ドル?株?介護を付けた方が良い? 一時払保険の賢い選び方総論

その「保険」の弱点を知ってますか? トップページはコチラ

保険の商品に「一時払」という分野がある。

多くの保険会社から販売されており、専属の保険代理店だけでなく、銀行や証券会社の窓口などでも扱っているため、特に顧客の資産状況を握っている銀行などから話を聞くことが多いかもしれない。

ただ、この手の商品。

後から

「そんなリスクがあるとは聞いていない!!」

「元本保障のはずが、知らないうちに損をした!!」

など、クレームになることも多く、金融庁も度々問題にしている。

だが「騙された!!」と騒いだところで、正直なところ、どっちもどっち。

無知につけ込む金融機関も悪いが、良い歳こいて「無知」でいることも悪い。

そこで本稿では、そんな目に合わないためにも、一時払系の商品の「賢い選び方」について解説をしていきたい。

一時払に加入するなら、是非、これで基礎知識を付けてから検討して頂きたい。

なお、本稿。書き終えてみれば、全文で6600文字という長文になってしまった。

これは一般的なネットニュースの3本分程度であり、最後まで読むには骨が折れるかもしれないが、大事なお金を預けるのである。

せめて、これくらいは読み切って欲しい。

では始めたい。

まず、一時払を選ぶ上では、3つのポイントがある。

色々な商品があるが、この3つさえ抑えておけば、ほぼ全体そうは理解出来るはず。

1 「何」で運用するのか?

2 手数料はどの程度かかるのか?

3 どんな時に保険金を払うのか?支払条件(保障内容)は何か?

一つずつ理解していこう。




ポイント1 「何」で運用するのか?

まずは、1「何で運用するのか?」ということだが、一時払系の商品には、ざっと挙げてみても、以下のような投資先がある。

ここでは筆者が「リスクが高い」と思う順に4段階に整理してみた。

・リスク 4(高い):株連動型
商品名の例:変額個人年金、一時払変額終身保険など

・リスク 3(まあまあ高い):株連動&ドル混合型
商品名の例:通貨選択型変額終身保険など

・リスク 2(それなり):外貨建(米ドル、豪ドル、ユーロなど)
商品名の例:米国ドル建終身保険、積立利率変動型個人年金(豪ドル建)など

・リスク 1(ほとんどない):円建 
商品名の例:一時払終身保険、積立利率変動型一時払年金など

現在、各社から販売されている商品は、だいたいこの4つの分野のどれかに該当する。

上から見ていこう。

・リスク 4(高い):株連動型

まず、リスク4の株連動型だが、保険業界では「変額」と呼ばれる。

保険会社側が色々なファンドを用意し、契約者は何に投資するかを自分で決める。

結果は自己責任で、増えることもあれば減ることもある。

額が変わるから変額。

なお、選択肢は保険会社によってまちまちで、どの商品でも「世界株式(主に米国)」、「日本株式」、「世界債権(主に米国債)」、「日本国債」このあたりはラインナップに入っているが、あとはその会社独自の特色で、「REIT(不動産投資信託)」や「複合型(株と債券のミックス)」などが用意されていることもある。

これは実質的には投資信託であるので、当然、リスクは高いし、筆者自身はあまりお勧めしていない。

というのも、

「だったら自分でやれば良いじゃん」

ということ。

わざわざ保険会社を通じて投資信託を買わなくても、ネット証券などで自分で買えば良い。

その方が手数料も低いし、売り買いも自由なので、下がればすぐ売れるし、上がりそうなら買い増しも出来る。

「保険」にする意味がない。

但し、唯一保険のメリットがあるとすれば、

「死んだ時だけは、元本が保証される」

ということだろう。

例えば1,000万円預けて、選んだファンドがボロボロだったとする。10年後、解約返戻金は800万円に目減りしてしまった(これくらいは結構ある)

だが、こんな状態でも「死ねば」1,000万円は受け取れる。

そのため、高齢者などが余剰資金を

「損をしたら、最悪自分が死んだ時に『保険金』として、妻や子供に遺せば良いや」

という考えでやるのであれば「あり」だと思う。

証券会社経由で、自分で買った投資信託の大損は誰も補填してくれないが、一応は保険であれば、保険会社が「死んだ時のみ」損害を補填してくれるのだから。

ただ、その分の手数料(保険料)は事前にどこかで取られているので、別に得をしているわけではない。

このあたりは、2の「手数料はどの程度かかるのか?」で触れる。

・リスク 3(まあまあ高い):株連動&ドル混合型
・リスク 2(それなり):外貨建(米ドル、豪ドル、ユーロなど)

リスク3の「株連動&ドル混合型」は、先にリスク2の「外貨建」から理解した方が早いので、話が前後するが、まずはそちらから解説したい。

外貨建は、分りやすい。




預けたお金を、米ドルや豪ドル、ユーロなどに換えて運用をしていく。

商品によって、

・利率固定型

・利率変動型

がある。

固定型は、加入時に「ずっと〇%で運用していきますよ」と約束されているタイプで、変動型は「まずは〇%で運用を開始しますが、今後の情勢によって上下しますよ」といういう意味。

ただ変動型でも「下限」は「最低でも〇%は保障する」と決まっていることが多い。

どちらが良いか?という点については、その方の性格にもよるので、一概には言えないが、現在、コロナ禍により各国の金利が長らく低い水準にあるので、今後は上がる可能性が高い。

そうなれば、利率変動型は市場に連動して「上がる」ので(リアルタイムではないが、ある程度の時間差で)、筆者は利率変動型の方が良いと思う。

但し、長い目で見れば、再び下がる可能性もある。

そのような上がり、下がりに一喜一憂したくない、というような方は、固定型を選択した方が良い。

これらの商品には当然ながら「為替リスク」がある。

株ほどにはダイナミックに動かないが、それでも10%くらいはすぐに上がったり、下がったりするので、これはリスクではある。

とは言え、筆者はさほどのリスクではないと思っている。

多少、乱高下しても、最終的にはそれなりの水準に戻るのが為替であり、逆に言えば為替程度のリスクが取れないのであれば、運用のことなどは考えない方が良い。

増えも減りもしない銀行に入れっぱなしか、リスクはないが、ほとんどリターンもない国債などを買うしかないだろう。

なお、別にこれが「悪い」と言っているわけではない。

運用は結果だけでなく、その過程の精神衛生も重要であり、必要以上にハラハラするのは身体に宜しくない。

「自分はそういう性格なんだ」

そう知ることが、運用の第一歩でもあるので、為替リスクが怖いと思うのであれば、リターンはなくとも安全なものに投資した方が良い。

以上がリスク2の外貨建。

話はリスク3の「株連動&ドル混合型」に戻る。

これはリスク4の変額と、リスク2の外貨建をミックス型で、例えば預けたお金の20%は株に連動した変額で運用するが、残り80%は利率が固定されている外貨で運用する、と言ったものである。

メリットとしては、80%の外貨建で「それなりには増える」ということ。

だいたい10年から15年くらいで「元本は回復します」ということを謳っている商品が多い。

要は、外国通貨&固定金利で運用している80%部分が、年1.5%~2%程度で10年から15年ほど運用された結果、100%まで戻るので、元本保証的な機能があり、20%の変額部分は上乗せの「お楽しみ」と言った感じ。

但し、元本保証と言っても、あくまで「ドル建ベースで」ということで、円建ではない。

例えば、1,000万円を預けて、1ドル110円で替えた場合、9091ドルとなるが、10~15年後に保障されるのは、この9091ドル。

これがその時に、日本円でいくらになるか?ということは、その時に為替レートによっても変わる。

1ドル110円であれば、1,000万円だし、120円なら1090万円で得をする。しかし、1ドル100円であれば909万円となり損をする。

円建では「元本保障」されているかどうかは、その時にならないと分からないので要注意。

元本保障&株式の上昇メリットも感じられる

という点で、ウケは良いようだが、なんてことはない。

変額と外貨建をミックスしているだけの「コーヒー牛乳」のような商品。

コーヒー(変額)と牛乳(外貨建)を別個に買っても同じ効果が得られるので、特にものすごいメリットがあるわけでもない中途半端な商品だが、その中途半端さ

「あれもこれもちょっとずつ」

というのが日本人には受けるようだ。

なお、諸外国にはこのような商品はほとんどない。

日本でだけ独自に進化した分野。




・リスク 1(ほとんどない):円建 

そして最後。

もっともリスクの低い円建商品だが、これはほとんど一時払い終身という形で販売されている。

投資先は日本国債(保険会社が契約者の代わりに買っている)で、ご存知の通り、今はマイナス金利政策中なので、運用益はほとんどない。

そのため、「999万円あずけて、死んだら1,000万円」というようなものが多い。

要は、儲かりもしないが、損もしない。

単に貯金を保険にしただけ。というもの。

一番安全ではあるが、何のメリットもない。

それでも一定程度は売れている。何故か?

基本的には相続対策である。

遺産を保険金として受取る場合、「相続人×500万円まで」は非課税になる「保険金非課税枠」という制度がある。

そのため、銀行の預金で遺すより「保険化」しておいた方が、相続税が安くなる。

例えば、妻と子供2人、合計3人の相続人がいれば、1500万円(500万円×3人)までは非課税なので、この範囲までは入っておいた方が良いのである。

こうすれば1500万円分を非課税に出来るため、メリットが大きい。

だが、本商品。最近ではあまり見かけなくなった。

はっきり言えば、保険会社側のメリットがないのである。

金利があまりに低すぎて、お金を預かっても保険会社側の利益がほとんど出ない。

それどころか、999万円預かって1,000万円返していたのでは、それに関わるコスト(販売手数料や人件費など)の方が高くついてしまい赤字になってしまう。

そのため、最近では販売を停止している会社が増えている。

以上、「何で運用するか?」という点について、リスクの高さ順に解説した。

では次に、手数料について見てみよう。

ポイント2 手数料はどの程度かかるのか?

これは結構重要なポイント。

一時払系の保険には、なんやかんやと手数料が発生する。

大きく分けて、2つある。

・初期手数料

・運用中の手数料

まず、初期手数料。

預けたお金の◯%という形で徴収される。

例えば、初期手数料が3%の場合、1,000万円を預けても、その段階で30万円(3%)が引かれるので、運用は970万円でスタートすることになる。

よういドンした瞬間からマイナス。

あり得ないだろう。

そのため、筆者としては、初期手数料がかかるものは、原則「ないな」と思っている。

次に運用中の手数料だが、正直言うと、これはあまり追求しないほうが良い。

と言うか、ちゃんと調べても、よく分からない。

その根本的な理由が「積立利率(もしくは予定利率)」

最近では、積立利率とは別に「実質利回り」を提示している商品も出てきているが、全てがそうなっているわけではなく、未だに積立利率表示の商品も多い。

積立利率と実質利回りの「違い」については、以下のコラムでも解説しているが、要は積立利率がそのまま利回りになるわけではない。

参考コラム:同じ3%でも何故違う?「超」わかりやすい!!予定利率と利回りの違い!!

要は、積立利率とは、支払った保険料から、毎年一定の費用が引かれた後の利率のことで、元本全額から「ちょっと引いた金額」が運用されているため、「利回り」よりは落ちる。

また、この「一定の費用(ちょっとだけ引かれるお金)」も、保険会社ごと、商品ごとに異なり、原則非開示となっているため、外部からは分からない。

筆者のような保険のプロであれば、設計書とにらめっこをして手計算すれば、何となく「どれくらい引かれてるか」は分かるのだが、素人がそれをやるのは難しいだろう。(そんなことが出来るスキルがあるなら、保険会社任せにせずに自分で運用した方が良い)

話をまとめると、

「初期費用とか、積立利率とか、色々なことばを使って煙にまいているが、契約者のお金を少しづつ抜いている」

ということ。

だが、これが保険会社の利益になるのだから、「お任せ」している以上、仕方がないだろう。

誰もタダで運用などしてくれないのだから。

なので、結論から言えば、あまり気にしてもしょうがない。

結果、増えれば良いのだから、やってみるしかない。

但し、冒頭でも述べた「初期費用を取る商品」だけはやめた方が良いかな。というところ。

また、ほぼ同じような商品同士で、どちらも「実質利回り」を提示しているなら、当然、高い方が良い。

これくらいの簡単なポイントだけ抑えておけば「明らかにダメな商品」を掴まずに済む。

なお、一時払系の商品のほとんどで、解約時に市場調整価格というものが発生する。

これは手数料というよりは、仕組み上仕方のないものでもあるのだが、これも一時払系の商品に加入するのであれば、覚悟しておく必要がある。

手数料とは少々違うが、市場調整価格については以下のページでまとめてあるので、ご参照頂きたい。

参考コラム:市場価格調整とは?




ポイント3 どんな時に払うのか?支払条件(保障内容)は何か?

かなり長くなったが、いよいよ最後。

商品の支払条件、つまり保障内容だ。

これも、大別すると以下の4つがある。

・死亡型

・満期/死亡型

・ターゲット/死亡型

・介護/認知症/死亡型

「死亡型」はシンプル。死んだら払う。以上。

保険の分類としては、終身保険であり、保険金は死亡時にのみ払う。途中で解約した場合には解約返戻金が発生する。

次の「満期/死亡型」は、例えば10年間などの一定期間の運用期間が設けられ、その途中で死亡した場合か、満期を迎えた場合に保険金を返す。

「ターゲット/死亡型」は、「満期/死亡型」の変化球的なもので、原則は死亡時、もしくは満期を迎えた時に保険金を支払うのだが、運用中にも「ターゲット」という概念がある。

実際の例を見てみよう。

例えば、変額(株)と外貨のミックス型で運用する商品に、1,000万円を預けたとする。

変額部分は世界の株式マーケットと連動するので、日々、その価値が変わる。

外貨の方も、為替や一定の利率で運用されていくので、こちらも日々価値が変動する。

ターゲット型の場合、契約者は契約時に「ターゲット」というものを設ける。

110%、120%、130%、200%など、設けられる数値は保険会社ごとに違うのだが、ある契約者は

「1,000万円が110%の1,100万円になれば御の字」

と考えていたとしよう。

先程、述べたように変額部分も外貨部分も日々価値が変わるが、ある日、株式市場が高騰し、同時に突発的に円安(1ドル130円など)が進んだとしよう。

そんな時、

「今、全てを日本円に戻せば(換金すれば)1,100万円になる」

という状況であれば、これは契約者が指定した「110%にして欲しい」という要望を満たしていることになるだろう。

この場面で、強制的に全てを日本円に戻し、運用を停止してしまう。

以後は、1,100万円が保険会社側で保有され、契約者の希望のタイミングで解約出来る。(1,100万円が増えることはない)

これがターゲット機能。

この機能が搭載されている商品では、途中で死亡した場合、満期を迎えた場合以外に「ターゲットに達した時」も保険金が払われることになる。

そして最後の「介護/認知症/死亡型」は、死亡時だけでなく、要介護2に該当した場合や、認知症と診断された場合にも、保険金を「払う」商品。

こちらは資産運用より、老後に心配な介護、認知症をカバーしたもので、自分が預けた一時金を

「それまで(介護が必要になるまで)に多少は増やしておきたい」

というニーズを叶えるものである。

但し、保険会社としては、認知症、要介護という条件でも「預かったお金を返さないといけない」ため、死亡だけで返す、という条件に比べると、全体的に運用期間が短期になり旨味がなくなる。(運用期間が長い方が、毎年の運用益の中から保険会社が手数料を抜けるため)

そのため、死亡だけの商品に比べると、利率が下がる傾向がある。

保障重視のため、運用面を犠牲にしているということになる。

以上、長々と書いてきたが、これでも相当「はしょって」いる。

一時払系の商品はそれくらい複雑怪奇なものが多く、素人が詳細までを全て理解するのは難しい。

一応、当サイトで高評価の一時払系商品を以下の列記しておくので、各商品の特徴などは、それぞろの稿をお読み頂きたい。

ドル建

ジブラルタ生命 一時払米国ドル建終身保険 ★★★☆☆

PGF生命 米国ドル建介護終身保険Neo ★★★☆☆
別名:ぬくもり介護US、悠々介護終身US、米国ドル建一時払介護終身PG、介護バリューUS

メットライフ生命 サニーガーデンEX ★★★☆☆

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