老いを養う保険、と書いて養老保険。
随分渋いネーミングだが、端的に言えば「老後のための貯蓄保険」というのが、そもそもの意味である。
養老保険を教科書的に定義するなら、
・満期が設定されている
・死亡保険金と満期保険金が同額
という2つが挙げられる。
具体例を見てみよう。
30歳 男性
・保険料 11,000円/月
・満期 60歳
・死亡保険金 400万円
・満期保険金 400万円
先の定義の通り、60歳という「満期」がある。
そして死亡した時に受け取る「死亡保険金」と、満期を迎えた時に受け取る「満期保険金」が同じ。
これも定義通り。
30歳で、この保険に加入し、毎月11,000円を60歳まで支払う。
途中で死亡すれば、400万円を死亡保険金として受け取るが、無事、満期を迎えた時には、その時も400万円を満期保険金として受け取る。
この保険においては、保険金は「死亡保険金」と「満期保険金」の2つがあることになる。
つまりは、死んでも、生きていても「必ず400万円」が受け取れるので、
取りっぱぐれがない保険
とも言える。
なお、話は少々横道に逸れるが、この養老保険をベースに開発されたものが、学資保険と年金保険。
学資保険は「子供が18歳になる時」を満期としたもので、養老保険の「死んでも、生きても」という特性が一番発揮される商品だ。
子供が小さいうちにお父さん(もしくはお母さん)が死亡したら、将来の学資としてまとまったお金を遺せる。
もちろん、無事満期(子が18歳の大学進学時)を迎えれば、それはそれで満期金(お祝い金などと言うところもある)を受取り、それが進学資金となる。
年金保険は60歳で受け取る満期金を「分割払い(年金方式)」にしたもので、また、若いうちに死亡した時の保険金を抑える(だいたい、死亡=それまで支払ってきた保険料全額を返金というところが多い)ことにより、その分のコストをカットし、将来の返戻率が上がるようになっている。
どちらも養老保険の変化版と言える。
さて、それでは先ほどの話に戻ろう。
毎月11,000円を60歳まで支払い、死ねば400万円、生きていても400万円となるが、これは貯蓄としてはどの程度の「メリット」があるのだろうか?
ざっと計算してみよう。
11,000円を30年間支払うと、その総額は396万円となる。
それに対して、満期で受け取るお金は400万円。
396万円支払って400万円なのだから、+4万円。率で言えば1%程度増えていることになる。
それに、この期間中には「400万円の保険」が付いているので、別に損をしているわけではない。
だが・・・
というところだろう。
30年間で+4万円に魅力を感じる人は「ほとんどいない」
そのため最近では、養老保険は「ほとんど」売れていない。
このリターン低さの理由は、昨今の低金利。
保険会社の代表的な運用先に「日本国債」があるが、今の国債の利回りは10年国債で0.1%前後。
0.1じゃ増やしようがない。
0.1%で30年間運用しても、たかが知れており、そのため、保険会社も契約者からお金を預かっても、増やせないのである。
結果、396万円預かって400万円がやっと。という感じになる。
しかも、契約者が途中で死亡すれば400万円を支払わなくてはいけないのだから、保険会社も大変である。
だが、昔はこうではなかった。
日本でも銀行の金利が3%とか4%の頃があり(今の若い人からすれば信じられないことだが)、その頃の養老保険などは、
「支払った保険料の2倍が戻ってくる」
というような状態だったが、今となっては昔日の感がある。
現在では、どの保険会社でも通常の養老保険は「ロートル扱い」され、一応商品ラインナップにはあるものの、実際にはほとんど販売されていない。
(注:一部、法人向けに導入されるケースがあり、それらの「追加契約」などがあるため、どこの保険会社も渋々続けている、という感じ)
以上、養老保険について解説した。
なお、先ほど「通常の養老保険は」という説明をしたが、これは日本円のもので、昨今では「ドル建養老」や「変額養老」などの「養老保険2.0」的なものが販売されている。
前者はその名の通り、米国ドルベースでの養老保険であり、円建より格段に利率が良い。
後者は支払った保険料を日本株、米国株、債権、不動産など、各分野のファンドに投資するタイプの養老で、経済状況によって利回りも上下するため最終的な結果はその時になってみないと分からない。
これらの販売は割と好調なようで、新商品の投入が相次いでいる分野である。
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