提供会社:日本生命
格付:A+ S&P
商品名:生活サポート保険
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この商品のポイント!!
身体障がいと要介護という2つにフォーカスしたところから「W(ダブル)」と言うらしい。
身体障害手帳 1~3級
(初期サポート保険金50は4~6級も対象)
要介護2以上
(初期サポート保険金50は要介護1も対象)
この2つのどちらかに該当すれば、一時金と給付金を受け取れる。
基本的には就労不能(働けない)の保険と考えて良いだろう。
この分野はネット生保などの新興の保険会社がかなり先行しており、本商品は「後追い中の後追い」という位置づけ。
筆者の感想としては
・障がい者手帳3級から年金支払い対象になるのはgood
・逆に年金が要介護2以上でないと貰えないのはbad
・一時金の保障がセットになっているため、保険料は割高(類似商品に比べて)
という感じ。
ただし、国内最大手のニッセイ(日本生命)が出した商品にしては、保障内容、保険料ともに頑張っていると思う。
星2つか3つか迷ったが「国内最大手のニッセイブランド」という点と「障がい者手帳3級でも払う」というポイントを評価し、星3つ評価とした。
日本生命だけに限らず、国内の大手生保が販売する商品というのは大抵「さほど良くないわりに高い」というのが相場なのだが、本商品に限っては
「そこそこ勝負出来そう」
というような内容となっている。
但し、ちょっとオーバースペックかな?という気もして、そこがウィークポイント(デメリット)になってしまっているような感もある。
これについては弱点のコーナーにて詳細を述べたい。
本商品はこれ単体でも加入できるが、日本生命の商品ラインナップ上で言えば、同社の看板商品「みらいのカタチ」を構成する1パーツという位置づけだろう。
みらいのカタチはパッケージ型と呼ばれる商品で、死亡、医療、年金、など様々な「パーツ」が揃っていて、ユーザーはその中から必要なものを組み合わせるという商品。
みらいのカタチには以前「介護保障保険」という商品(パーツ)があったが、その主軸はあくまで介護であり、「働けないリスク」までは踏み込んでいなかった。
それを「就業不対応能」まで進展させたのが本商品だと思われる。
保障内容としては、一時金の初期給付金が以下のルールで給付される。
障害手帳4~6級 or 要介護1以上に該当した時の50万円
障害手帳1~3級 or 要介護2以上に該当した時の100万円+年金
要はまず軽度の障害や要介護で50万円を支払い、その後、障害や介護が重くなった場合に更に100万円を支払うということ。
更に後者の100万円(障害手帳3級以上、要介護2以上)に該当した場合、その後年金(年間150万円など)が支給される。
つまり、障害手帳4~6級以上、要介護1の時点では年金は「受け取れない」
以上が商品概要。
では弱点を見ていこう。
この保険の弱点(デメリット)はここだ!!
その1 ややオーバースペック
一時金がちょっと余計かな?という気がする。
希望によって「取り外し」が出来れば良いのだが、完全にセットになっているため、絶対に入らなくてはいけない。
一時金は、
障がい者手帳4~6級 or 要介護1以上に該当 → 50万円
障がい者手帳1~3級 or 要介護2以上に該当 → 100万円
となっているが、障がい者手帳が6級でも50万円支払うため、受け取るための「ハードルが低い」
注:実際には障がい手者帳6級でもご本人にとっては大事であり、決して「低い」と形容するべきものではないが、ここでは「保険の支払基準としては」という意味で「低い」と表現している。何卒ご理解頂きたい。
そのため、この50万円はかなり「支払う可能性が高い」ため、そのための原資を保険料に上乗せしなくてはいけない。
これが全体的に保険料を上昇させる要因となっているのだろう。
だが、正直なところ障がい者手帳に該当するような方が「50万円」を受け取ったところで、果たしてどれほどの実用性があるのか?と問われると少々疑問。
もちろん無いよりはあった方が良いが、50万円くらいなら貯金で何とかなるレベルでもあり、わざわざ保険でなくても良いとも思う。
また、
障がい者手帳1~3級 or 要介護2以上に該当 → 100万円
の方では一時金が100万円と倍増するので、それなりには役に立つだろうが、このレベルになると「生き方を変えないといけない」ほどの障がいなので、100万円と言えど「焼け石に水」かもしれない。
いずれにせよ、一時金は選択制にするべきだと思う。
そのため、
「一時金は別にどうでも良いな。働けないような状態になった時、その後の年金(生活補助)があれば良い」
と考える方は、本商品は合わないと思う。
その2 がんに弱い
これも弱点。
本商品は「がんによる就業不能(働けない)」には弱い。
と言うか、おそらくがんではほとんど払えない可能性が高い。
これを理解するためには「がんによる就業不能」と「就業不能保険の種類」を理解する必要がある。
なお、就業不能保険の種類については、以下で解説もしているので、本稿では軽く触れる程度に留める。
参考コラム:就労不能保険「損保系」、「特化型」、「特約型」の違いを理解しよう
まず、「がんによる働けないリスク」だが、基本的にがんになれば、それなりの期間は仕事を休まざるを得ない。
だが、昔に比べると劇的に短くなっていて、現在はおおよそ2~3週間程度であることが多い。
部位によっては内視鏡手術で済むこともあり、そのようなケースであれば1週間以内で済むことも珍しくないだろう。
しかし、これは「切れる」場合の話。
切れる、とは外科的な手術のことで、がん細胞とその周辺の怪しい部分を丸っと切ってしまう治療方法だ。
悪い場所を根こそぎ取ってしまうので、話が早い。
そして、このようなケースであれば正直、保険など要らない。
治療費は高額療養費制度の対象になるし、また、健康保険から出る傷病手当(給与の2/3を補償)もあるため、そこまで経済的に困ることはないからだ。
だが「切れない」場合は厄介。
例えば、肺がんでも肺の末端部分であれば「切れる」が、根本部分(のどに近いところ)であれば「切れない」し、血液のがんである白血病なども外科的手術が出来ない。
このような場合、抗がん剤、放射線治療などを行うのだが、かなり根気強くがん細胞を叩かないといけないため、数か月単位で治療が続く。
こう言った状況でこそ「働けない時の保険」が役に立つのだが、残念ながら本商品では、これをカバー出来ない。
その理由が「就業不能保険の種類」だ。
そもそも論になるが、働けないリスク、つまり、
何をもって働けないのか?
という状態を定義することは非常に難しい。
例えば死亡とか入院とかであれば、「実際に亡くなった」、「入院した」という事実(証明)があるため非常に分かりやすいが、働けないというのは個々人の問題も多く、一概に「これが働けない状態です!!」とは定義しづらい。
一例を挙げると、車いす。
国の制度では1級障害であり、障害者手帳でも1級だ。
しかし、働けないか?と問われれば「人による」ということになる。
IT系の企業で車いすの方で普通に働いて、普通の給与を貰っている人は沢山いる。
しかし、大工さんで高所から落下し、車いすになった場合、なかなか元の仕事には戻れないし、ある程度の年齢になっていれば、そこから新しいスキルを身に着けるのも難しい。
やはり、
「働けない」
ということになるだろう。
これらの例を見て頂いても「働けない」ことの定義がいかに難しいことが分かる。
そこで、現状、各保険会社の定義作りは概ね以下の3つのアプローチに分かれている。
① 公的制度に連携
障害等級2級以上や、障がい者手帳2級以上、要介護1以上など公的制度に連携して「働けない」と認定する。
実際に「働ける、働けない」ということは議論しても結論が出ないので、明確な基準の公的制度を用いて、それを「基準」とする。
本商品もこれに該当する。
② 保険会社独自の規定
病気ごとに「この状態になったら働けない」というような細かい定義を作り、就業不能を定義する。
③ 実態を見る
入院中、自宅療養中などの事実と、医師の「働けない」という診断などを重視する。
商品としては、①と②、もしくは、①と③を組み合わせたものが多い。
そして、本商品は①だけ。
障がい者手帳と要介護だけなので「完全公的連動性」とも言える。
がんの場合、障がい者手帳や要介護の認定は基本的に難しい。
肺がんの後遺症で一生涯、酸素治療が必要(障がい者手帳の可能性あり→本商品の支払条件に該当する)などの例もあるものの、がんに治療中は良くなったり、悪くなったりと状況が不安定であり、かつそれはあくまで体調的なことであることが多いため「障がい」とまではならない。
また要介護認定も「歩行、着替え、排泄、食事」などの困難度に重点を置いているので、がん患者とは相性が悪いのである。
そのため、がんで本商品の支払条件を満たすことはなかなか難しいだろう。
なお、前述の3つの中で「③実態を見る」タイプの就業不能保険であれば、がんの就業不能(自宅療養中など)には強い。
この保険の弱点、こう考えろ!!(解決策)
保険料が高い、がんに弱い、という2つの弱点を指摘したものの、本商品にはそれなりに強みもある。
それが「障がい者手帳3級でも払う」という点だ。
当サイトで把握している限り、障がい者手帳3級が支払い対象なのは、朝日生命の「収入サポート」と大樹生命の「働く人応援保険(大樹セレクトという同社のパッケージ型保険の一部)」の2つのみ。
大樹生命は旧三井生命だが、今は日本生命に買収され日本生命グループとなっており、そういう意味では本商品も大樹の就業不能保険を参考にしたのかもしれない。
類似の商品では障がい者手帳は2級以上というものが多く、本商品の方が支払い範囲は広い。
その分、払われやすいということ。
正直なところ2級というのはなかなか認められないと言うか、例えば脳系の病気になって半身不随(左右)になった場合でも3級認定となるケースが結構多い。
先に述べた車椅子(下半身不随)は文句なく1級なのだが、何故か左右の半身不随には厳しく、多少でも歩けたりすると3級で止まってしまうようだ。
筆者の叔母も、40代で脳溢血で倒れ、一命を取り留めたものの右半身不随(右手、右足が「全く動かない」というわけではないが、麻痺が酷い状態)となってしまった。
その時も3級認定で、随分と憤慨したものだ。
実は脳系の病気で麻痺が残った場合、就業不能保険で「払う、払わない」でもめるケースは非常に多い。
片手でも麻痺していれば実際問題として「働らけないだろう・・・」とは思うのだが、障がい者手帳や、障害等級ではそこまで重くなく、そうなると保険会社は支払いを拒む。
これ自体はそういうルールなのだから仕方がないのだが、実態として「働けない」のに、「就業不能」を謳っていながら、いざという時にその保険が何の役にも立たないという現実があるわけだ。
この点からみると「障がい者手帳3級」は、そのあたりのモヤモヤを救ってくれる。
左右の半身不随は最低でも3級には認定されるし、片手だけ動かないのも2級か3級。
「実態として働けないよね」というのと「障がい者手帳3級」はかなり近いので、「3級でも払う」というは非常に評価できるポイントだと思う。
先に述べた通り、本商品はがんには弱いが、脳系には強い、ということになるだろう。
で、どちらを重視した方が良いか?と問われると、筆者は脳系だと思う。
がんの「働けないリスク」も怖いのは怖いのだが、正直なところがんとの闘いは最長でも1,2年程度。
厳しい現実ではあるが、治るか、治らないか。
そして、残念ながら「治らない(亡くなる)」可能性の方が高い。
筆者のお客様で5年闘病して旅立った方がいたが、それは非常に稀なケースで、大抵は1,2年(多くは1年以内)で勝負が決してしまう。
そうなると、仮に就業不能保険に入っていたとしても、就業不能保険は「生きている限り払う」ものなので、結局のところ受け取れる金額はそこまで多くはない。
毎月10万円の契約なら、1年間で120万円程度だろう。
もちろん、これも「ないよりはあった方が良い」のだが、これをもって生活が劇的に助けられるわけでもない。
逆に脳系の病気は後遺症が残った状態で「そこから長生きする可能性」も高いので、やはり収入減による影響は大きい。
そのため、「どちらか」と言うのであれば脳系重視の方が良いとは思う。
また一時金も保険料が上がる要因にはなってしまっているが、これも実際に支払われれば助かるのは助かる。
「良い商品は高い。保険に限ってはお得な商品というのは存在しない」
という原則があり、これらの考え方に賛同されるのであれば、本商品は悪くないと思う。
なお、障がい者手帳3級では「払わない」が、以下の条件であれば「払う」という商品も多い。
・「障がい者手帳2級」もしくは「障害等級2級」で払う
注:障がい者手帳と障害等級は別の制度。やや障害等級2級の方がハードルが高いイメージ(状況にもよるので一概には言えないが)
・さらに実態を見る(入院中、自宅療養、医師の「働けない」という診断など)
がんでも受け取りたい、脳でも受け取りたい(本商品よりは基準は厳しいが)という方は、こういう商品を選んだ方が良いだろう。
具体的な商品は文末の「比較した方が良い商品一覧」を参照のこと。
なお、就業不能保険の比較は非常に難しい。
各社の支払条件がそろっていないため、保険料だけを比べても意味がないからだ。
そのため、出来ればFP(ファイナンシャルプランナー)資格などを有するプロがいる保険ショップなどに行った方が良いだろう。
付けるべき特約!!
なし
比較検討した方が良い商品
当サイトで高評価の就労不能保険は以下の通り。
T&Dフィナンシャル生命 働くあなたにやさしい保険2 ★★★☆☆
口コミ(販売側から)
なし
口コミ(契約者から)
なし
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初稿:2024年10月31日