この保険の弱点はここだ!楽天生命「認知症保険」

提供会社:楽天生命

商品名:認知症保険

この保険の弱点はここだ!!

商品名が表す通りの内容で、ズバリ

認知症になったら一時金を受け取れる

というもの。

保険料は掛け捨て。

わりとよくあるタイプの商品で、国内大手生保などが高齢化している自社顧客に対して似たようなものを提供していることが多い。

保険料比較で見ると「高くもないが、新興保険会社としてもうちょい頑張っても良いのかな?」という感じ。

当サイトでは掛け捨ての認知症系の保険は基本的に「必要ない」として、星一つ評価であることが多いのだが、本商品に関しては精神疾患入院に関する面白い特約もあるので(詳しくは弱点3参照)、そこを評価して星2つとする。

商品の構成としては、

・認知症診断給付金
認知症と診断されたら一時金
(100万円から3,000万円までで選択可能)

をベース(主契約)として、そこに以下のオプション(特約)を付ける構成。

・要介護給付金
 認知症 & 要介護1で受け取れる一時金
(前項、認知症診断給付金と合計で3,000万円まで選択可能)

・無事故給付金
 3年間無事故(認知症にならない)場合に一時金(5万円、10万円より選択可能)

・精神疾患併発入院給付金
 認知症 & 精神疾患で入院した場合、給付される(5,000円から2万円の範囲で選択可能)

なお、ネット申込の場合、認知症診断給付金のみの構成を「お手軽プラン」

そこに要介護給付金を付けたものを「基本プラン」

そして、更に精神疾患併発入院給付金を付けたものを「安心プラン」と呼んでいる。

また、各プランに無事故給付金を付ける(もしくは付けない)ことが可能。

以上、商品概要。

では弱点。




弱点1 自分で貯めた方が良い

星1つ評価であることからも、本商品に必要性はないと考える。

そのあたりの事情は以下コラムにまとめてあるので、ご参照頂きたい。

参考コラム:認知症保険は「原則」必要ない

本稿では、その理由を実際の本商品の契約例で考察してみよう。

本商品にて、60歳 男性が認知症診断一時金500万円で加入した場合、保険料は11,050円となっている。

なお、話をシンプルにするために、その他のオプションは付けない前提としたい。

11,050円を1年間支払うと132,600円。

60歳から10年(70歳)で約133万円、15年(75歳)で約199万円、20年(80歳)で265万円、30年(90歳)で398万円、40年(100歳)で530万円を支払う計算となる。

これが「認知症になって500万円を貰う」ためのコストである。

これを見れば、以下のことが分かる。

・早く認知症になれば「得」

・認知症にならず長生きすれば「損」

至極、当たり前の話だ。

では、次に「確率」を見てみたい。

認知症になる「確率」は、統計上、男性5,6人に1人(16~20%)、女性3,4人に1人(25~33%)である(詳しくは前述コラム参照)

男性は「認知症以外」のがん、脳、心臓などで認知症になる前に死亡してしまう方が多いが、女性は総じて長生きなので、最終的に認知症に至る確率が高いのである。

ここでは「確率高め」で試算するために、男性5人に1人(20%)、女性3人に1人(33.3%)とする。

で、認知症になる「タイミング」だが、早ければ70代前半、遅ければ80代後半で「発症」するが、これも各種データを見ると、中央値は70代後半かな?という感じだ。

ここでは仮に78歳としよう。

先の保険料を60歳から78歳まで18年間支払うと、その合計は約239万円となる。

男性の場合、5人に1人が認知症になるので、保険会社はその「1人」に500万円を支払えば良いわけだ。

あくまでも「平均」の話ではあるが、

・60歳の男性が5人いる

・この5人が亡くなるのは平均寿命の83歳(それまで保険料を払う)

・だが、その中の1人が78歳で認知症を発症する(この人だけが78歳で保険料停止 & 500万円ゲット)

こんなモデルとなる。

この平均モデルで言えば、一時金500万円の場合の保険料11,050円を

・5人中 4人は83歳まで

・1人は78歳まで(認知症発症)

支払うことになる。

・11,050円 × 12ヶ月 × 23年(60歳から83歳)× 4人 = 1,220万円

・11,050円 × 12ヶ月 × 18年(60歳から78歳)× 1人 = 239万円

つまり、保険会社は5人から上記の合計1,459万円を集め、1人に500万円を支払うわけだ。

これらを見ると、次のことが分かる。

・認知症のリスクは「高いように」見えるが、実はそこまででもない「5人に1人」程度

・たった1人だけが得をするが、残りは全員損をする(保険料を捨てる)

・長生きすればするほど「捨てる保険料」は増え、90歳、100歳ともなれば、保険金500万円と変わらない金額を「捨てる」

どうだろうか?

もちろん、これはあくまで「平均」の話であり、中には加入して2,3年で認知症になり、それほど保険料を支払っていないのに、高額の一時金を受け取る人もいて、そのような人にとっては「素晴らしい保険」ということになる。

だが、多くの人にとって「払い損」になるのは紛れもない事実であろう。

であるならば、認知症のリスクは「自分でカバーする」方が良いのではないか?

保険料を支払うくらいなら、そのお金を貯めておいて、認知症になればそのお金を使えば良いし、ならないなら老後の楽しみに充てれば良い。




弱点2 1年間は保障なし

他社の認知症保険にも多く見られる「ルール」

本商品でも、加入してから1年間は仮に認知症になっても保険金は受け取れない。

これは「不正防止」のための処置で、すでに認知症の前兆があるような方が、病院へ行って診断される前に保険に入り、直後に診断金を得るような行為を防ぐ意味がある。

弱点というよりは、そういう仕様になっているので仕方がないが、一応、注意喚起としてここで記した。

弱点3 精神疾患併発入院特約は時限爆弾かも・・・・

本商品の特徴の1つでもある「精神疾患併発入院特約」

認知症を発症し、かつ以下の精神疾患が理由で入院している時に、入院日数に応じて給付金が受け取れる。(5,000円/日など)

・統合失調症、統合失調型障害及び妄想性障害
・気分[感情]障害
・神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害
・摂食障害
・非器質性睡眠障害

なんと日数制限がなく「無制限」で受け取れるとのこと。

これは率直に「良い特約」だと思う。

特約の保険料も安い。

前述の通り、筆者自身、一時金は必要ないと考えているが、この特約だけなら契約しても良いと思う。

だが、同時に「本当に大丈夫なのか?・・・」という気もする。

大きなお世話だが、楽天生命の収支を心配してしまう。

認知症と精神疾患の線引きはかなり曖昧だ。

そもそも認知症が「普通ではあり得ない行動」を引き起こすので、例えば何か症状が出ても、それが認知症によるものなのか?それとも精神疾患なのか?という判断は極めて難しい。

一般論として「家族が面倒を見れる程度」であれば、認知症であっても精神疾患であっても正直どっちでも良いのだが、「面倒を見きれない」状態になった時が大変だ。

このような場合、医学的な見地より「どれほどぶっ飛んだ行動をするか?」で決まってしまうのが実情。

仮に奇行が目立つようになった場合、実務上、介護施設で対応出来るレベルであれば「認知症の一症状」とされ、それ以上の行動、例えば自傷行為や噛みつき、殴打等の暴力行為、排泄物を投げるなどの不衛生な行為などがあった場合、「認知症+精神疾患」の合わせ技1本で精神科に入院することが多い。(余談ながら、この手の病院は何故かどこも山の奥にある)

で、後者の精神科への入院だが、うーん、これは正直かなり厳しい。

率直に言えば、猿ぐつわを噛まされてベッドに拘束されているような状態で、長時間放置されてしまう。

但し、これは仕方がない部分もある。

外してしまうと、自分や人を傷付けてしまったり、脱走してしてしまったり・・・・

悲しいかな「縛り付けておくしかない」のである。

もちろん筆者はこの分野の専門家ではないし、医師でもないので確定的なことは言えないが、これが筆者が見てきた現実だ。

このような状態になった時に、本特約は日額を「無制限」で支払ってくれるので、家族にとってはありがたい。

だが収益的には「本当に大丈夫なのか?」という気もする。

かなり長期間入院する人もいるし、仮に日額5,000円だとしても、1年間も入院したら182万5,000円もの給付金を支払う計算となる。

2年だと365万円だ。

筆者の周りにも認知症後に精神疾患と診断され、精神病院に2年強入院して亡くなった方がいるが、もうその最後はなんと言うか・・・という感じだった。

この分野に光をあて、そこに「給付しよう!!」とする楽天生命の志には関心するが、本当にこの保険料で大丈夫なのかな?という気もする。

以上、大きなお世話。

だが、契約者にとっては良い特約ではある。




この保険の弱点、こう考えろ!!(解決策)

既に述べた通り、筆者自身は「自分で貯めた方が良い」と考えている。

また、認知症・介護の現実として、データ上は「平均5年、年間100万円程度の出費」というのが平均とされている。

つまり500万円だ。

老後、仮に自分が認知症や介護になっても「これを使ってね」という形で500万円の貯金があれば、まあそれなりにはフォローして貰える。

なので、まずその程度の貯金があるなら、本商品のようなものは必要ない。

それに認知症や介護は、お金の問題というよりは、家族の問題の方が大きい。

お金自体は、日本の介護制度は尋常ではないくらい充実しているし、生活保護制度もあるので、最悪なんとでもなる。

むしろ、近くでお世話にしてくれる子供がいなかったり、色々手配をしてくれるご近所さんがいなかったりして、それで介護制度のセーフティネットから抜け出してしまっている人が多い印象だ。

お金も大事だが、実際に介護になった場合、誰が助けてくれるのか?誰を頼るべきか?その点をクリアにしておく方が重要かもしれない。

筆者自身、父の介護を10年経験したが、それが感想。

なお、500万円程度の貯金もないのであれば、本商品のようなものに入っておくのも悪くはない。

と言うか、それしかない。

お金は勿体ないが一か八かにかけて入るしかないだろう。

そのような場合、認知症一時金は最低の100万円に設定し、介護給付特約(認知症&要介護1で支払い対象)を多めにした方が保険料が下がる。

認知症一時金は「認知症だけ」で受け取れるが、介護給付特約は「認知症&要介護1」なのでハードルが上がる。

その分、保険料が安い。

また、入るのであれば精神疾患併発入院特約も付けておいた方が無難だろう。

何故、認知症の保険に入るのか?

そう問われれば「人生の最後に家族に迷惑をかけたくないから」だろう。

であるならば、精神疾患を併発した場合の「迷惑」は並大抵ではないので、これも付けておいた方が良い。

なお、本稿を読んで「精神疾患併発入院だけ欲しいな」と思うなら、基本プランの認知症診断給付を最低限の100万円にして、そこに精神疾患併発入院特約10,000円などを付けておくと良い。

60歳 男性の場合、この構成で2,340円なので、これなら「最悪の場合をサポート」という意味では手軽だろう。

最後になるが、3年間認知症を発症しなかった場合に「お小遣い」が受け取れる無事故給付特約は必要ない。

ほとんど自分で貯めているようなものだし、仮に途中で認知症を発症したら、その分の保険料は没収されてしまう。

だったら自分で貯めておけば良い。

「お小遣い」は好きな人が多いが、保険である必要はないだろう。

なお、本商品と似た掛け捨ての「認知症になったら一時金」という商品は結構多くの保険会社から販売されているので、入るのであれば比較検討した方が良い。

保険ショップなどに行って、設計書の一覧を貰うと早いだろう。

口コミ・評判(販売側から)

・なし

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口コミ・評判(契約者から)

・なし

比較した方が良い商品

太陽生命 スマ保険 終身認知症年金保険 ★★★☆☆

住友生命 スミセイの認知症保険 ★★☆☆☆

太陽生命 認知症治療終身保険 ★★☆☆☆

JA共済 認知症共済 ★☆☆☆☆

太陽生命 終身認知症年金保険 ★☆☆☆☆

日本生命 認知症保障保険(認知症サポートプラス) ★☆☆☆☆

編集後記

約款