何とも奇怪な、と言うか、複雑な商品である。
銀行窓口の販売員も、主な顧客となる高齢者にこれを説明しきれるのだろうか?
正直、私なら自信はない・・・
参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。
各社の外貨建終身保険の☆評価一覧は、コチラ
弱点1 支払う保険料に対して、保険金が少ない
これは「仮レート」のせい。
もの凄い高いレートを前提に計算するので、総支払保険料(ドル)が少なくなってしまい、結果、保険金も少なくなる。
構造的な弱点。
ちなみに、今、これを読んで「はあ?意味が分からない」と思うなら、前項をもう一度ちゃんと読んで欲しい。
それでも分からないなら、入るべきではない。
毎月「円で一定」というだけで、ここまで複雑な商品に入らなくても、もっとシンプルなドル建終身は他にいくらでもある。
弱点2 銀行から入る必要があるか?
本商品は「複雑なドル建終身保険」
これを銀行の窓口で入る必然性がない。
銀行の担当者は2,3年おきに必ず変わる。
こんな複雑な商品を販売しても、数年後、保険金が増える時にも、減る時にも、販売した担当者は既にいない。
餅は餅屋ではないが、保険会社の担当者で経験豊富、かつずっとフォローしてくれる人から入った方が良いのではないか?
弱点3 為替リスクがないわけではない。
この商品は毎月の保険料が変わらないので、何となく為替リスクがヘッジされているような「印象」を受ける。
しかし、実際には為替リスクの影響はモロに受ける。
円安(1ドル130円)などになれば、毎月同じ保険料を支払っているのに「少ないドル」しか買えない。
それはすなわち将来貯まるドルの量が減る、ということ。
また、保険料が為替に連動して「変動する」場合であれば、毎月引かれる保険料が代わり、
「なんか随分、円安がすすんだなぁ」
とか、逆に
「急激に円高になったな」
などと、為替をより身近に感じることが出来る。
しかし、本商品の場合、良くも悪くも保険料が一定なので、そのようなことを考えるきっかけがない。
普段何も心配しなくて良い、と言えば聞こえは良いが、逆の言い方をすれば不利な状況(円安)でも、気づくきっかけがない。とも言える。
為替リスクがなくなるわけではないので、変な安心感は禁物である。
弱点4 保険料支払時の為替手数料が高い
ドルを購入する時には「為替手数料」というものがかかる。
1ドルあたり〇円という形で表記されるが、本商品の手数料は1ドル0.5円。
まあ、これは高い方ではある。
他社では0.25円というところが多く、中には0.01円(オリックス生命)というところもある。
為替手数料などは、何のリターンも生まないものなので、安いに越したことはないだろう。
些細ではあるが「他社より高い」という点から弱点とした。
比較した方が良い商品
オリックス生命 米国ドル建終身保険candle(キャンドル) ★★★☆☆
ジブラルタ生命 米国ドル建終身保険&米国ドル建終身保険(低解約返戻金型) ★★★★☆
メットライフ生命 USドル建終身保険 ドルスマートS ★★★★☆
参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。
各社の外貨建終身保険の☆評価一覧は、コチラ