この保険の弱点はここだ!エヌエヌ生命「エマージェンシープラスL/LⅡ」

提供会社:エヌエヌ生命

商品名:エマージェンシープラスL/LⅡ

この保険の弱点はここだ!!

緩和型の定期保険。

業界では通称「エマプラ」などと言われる。

解約返戻金が「ある(エマプラL)」もの、一定期間返戻金が「低く抑えられているもの(エマプラLⅡ)」もの、返戻金が一切「ない(無解約エマプラ)」など、いくつかバリエーションがある。

解約返戻金が「ある」のは、主に経営者の退職金原資の積み立てなどに利用され、一定期間返戻金が「低く抑えられている」エマプラLⅡは、「年間保険料30万円以下は全損」という特例を使って、全社員で入るケースが多い。

返戻金が「ない」ものは、純粋な保障として提供される。

主に法人向けの商品ではあるものの(エヌエヌ生命自体が基本的には法人の節税商品が主力の保険会社)、個人での加入も可能で、使い方によっては「アリ」かな?とも思う。

本商品の珍しいところは、死亡の「理由」によって保険金が変わること。

重度疾病と言って「急性心筋梗塞」と「脳卒中」で死亡した場合、もしくは交通事故や不慮の感染症(新型コロナなど)が原因で死亡した場合には保険金が「倍」になる。

パンフレットの契約例を見てみよう。

契約例:男性 60歳
保険期間/保険料払込期間:100歳
基準保険金額:1億円
保険料:2,442,600円/年

この契約例の場合、死亡時には5,000万円(基準保険金額の50%)の保険金がベースとなるのだが、重度疾病(急性心筋梗塞、脳卒中)、交通事故・感染症に限っては1億円(通常の倍)の保険金が受け取れる。

なお、本商品は「緩和型」と言って、加入時に健康状態を問う質問が少ないことから、加入してから1年間は「削減期間」というものが設けられており、その期間中に亡くなった場合、保険金はそれぞれ50%減となる。(通常死亡 2,500万円、重度疾病・交通事故・感染症 5,000万円)

加入時の質問は以下の3つ。

1 最近3か月以内に医師から入院、手術、検査を勧められたか?

2 過去2年以内に病気や怪我で入院、手術をしたか?

3 過去5年以内に以下の病気で医師の診察・検査・治療・投薬を受けたか?

狭心症、心筋梗塞、くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞、肝硬変、B型肝炎、C型肝炎、膵炎、腎不全、がん、糖尿病

大きな病気を経験している方では、引っかかってしまう可能性もあるが、例えば肝臓に関する数値が高い、血圧が高い、など

「健康診断の結果が悪い」

という程度であれば加入出来る条件となっている。

本商品は高齢の経営者をターゲットにしていて、そのような方々は普段良い生活をしているのか、身体のどこかしらに問題がある場合が多い。

そのため、このような「緩和処置」を取っているのだろう。

では弱点の話に移るが、ここからは、法人で加入する場合と、個人で加入する場合に分けて説明したい。




弱点1 節税にはならない(法人)

本商品は法人向け、そして節税商品として販売されていることが多いのだが、まあ、身も蓋もないことを言ってしまえば、節税にはならない。

本商品は4割損金で、返戻率は最高で78%程度(加入年齢にもよる)まで伸びる。

これを前提に計算してみよう。

保険料200万円

損金         80万円(4割損金)
資産計上 120万円(6割資産計上)

この場合、毎年80万円を損金として計上出来るので、毎年の節税効果は80万円×法人税30%=24万円となる。

つまり、毎年24万円の節税効果がある。

これを10年続けると、240万円の節税につながる。

本来、この保険に入らなければ(80万円の損金がなければ)払わなければいけない税金を「節税」出来た、ということ。

これは法人にとってはプラスだろう。

対して、年間200万円の保険料を10年支払えば、法人からのキャッシュアウトは2,000万円。

そして返戻率は78%なので、返戻金は1,560万円となる。この時点でマイナス440万円。

また、返戻金1,560万円にも課税される。ただ全額に対してではない。

毎年6割、120万円を資産計上しているので、10年間で1,200万円の資産計上があり、これは銀行の預金を保険会社に預け直ししていたようなものだから、この分は返戻金から除いて良い。

1,560万円 - 1,200万円 = 360万円

これが雑収入となり、これには法人税が課税される。

ここでも法人税30%とすると、360万円の30%、108万円がその年に取られてしまう。

ざっと、プラス・マイナスを考えてみよう。

10年間の節税        プラス  240万円
10年間で保険としての順損  マイナス 440万円
10年後の解約時の課税    マイナス 108万円

差し引き308万円の「マイナス」となる。

言い換えれば、これが10年間の保障に対する純粋な保険料。年間30万円弱、月2.5万円程度か。

筆者としては、保障としては「良いんじゃない?」というのが感想。高齢者で持病などもあり、他の保険に入れない。

それでも加入出来て、かつ数千万円、死亡の理由によっては1億円近い保険金が用意されている。

それが月2.5万円で入れるなら、条件としては悪くない。

だが、本商品がセールスされている場面でよく使われている「節税」になるか?と言えば、それは違う。節税にはならない。

税金だけのことを考えたら、本商品には入らず、毎年、納税して納税後のフリーキャッシュを手元に置いておいた方が良いだろう。

なお、「返戻金を退職金にすれば課税されない」という説明もよく耳にするが、これも本質的には嘘。

確かにその期には上手く相殺できて課税されないが、それは雑収入に対して、退職金の「損金」を充てているだけの話。

この雑収入を消したしわ寄せは、他の益金に波及する。

例えその期は良くても、この雑収入分は翌期、翌々期には「いつか必ず」は課税されるので、原則的には消すことはできないと考えた方が良い。

筆者も国税は嫌いだが、正直なところ先の税制改正で「保険で節税」には大きな網がかかってしまっているのが実情。

なお、エマージェンシープラスLⅡにて、

年間保険料30万円以下は全損

という特例を使った方法もある。

1契約あたり、年間保険料が30万円のものは「全額損金でOK」という抜け道を使い、例えば自社の社員全員にこの保険に入らせる。

社員が30名いれば、30万円×30名=900万円となり、900万円全額が「損金」となれば、目先の決算対策にはなる。

だが、返戻率は概ね70%程度で、30%は保険会社(エヌエヌ)に取られてしまう。

法人税で30%取られるか、保険料として30%取られるか。

どちらにせよ、30%取られるし、更には解約時には、返戻金「全額」が雑収入に計上される。

その時に、また法人税で30%取られてしまうので、筆者としては「何のためにやるの?」とは思ってしまう。

先の例で言えば、加入時には900万円の損金が作れるが、解約時(例えば5年後)に4,500万円支払って、3,150万円(70%)しか返ってこない。

これで、法人税を支払ったのと手残りは「同じ」

更に、この3,150万円に30%の法人税がかかれば、手残りは2,205万円。

4,500万円が半分以下になってしまっている。

単純に法人税を支払っていれば、手残りは3,150万円なので、どっちが良いかは明白。

なお、このスキームで販売実績を伸ばしている保険代理店も多いようだが、おそらく出口(解約時の課税)については、一切話をしていないのではないか?

そうなれば、あとになって(解約時)に「えっ!!また法人税かかるの!?」となり、トラブルになるので、エヌエヌ側も「ちゃんと出口(雑所得への課税)の話をしてくださいよ」と言ってはいるらしいが、なかなか守られていないのが実情。




弱点2 個人で入る場合には「終わり(満期)」の設定に注意

本商品。筆者は個人で「純粋な保険」として入るのも悪くないと思っている。

特に70代が良い。

60代であれば、他社の緩和型の定期保険や終身保険にも入れるので、色々選択肢があるのだが、70歳を超えると一気に入れる商品が減る。

本商品は80歳まで加入出来るので、その点は評価が良い。

また、告知項目も少ないので、例えば70代で「健康状態が良くない。通常の保険には入れない。」そんな方にとっては有力な商品である。

保険料も、他社の緩和型などに比べると手頃な印象を受ける。

ただし、本商品があまりに知名度がないため、保険募集人でもこの商品を知らない可能性が高い。

エヌエヌ生命に対して「法人の節税に特化した会社」という認識が強く、そもそも個人向けに本商品を使うという発想がない保険関係者が多い。

そのため、保険ショップなどに言っても案内されないかもしれない。

なお、個人で入る場合の注意点は「保険の満期」

本商品では100歳まで設定可能だが、100歳にすると保険料が結構高くなる。

筆者のおすすめは90歳。

保障期間を90歳とすることで、保険料はかなり抑えられる。

70代で健康状態が良くないのであれば、率直に言って90歳を超える可能性はかなり低いだろう。

これはある種の賭けではあるものの(90歳を超えて死亡すると保険金がなくなり、かつ、それまでの保険料を捨てることになるため)、「90歳までなんてとても生きられない」と確信出来るなら、90歳満期で設定した方が保険料は手頃になる。

本商品に関する知識のない人間だと「100歳満期が標準」だと勘違いしている人もいる。

色々と試してみると良いだろう。

口コミ・評判(販売側から)

隠れた名品だと思っている。70代の後半などになると、そもそも入れる商品がないが、本商品は受けてくれる。

また保障内容のわりには保険料も安く、返戻金もあるのでお客様も納得しやすい。

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口コミ・評判(契約者から)

なし

比較した方が良い商品

FWD生命 FWD医療引受緩和 死亡保障重点プラン ★★★☆☆

オリックス生命 緩和型定期保険 FINE Surpport Plus ★★★☆☆

オリックス生命 緩和型終身保険 ライズ・サポート・プラス ★★★☆☆

編集後記

約款