年金保険に加入する場合、
・支払った金額(保険料総額)
と、
・受け取れる金額(受取年金額)
の比較をする方が多いと思います。
例えば30歳の男性が、毎月1万円、それを65歳まで支払った場合、総支払保険料は
1万円×12ヶ月×35年(30歳~65歳)=420万円
となります。
対して、65歳から受け取れる年金は年間44万円が10年間で、その総額は440万円(44万円×10年)
返戻率(利回り)としては104.7%ほどです。
会社によって多少の差はありますが、昨今の低金利の影響で、各社の年金保険の利回りは、おおよそこんなところでしょう。
随分と長い間、保険料を積立てたわりには、リターンは少なく、投資としては「イマイチ」ですね。
しかし、年金保険のメリットはこのような「商品自体の利回り」より、毎年の還付金にあります。
本稿では、その還付金を効率的に得るための3つのルールを解説致します。
個人年金保険料控除の仕組み
年金保険で支払った保険料は「個人年金保険料控除」に入れることが出来るので、その年の収入から最大4万円が控除され、その分の還付金が戻ってきます。
控除出来る金額は以下の計算式で求めますが、年金保険の場合、ほぼほぼ年間8万円以上払っていることが多いので、ほとんどの方の控除額は最大の「4万円」になります。
注:年間8万円以上支払った場合、4万円が控除可能で、これがマックス。
控除と還付金について知りたい方はコチラをご参照下さい。
一から解説、控除って?何で保険で還付金が戻ってくる?
なお、4万円を控除した場合、実際にどの程度の還付金があるかは、所得税の税率によって以下のようになります。
所得税税率 還付金額(4万円控除の場合)
5% → 4,800円
10% → 6,800円
20% → 10,800円
23% → 12,000円
33% → 16,000円
40% → 18,800円
45% → 20,800円
戻ってくる金額は、あくまで「ご自身の所得税の税率」によるため、同じ金額の保険料を支払っていても、年収によって変わることになります。
家族構成や、その他の控除などによっても所得税の税率は変わるので(同じ年収でも税率が違う場合がある)、一概には言えませんが、所得税率5%であれば年収換算で400万円以下、10%であれば650万円以下、という感じでしょうか。
650~1100万円くらいまでが20%、それ以上になると一気に税率が上がっていきます。
この還付金。
正確には「払い過ぎた税金が戻ってくる」というものなので、資産運用の結果の利回りではありませんが、実質的な「利回り」だと考えて良いでしょう。
ルール1 出来るだけ年間8万円にする
例えば年収500万円、所得税の税率が10%の方が年金保険に入れば、6,800円の還付金があります。
年金保険は「年間8万円以上払えば」、「最高4万円控除」というルールなので、投資効率を高めるなら、ジャスト8万円を支払う方が良いです。
8万円支払っても、12万円支払っても、どうせ控除金額は同じ4万円、つまり還付金は6,800円。
両者を比較すれば以下のようになります。
・8万円で6,800円のリターン 8.5%の利回り
・12万円で6,800円のリターン 5.67%の利回り
リターンが同じであれば、それに使う原資は少ない方が効果的です。
しかし、そうはいかない場合もあります。
保険会社の商品の仕様で「月1万円がミニマム」ということや、30代後半以上などで、最低保険料が8万円を大きく超えてしまうことがあるからです。
特に30代後半を過ぎてしまうと、なかなか8万円では難しいかもしれません。
しかし、それでも先に述べた通り、仮に12万円を支払うことになっても、6,800円のリターンは5.67%で資金を運用出来ていることになります。
また年収が高い場合、還付金はより増えますので、いずれにせよ「貯金よりはよほど良い」と言えます。
ルール2 原則、年払にする
保険料の「支払い方」として、月払、半年払、年払がありますが、年金保険の場合、出来る限り年払を選択する方が良いでしょう。
年払にすると保険料が割り引かれ、月払より安い保険料で済むからです。
保険会社からしても、毎月保険料を引き落とす手間がなく、年に一度で済む年払はありがたいので、その分、保険料を安くしてくれるのです。
どの程度、割り引かれるかは保険会社によっても異なるのですが、1~2%程度安くなるところが多いです。
例:月払 7,000円 → 年間支払い保険料 84,000円
これが年払だと 83,160円/年(1%割引)
わずか1%ですが、月払でも年払でも将来戻ってくる年金額は変わらないので、結果的には「返戻率を1%上げる」ことになります。
支払えるのであれば年払にする方が良いでしょう。
ルール3 リスクを取れるなら外貨建も検討
個人年金保険には、日本円で支払って日本円で受け取る(円建)と、日本円で支払って、米ドルなどで受け取る(ドル建)があります。
円建の場合、冒頭でも述べた通り、返戻率は105%前後ですが、ドル建であればそれ以上のリターンを得ることも可能です。
個人年金保険料控除の枠を使い、還付金を得ることが個人年金保険の主な目的ではありますが、それでも商品自体のリターンは多ければ、それに越したことはないでしょう。
もちろん外貨の場合、為替リスクがありますが、そのリスクを許容出来るなら、検討してみても良いのではないでしょうか?
あくまで筆者の個人の考えではありますが、還付金があるとは言え、長い間資金を「寝かした」結果が105%では少々寂しい気もします。
筆者ならドル建にします。
なお、ドル建の年金商品で「個人年金保険料控除」の対象となる商品は以下の通りです。
ニッセイ・ウェルス生命 つみたてねんきいん2 ★★★☆☆
別名:ニッセイウェルス定額年金 外貨建・円積立型(野村證券にて取扱)
みらいの笑顔(みずほ銀行、みずほ信託銀行にて取扱)
夢のつみたてねんきん(三菱UFJ銀行にて取扱)
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