この保険の弱点はここだ!オリックス生命「米ドル建終身保険ブライト」

提供会社:オリックス生命

商品名:米ドル建終身保険ブライト

この保険の弱点はここだ!!

参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

商品名としては「ブライト」という名前でブランディングされているが、基本的には同社の米ドル終身保険「ユーエス・ライズ」がベースとなっている商品。

米ドル建終身保険ユーエス・ライズ ★★★☆☆

ユーエス・ライズにオプションの「米国ドル建特定疾病障害介護終身保険特約」というものを上乗せすることで「ブライト」となる仕組み。

商品としては悪くないが、細々とした弱点があるため星3つとした。

通常、終身保険では死亡と高度障害が支払い対象となるが「米国ドル建特定疾病障害介護終身保険特約」を付けることで、以下の該当した時にも保険金を受け取れる。

・がん      診断のみ

・急性心筋梗塞  手術 or 60日以上の労働制限

・脳卒中     手術 or 60日以上の後遺障害

・障害等級1,2,3級

・要介護2以上 or 約款所定の介護状態

なお、これを付けても、本条件で保険金が支払わるのは「特約部分のみ」

例えばベース部分のユーエス・ライズを5万ドル、そこに米国ドル建特定疾病障害介護終身保険特約(ブライト)を5万ドルと追加した場合、

死亡 ユーエス・ライズ 5万ドル+ブライト 5万ドル 合計10万ドル

高度障害 死亡と同じ10万ドル

の保険金を受け取れるが、先に挙げたがんや脳卒中、障害等級3級以上などの場合には、ユーエス・ライズ側は支払い対象とはならない。

ブライト部分のみが対象となるので、受け取れるのは5万ドルとなる。

なお、この保険金は「一回しか」受け取れない。

どれかに該当して保険金を受け取れば、その後、契約は消滅し、その後、死亡したり別の病気になっても保険金が支払われることはない。(要注意ポイント)

本商品の背景には「なかなか死ねない」という現代の医療事情がある。

例えば脳卒中になった場合、昔なら死んでしまったのが、今の医療技術では「助かってしまう」ということが往々にある。

助かること自体は悪いことではないのだが、後遺障害が残ってしまって、元気だった頃のように仕事が出来なかったりすれば収入的には厳しい。

がんや、急性心筋梗塞、障害や介護などでも同じことが言える。

つまりは「死ねない時代の長患い」が怖いので、死亡だけでなく、その手前の「長患い」の対策をしたいというニーズを受けて本商品のようなものが出てきている。

この分野の商品展開はジブラルタ生命が最も早く、ソニー生命が2番手という位置づけだった。

オリックスはそのような先行している商品を研究して、本商品を出してきているので、わりと競争力はある。

本商品の前シリーズであるキャンドルワイド(既に販売停止、詳細は以下参照)では、利率でライバル(ジブラルタ、ソニー)などに負けていた印象だが、ブランドを改めた「ブライト」ではそれらに追いつき、年齢や性別によっては追い越している。

米国ドル建終身保険candle wide(キャンドルワイド) ★★★☆☆(販売停止)

このような「長患い対策」としては、別の保険商品として就業不能保険もあるが、これらは基本的に掛け捨てなので「何もなければ何もない(損)」となり、そこに抵抗がある方も多い。

その点、本商品のような貯蓄型であれば「何もなくてもお金は貯まる」という点で好まれるのかもしれない。(このあたりは後述の「この保険の弱点、こう考えろ!!」の後半にて述べる)

以上、商品概要。




弱点1 ドル支払が出来ないのかよ!!

外貨建の商品には、保険料の支払い方法として

・毎月のレートで日本円に換算して引き落とし

・米ドルで直接支払う

という2つの選択肢があり、ほとんどの会社でどちらかを選ぶことが出来る。

だが、本商品では「円建」しか選べない。

これは結構痛い。

例えば1ドル150円などの「超円安」の時、仮に手元にドルの現物(4,5年前に買った1ドル120円くらいのドル)があるなら、そちらで払いたい。

もちろんドルの現物などを持っている人は多くはないので、ほとんどの人には関係のない話ではあるのだが、ドル支払いについて「やれるけどやらない」のと、「やれない」のでは話が違う。

また、ドル建保険に加入したことで、為替の動きに敏感になり1ドル120円を切った時に

「将来の保険料の支払いのために、今のうちの安いドルをまとめ買いしておこうか」

と思う方もいるかもしれない。

数年後に1ドル150円などの円安に振れた時に、この時のドルが防衛策になるからだ。

だが、本商品ではそのようなことは一切出来ない。

ドル支払くらい取り扱えば良いのに・・・・

とは思うが、このあたりは

「90%の契約者に関係のない余計なサービスは提供しない(その分業務コストがかさむから。注:昔オリックス生命の関係者から聞いた話)」

という合理的な社風のオリックス生命らしい。

弱点2 年金受取は「円」のみ

これも嫌。

本商品を解約した場合、一時金だけでなく、年金受取にすることが出来る。

例えば65歳になった時に7万ドルの解約返戻金があったとしよう。

一時金で受け取れば7万ドルだが、これを年金方式にすれば

7,500ドル×10年 = 計7.5万ドル

というように「増える」
注:上記はあくまで一例。実際にどの程度増えるのかは、年金払いに変更したタイミングによっても異なる。

保険会社としては、解約返戻金を年金払いにしてもらえば手元にお金を持っていられる。

その分、運用が出来るので、その運用益の一部を契約者に返還することで、お互いにメリットがあるわけだ。

だが、本商品では年金払を選ぶと、その年金は「円」でしか受け取れない。

対して他社では「ドル」で受け取れることも出来る。

これも先ほどと似たような話だが、1ドル150円などの円安の時には「円」で受け取っても良いが、1ドル100円などの円高の時には、出来れば「ドル」で受け取りたい。

わざわざ安いレートで変換しなくても、手元にドルを持っておいて、1ドル140円、150円となった時に自分で替えれば良いからだ。

本商品ではこのような場面でも「円固定」というルールがあるので、「うーん、何だかなぁ」という気がしてしまう。

小技であるが、後になって「えっ!!ドルで受け取れないの?」と気付くショックは小さくはないので、注意喚起の意味も込めて、ここで触れておきたい。

この商品の弱点、こう考えろ!!(解決策)

既に述べた通り、本商品のライバルはジブラルタやソニーなどだろう。

比較すると、返戻率、保険料などでなかなか良い勝負になる。

手元の資料(2023年6月時点)では、ジブラルタとは年齢、性別によって勝ったり、負けたり、ソニーにはどの年齢帯でも勝っている場面が多い。

商品としては悪くないので、前述の弱点について、

「どうせドル支払い、ドル受取りなんてやらない」

というような面倒臭がりの方であれば、保険料、返戻率で優位性があるなら選択しても良いだろう。

筆者の実感としても、実際にドル支払い、ドル受取りなどをこまめに変更するような方は、20人中1人くらいしかない。

そのため、多くの人にとっては「関係ない話」かもしれない。

なお、本商品の特徴である「3大疾病や障害、介護でも保険金が受け取れる」という点について、少々、筆者の私見を述べたい。

終身保険とは、本来、死亡と高度障害だけが対象であるが、昨今、

三大疾病、障害、介護でも払います!!

と謳う、「拡張版終身保険」が人気で、本商品もその一角ということになる。

もちろん、死亡だけより「それ以外」でも支払われるのだが、そっちの方が良いだろう。

だが注意して欲しいのは、その分、通常の終身保険より保険料も高く、かつ返戻率も低下するということだ。

保障内容は良くなるが、数字(保険料、返戻率)は悪くなる。




これをどう考えるべきか?

具体的に比較してみよう。

以下はオリックスのサイトに掲載してある「契約例」を抜粋したもの。

・ユーエス・ライズ
30歳 男性 10万ドル 65歳払込
保険料:109.20ドル
総支払保険料:4万5,864ドル
75歳時点の返戻率:161.5% (74,109ドル)

・ブライト
30歳 男性 5万ドル+5万ドル(ブライト部分) 65歳払込
保険料:140.55ドル
総支払保険料:5万9,031ドル
75歳時点返戻率 134.1%(79,179.50ドル)

どちらも30歳 男性、65歳払込という同条件。

まず、保障面での「違い」はユーエス・ライズは死亡/高度障害だけが対象だが、ブライトでは5万ドル部分(米国ドル建特定疾病障害介護終身保険特約)では、3大疾病、障害、介護で条件に該当した場合に保険金を受け取れる。

次にお金の話。

ブライトは保障内容が良い分、毎月の保険料が31ドルほど高い。

その差の総額は、払込完了の65歳までに1万3,167ドルとなる。

1ドル130円で換算すると、約170万円ほど。

話を整理する。

3大疾病、障害、介護に該当した時に5万ドルを受け取るために1万3,167ドル、約170万円を「余計」に払う。

これが本商品の核心と言える。

で、その価値があるか?

それは分からない。

実際にこの条件に該当して保険金を受け取れば「入っておいて良かった・・・」となるし、何にも該当せずに亡くなれば「無駄な金を払った」ということになる。

これが肝かもしれない。

実は本商品「がんなどの三大疾病や障害や介護でも受け取れる」というのが売りではあるが、一生涯を通して受け取れるお金はどちらも一緒。

通常の終身保険(ユーエス・ライズ)でも、いつかは亡くなるので、いつかは10万ドルが受け取れる。

ブライトも何かしらの支払い条件に該当すれば「先に保険金」を受け取れるのだが、それでも最終的には10万ドルでしかない。

つまり「先に5万ドルもらうため」の手数料として1万3,167ドルを支払うということだ。

筆者自身は「ちょっと高いかな」という印象を持っている。

もちろん若くしてがんになった、とか、40代、50代で脳卒中になり後遺障害が残った、など「保険料を支払っている間」に支払い対象となった場合、それほどの保険料を払っていないのに5万ドルを受け取れるので「超お得」ではあるが、実際にはそのような例は多くはない。

だいたいが65歳を超えてからこのような病気になったり、介護などに該当するので、ほとんどの場合、この保険が役に立つのは老後である。

ここで再度、先ほどの数字を見てみよう。

・ユーエス・ライズ
30歳 男性 10万ドル 65歳払込
保険料:109.20ドル
総支払保険料:4万5,864ドル
75歳時点の返戻率:161.5% (74,109ドル)

・ブライト
30歳 男性 5万ドル+5万ドル(ブライト部分) 65歳払込
保険料:140.55ドル
総支払保険料:5万9,031ドル
75歳時点返戻率 134.1%(79,179.50ドル)

例えば75歳の時に、がんや脳卒中、介護などで「お金が必要!!」となった場合、ブライトは5万ドルが受け取れる。

だが、それまでに5万9,031ドル支払っている。

残りの5万ドルは死亡後にしか受け取れないので、つまりこの時点では

自分が支払った5万9,031ドルの中から5万ドルを返してもらっただけ

とも言える。

しかし、その後、5万ドルの死亡保障が残るので、総受取は10万どる。

総支払は5万9,031ドルだから収支はプラス4.1万ドルとなる。

では、ただの終身保険であるユーエス・ライズの方はどうか?

75歳で大病をした、もしくは介護になった、さて困った。

この時には保険を「一部解約」しても良い。

この時点での収支は4万5,864ドル支払って、返戻金は74,109ドル。

例えば半分だけ解約したとしよう。

全体の返戻金7万4,109ドルの半分が戻ってくる。

3万7,055ドル。

で、その後死亡したら5万ドルなので、受取総額は8万7,055ドルとなる。

総支払は4万5,864ドルなので、収支はプラス4.1万ドル。

つまり、最終的にはどちらも「大差ない」ということになる。

であるならば、負担が少ない(保険料が安い)ユーエス・ライズでも良いのかな?という気もしなくはない。

だが、先ほども述べた通り、これはあくまで「老後に3大疾病や介護が発生すれば」という前提の話で、発生確率は高いが絶対にそうなるわけではない。

逆に確率は低いが、若いうちにがんになったり、脳卒中で働けないなったりする方もいるので、そのような方にはブライトはかなり有効だろう。

長々と述べてきたわりには、絶対的な解が提示できずに申し訳ないが、検討の参考として欲しい。

なお、本商品を「就業不能保険の代わり」として売る販売トークが流行っているようだが、それはちょっと違う。

その理由はズバリ「金額が少ない」から。

一般的な就業不能保険であれば、働けなくなった時に毎月10万円が65歳まで、というような条件で保険金を受け取れる。

仮に45歳で就業不能(脳卒中など)になった場合、受け取れる総額は

10万円/月 ✕ 12ヶ月 ✕ 20年 = 2,400万円

となり、これがあるのとないのでは大きな違いだろう。

対して、本商品のような終身保険の場合、せいぜい入っていても5万ドルとか10万ドル程度だろう。

結局のところ貯蓄系の商品であるので、支払った保険料の割に保障金額が少ないのである。

そのため、これだけをもって「就業不能をカバー出来る」と考えるのは危険だと思う。

しっかりと対策するのであれば、掛け捨ての就業不能を勧める。




参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

口コミ(販売側から)

なし

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なし

比較した方が良い商品

ジブラルタ生命 米国ドル建特定疾病保障終身保険(低解約返戻金型) ★★★★☆

ソニー生命 リビング・ベネフィット20(米ドル建生活保障・終身型) ★★★★☆

どちらもドル終身保険をベースにして、更に3大疾病などでも保険金が受け取れる商品。

このあたりの比較は保険ショップなどで設計書をもらう方が早い。

編集後記

約款