就業不能保険や、介護系、認知症系の商品の「支払条件」にて、
器質性認知症、かつ、意識障害のない状態において見当識障害があると診断されたとき
という一文が出てくることが多いが、これだけを見て「おお、なるほど」とすんなり納得出来る方は少ないだろう。
本稿では、この難解な一文を出来るだけ分かりやすく解説したい。
まず器質性認知症という単語。
素朴な疑問として、
器質性って何?
普通の認知症と何が違うの?
という2つが浮かぶ。
器質とは、ものすごく単純に言えば体内の臓器を表す。
そのため器質性認知症を、そのまま直訳すれば「臓器性認知症」とも言いかえることが出来るであろう。(もちろんそんな言葉はないが)
では認知症の関係する「臓器」とは何か?
これは脳である。
この脳が原因で発生している認知症のことを「器質性認知症」と言うのだが、またべつの話として、この器質性という言葉自体には、医学的に
「その臓器が変質する・壊れる」
というような意味がある。
認知症のケースで言えば、最も多いアルツハイマー型、次いで多い血管性認知症(脳梗塞などが原因)、そして少数ながらレビー小体認知症などがあるのだが、アルツハイマー型は脳の神経が「変性」することで発生するし、血管性認知症は血管が詰まったり、破れたことで脳の一部が破壊されてしまうことで起こる。
このように「脳の機能が変質・破壊された」ことで発生する認知症のことを、器質性認知症と呼んでいる。
では通常の認知症と何が違うのか?というと実際には明確な違いはない。
医師が「認知症ですね」と断定すれば、それは即ち器質性認知症であり、認知症の「正式名称」であるとでも思っておけば良いだろう。
だが、これらの症状は、下記のような「加齢による機能の低下」とは区別されている。
・物忘れがひどい
・記憶力が低下している
・注意力が散漫で、車の運転などが危なっかしい
これらは専門用語で「軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)」などと呼ばれ、認知症の前段階と位置づけられているが、まだ認知症とは言えない。
そのため、支払い条件に「器質性認知症」と書かれていた場合は「結構症状が進んでからでないと貰えないのだな」と思っておいた方が良い。
なお、前述のMCIに該当しただけでも、介護保険金の一部を支払うような商品も存在する。
だが、多くの商品では、この状態ではまだ「器質性認知症」ではないので、支払い対象とはならないで要注意。
ここまでが器質性認知症の解説。
では、次に
意識障害のない状態において見当識障害がある
とは何だろうか?
文章前段の「意識障害のない状態」とは、要は寝ていたり、昏睡状態など「ではない状態」のことで、平たく言えば目を覚ましている時のこと。
そのような状態で「見当識障害がある」ということなのだが、この見当識障害とは、
・時間や季節
・空間認識
・人間関係の認識
などの感覚が薄れる、もしくはなくなることを指す。
例えば今が何時か分からないと言った症状や、最寄りの駅から自宅まで帰る間に迷ってしまう、もしくは、自分の子や友人などが認識できない、など。
これらの症状は一般的な認知症で見られるものではあるのだが、支払い条件には「器質性認知症」 かつ(and)「見当識障害」となっているので、ただの器質性認知症ではダメで、更に「見当識障害」が出ていなくてはダメということ。
この2つをクリアしている状態は、やはり先に述べた通り
「かなり進んでいる認知症」
と言える。
介護保険で言えば、要介護2程度では?と想定されるため、「認知症になった」という程度では保険金や給付金が支払われない可能性が高い。
民間の介護保険や認知症保険では、このあたりが曖昧と言うか、結構ボヤかしてサラッと書いている商品が多いので、ご注意頂きたい。
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