この保険の弱点はここだ!ネオファースト生命「認知症保険toスマイル」

提供会社:ネオファースト生命

商品名:認知症保険toスマイル

この保険の弱点はここだ!!

参考コラム:
介護保険の基礎を学びたい方は、まず

『民間の介護保険は必要か?「介護保険の考え方」』
『介護付き終身保険のメリット・デメリット』
をご覧いただきたい。

介護/認知症保険の総論について以下でも音声にて解説してます!!

 

ネオファースト生命は第一生命グループで、主に保険ショップ向けの商品の開発・販売を行っている。

本体の第一生命が旧態然とし、イマイチ魅力的な商品を出せていない中、子会社であるネオファースト生命はなかなか個性的な商品が多く、本当に伸び伸びとやっている印象。

本商品でも目を引くのは、

「70歳時点で歯が20本あれば保険料を割り引きます!!」(歯数割引特則)

というフレーズ。

同社のサイトによれば、70歳以上で歯が20本以上残存している人とそうでない人を比較すると、認知症の発症確率は1.9倍ほど違うらしい(当然、歯が少ない人の方が高い)

また、かかりつけ歯科医院がある人、ない人でも1.4倍の差があり、端的に言えば、歯を大事にしている人は認知症になりにくいということだろう。

なお、余談ながら昨今の研究では、歯周病とアルツハイマー型認知症(認知症の一つ。全体の2/3を占める)には何かしらの相関関係がある、という説もあるようで、この点からも歯と認知症の間には、関連性があるのかもしれない。

本商品では、このようなデータに基づいて、「歯が20本ある」ことを条件に、70歳以降の保険料を割り引いている。

厚労省のデータ(平成28年 歯科疾患実態調査)によると、70歳以上で歯が20本ある人は、全体の63.4%とのことだが、これは歯のことなど一切気にしない層(貧困層など)も含めたものであるので、本商品に加入するような「意識が高い人(前もって認知症のことを考えているような人)」の集団ではもっと高いかもしれない。

商品としては、掛け捨てタイプで、

認知症と診断されている & 公的介護の要介護1以上

という2つの条件をクリアした場合に一時金(100~500万円:契約時に設定する)を受け取れる。

当サイトでの評価は星2つ。

面白い商品だとは思うが、筆者自身はあまり必要性を感じない。

その理由については、以下の弱点(デメリット)にて解説していきたい。

弱点1 介護は認知症だけじゃない

この点、意外と勘違いしている人が多いが、

介護=認知症

ということではない。

介護状態という大枠の中で、認知症は「最大派閥」ではあるが、全てではない。

実際、内閣府の調査(平成30年版高齢社会白書)でも、「介護になった原因」は以下のようになっている。

1位 認知症           18.7%
2位 脳血管疾患(脳卒中など) 15.1%
3位 骨折・転倒       12.5%
注:データ上は「その他、不明、不詳」が24.9%で1位だが、ここでは除外する。

しかし、これはあくまで「要介護になった原因」なので、例えば骨折が原因で要介護になったが、その後認知症を発症した、というような事例も多いので、「要介護のうち認知症は18.7%である」ということを言っているわけではない。

別の角度から見てみよう。

そもそも介護になる人はどれくらいいるのか?

統計を見ると、一生涯で「介護」を必要とするのは、男性の1/3(33%)、女性の1/2(50%)である。男女全体で見れば40%程度。

男性より女性の方が確率が高いのは、総じて女性の方が長生きするからで、要は男性は介護を必要とするまで長生き出来ず、手前でがんや心臓や脳で亡くなってしまう方が多いからである。

対して女性は90歳くらいまで生きる方も珍しくなく、そうなると必然的に身体・頭脳が衰え「介護」が必要になる。

では、この中で認知症はどれくらいるのだろうか?

別の統計を見ると、2021年時点で65歳以上の高齢者は、3640万人だそうだ。

そして認知症の患者は約600万人ほどなので「6人に1人が認知症(17%)」ということになる。

先に「一生涯で介護を必要とするのは全体の40%だ」と説明したが、ここに認知症の17%を重ね合わせると、例えば高齢者が100人いた場合、40人が「介護」、そしてそのうち17人が「認知症」ということになるだろう。

この結果から、介護全体の4~5割程度が「認知症」で、残りは「非認知症」ということになる。

人によっては「介護のほとんどは認知症」だと思っている方もいて、その点は勘違いだと言わざるをえない。

実際には半分程度なのだ。

で、本商品。

商品名にもあるが「認知症保険toスマイル」とあるので、認知症だけに限定されたものである。(支払い条件も「認知症と診断されていること」という一文がある)

つまり、非認知症による介護の時には、保険金は支払われない。

ちゃんと理解している人からすれば「何を当たり前のことを・・・」という話なのだが、実はセールスの現場では、買い手がこの点を勘違いして「介護全体の保険」だと思いこんでいる場合が意外と多い。(そして売り手側も、その「勘違い」に乗っかっていることもある)

認知症の実態としては、5、6人に1人が「なるかもね」というもので、残りの4、5人はなる前に死ぬか、長生きしても認知症とは無縁の人生を送ることになる。

次に保険料について論じてみたい。

本商品に60歳の男性が一時金100万円で加入した場合、保険料は1,580円となる。女性だと1,928円。(終身払)

女性の方が高いのは、前述の通り、男性より長生きするので、その分、最終的に認知症になる確率が男性より高いからである。

各種統計データを見ると、認知症により、要介護1の認定を受ける中央値はおおよそ80歳程度。

60歳から80歳まで、約20年間保険料を負担すると、以下のようになる。

男性 38万円(歯数割引適用の場合 35.5万円)
女性 46万円(歯数割引適用の場合 44万円)

認知症になって受け取れるお金は100万円。

それに対して、男性38万円、女性が44万円を支払うのだが、受け取れる確率は1/5(20%)。

5人いて、1人は100万円をゲットするが、残り4人は保険料を「捨てただけ」となる。

なる確率20%、ならない確率80%

これをどう捉えるかは、人それぞれだが、筆者は「ならない確率も高いな」と感じる。

であるならば「自分で貯めておく」ほうが良い。

認知症になれば、それを使えば良いし、ならなければ老後の生活費として使えば良いのだから。

筆者自身は、認知症をはじめとする介護問題に関しては、原則、自分で貯めるか、資金を運用した方が良いと思っている。

以上の観点から、本商品は「認知症だけにフォーカスすれば面白い商品」ではあるものの、そもそも必要性が低く、自助努力でなんとでもなるリスクで、わざわざ保険に入ることはないと考える。

なお、介護に関わる「お金」と「期間」については、以下のコラムで考察しているので、参考にして頂きたい。

参考コラム:『民間の介護保険は必要か?「介護保険の考え方」』

弱点2 失効した場合、復活制度がない

本商品を始め、ネオファースト生命では、他社にはある「復活制度」がない。

詳細は以下、コラムを参照のこと。

参考コラム:新興系保険会社のデメリット 保険の復活が出来ない?!

口コミ・評判(販売側から)

保険ショップ勤務さんからの口コミ

保険料も安く、「認知症&要介護1で払う」という分かりやすい条件から、50代、60代で自身も親の介護で苦労したような方には受ける。
ただし、頭の良い方は、支払総額と一時金の比較をして「これなら自分で貯めた方が良いのでは?」というような指摘されることもある。
相手の「認知症への恐怖感」によって、評価が決まる商品。

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保険会社勤務、代理店勤務の方でも、販売現場の情報や、当サイトで指摘していない弱点(デメリット)などには謝礼(amazonカード300円)をお支払い致します。

口コミ・評判(契約者から)

・なし

他社の介護保険の☆評価一覧は、コチラ

比較した方が良い商品

ジブラルタ生命 米国ドル建介護保障付終身保険(低解約返戻金型) ★★★☆☆

SOMPOひまわり生命 認知症保険 笑顔をまもる認知症保険 ★★★☆☆

明治安田生命 認知症ケアMCIプラス ★★☆☆☆

参考コラム:
介護保険の基礎を学びたい方は、まず

『民間の介護保険は必要か?「介護保険の考え方」』
『介護付き終身保険のメリット・デメリット』
をご覧いただきたい。

他社の介護保険の☆評価一覧は、コチラ

2 件のコメント

  • 筆者さま いつも貴重な情報ありがとうございます。

    認知症保険の必要性についてですが、認知症に備える場合に一般的な定期預金や投資信託は家族では代理解約ができず資産凍結されるリスクがあると考えております。また、資産凍結後の成年後見人制度は手続きの手間や費用負担を懸念しております。現金での保有やキャッシュ代理カードを作成するなどもありますが、他方、今回の保険に限らずですが指定代理人の特約が付保できる介護保険であればある種の認知症による資産凍結リスクを回避し、家族に自分の介護費用を受け渡しが円滑にできるツールとして活用できるのではと考えております。

    • 貴重なご意見ありがとうございます。
      資産凍結の回避。確かにそれも「保険」に入るメリットの一つではありますね。
      ただ、そのメリットのために、「どの程度のコストを支払うか?」ということかと思います。
      あくまで、認知症の父の介護も経験した私個人の見解ですが、
      1 本文でも触れている通り「必ず認知症になるわけでもない。ならない確率も高い」
      2 仮に認知症で銀行口座が凍結され、保険が役に立ったとしても、資産の全てが保険になっているわけではない以上(かつ、保険は流動性が低いので、全てを保険にするべきでもない)、あくまで一時凌ぎ。凍結口座をそのままにしておくわけにもいかず、他にも証券口座などがある場合もあり、いずれは成年後見人を立てねばならない。それまでの当座の資金であれば、配偶者や子が建て替えたり、「ちょっとおかしくなってきたな?」という初期段階で、資産を贈与しておくことでも対応可能
      3 現実的には、認知症の場合、親族がキャッシュカードなどを本人から取り上げてしまうので、口座凍結までされるケースは稀(「使い込み」などを疑った他親族からの連絡や、認知症患者本人が金融機関の窓口で「お金を盗まれた!!」など大騒ぎして凍結されるケースはあるが、家族関係が良好であれば、金融機関が調査して、自ら凍結するようなことはほとんどない)
      というところです。
      とは言え、口座凍結は「起こり得ること」ではあるので、それに備え、一部の資産を「指定代理人」の自由度が高い保険にしておくいうこと自体は否定しません。
      「認知症になったらこれを使え」という意味で、資産の一部を「一時払500万円」というような形で、保険会社に預けておく(その500万円は一定の率で運用されていく)のであれば悪くはないかな?とは思います。
      ただ、この手の商品でも初期手数料や、運用コスト、運用リスク、解約時のペナルティなどが大きいものが多くて(そうしないと保険会社が儲からないので仕方ないですが)、「なかなか良い商品はないなぁ」とは感じております。

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