この保険の弱点はここだ!大樹生命「フラット外貨終身」

提供会社:大樹生命

商品名:フラット外貨終身

 

この保険の弱点はここだ!!

参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

 

本商品は、大樹生命が販売し、銀行で取り扱っている銀行窓販専用の商品である。

現在、取扱金融機関は、三井住友信託銀行、愛媛銀行、熊本銀行、親和銀行、福岡銀行がある。

大樹生命は、三井生命が2019年4月に社名変更を行った会社で、最近、戸田恵梨香と竹内涼真を起用したCMを大量に流している。

三井生命は元々は業界中位の規模くらいの保険会社だったが、平成不況、リーマンショックの影響で業績が低迷。

一時期は破綻すら囁かれていた。

そこに、業界トップの日本生命が買収に乗り出し、2016年3月に完全子会社となった。

三井生命時代の格付けは「BBB」と、日本の生保では最低ランクの評価だったが、日本生命の後ろ盾により今では「A」まで回復した。

日本生命の子会社となった後もしばらくは「三井」の看板を使っていたが、2019年4月より大樹生命に変更。

ちなみに同社では以前より「大樹シリーズ」という商品ラインナップがあり、新しい社名はそこから得たのだろう。

さて、本商品の解説に入る。

ドル建、豪ドル建の終身保険で大きく3つの特徴がある。
※注:2020年4月時点ではドル建ての新規取扱は停止している。
 コロナの影響でのドルの金利が急落したことにより、本商品の肝である「為替固定」が維持出来なくなったことが原因と思われる。

1.保険料の払込が一定

2.予定利率が毎月変動型

3.低解約返戻金型

まあ、なんだろう・・・

一言で言えば銀行の窓口で高齢者に説明しやすいように

コネくり回したような商品

という印象。

とにかく「為替リスクがないんですよ」というようなトークをするためだけに、かなり複雑な内容になっている。

初めに言っておくが、この解説を読んで「チンプンカンプンだ」という人は契約しない方が良い。

では、まずは商品の概要として、それぞれの特徴を説明していこう。




1.保険料の払込が一定

まず、「1.保険料の払込が一定」ということについてだが、これはなかなか珍しい仕様。

この話をする前に「普通のドル建商品」の保険料の払込方法について説明したい。

一般的なドル建商品は、保険料が「ドル」で決まっており、そこにその月のレート(1ドル110円等)を掛け算して円の保険料が決まる。

例えば、毎月100ドルの場合、毎月の「円」の保険料は以下のように変化する。

1ドル=  90円の場合、100ドル×90円=9,000円
1ドル=110円の場合、100ドル×110円=11,000円
1ドル=120円の場合、100ドル×120円=12,000円

毎月、保険料が変わるのだが、これが「嫌だ」という人がいる。

そのような人向けに「保険料が一定」というサービスを提供しているのが本商品だ。

専門的には「為替ヘッジプレミアム」という技術を使う。

これは2つの通貨の「金利差」を使った為替のリスク回避法。

元々は複雑なテクニックなのだが、ここではなるべく分かりやすく説明したい。
注:本解説では「分かりやすさ優先」としているので、実際に本商品で使っている為替ヘッジプレミアムとは多少の違いがある。だが、根本的な理屈は同じ。

まず、こんな状況を思い浮かべて欲しい。日米の金利差である。

円  金利0%
ドル 金利3%

日本は0%なので、何年運用しても一切増えない。逆にドルは3%ほどの利回りがある。

そんな時に、ある人が、この商品に、

・支払期間10年間
・毎月の保険料 100ドル
・総支払保険料 1万2,000ドル
(100ドル×12か月×10年間=1万2,000ドル)
・本日のレートは為替レートは1ドル110円

という条件で加入したとする。

「通常のドル建て保険」なら、毎月100ドルにその時の為替レートを掛け算するので、保険料が変動するのだが、本商品の場合「円の保険料が変わらない」という特徴があるので、つまり

加入時に1ドル=?円が固定されている

ということになる。

この場合だと、今後の保険料は1ドル105円程度で固定されるのではなだろうか?

日本円で100ドル×105円=10,500円/月を10年間支払ってくれれば良い。ということ。

しかし、今のレートは110円なのに、何故に割安な「105円」で良いのか?

これは「保険会社の立場」から見てみると分かりやすい。

この契約内容は、保険会社側からすれば、

「毎月10,500円を10年間支払う」

という約束を得たようなものである。

そうなると、10年間で総額126万円(10,500円×12か月×10年間)が入ってくる「見込み」が立つ。

その「見込み」に従って、保険会社は契約者の代わりに「今のレート」の110円で、1万ドルを買うのである。

1万ドルは今のレート(110円)で110万円となる。

そして、保険会社はこの1万ドルを

年利3%で運用する

3%の複利で10年間運用すると、1万ドルは1万3,400ドルほどに増える計算。

保険会社からすれば、

・契約者から126万円貰う(10年間で) 当初110万円を立て替えている

 → 16万円の儲け

・契約者に1万2,000ドルを渡す(10年間で) 10年後に1万3,400ドルに増えている

 → 1,400ドル儲かる

となる。

要は、前もって保険料を立て替えてあげて、それを高金利の通貨(この場合で言えばドル)で長期間運用することで、契約者に

今のレートより割安なレート(110円→105円)

を提示できるのである。

一見すると、契約者にとっても得で、保険会社も手数料で儲かっているので、誰にも損はないように思える。

しかし、実際にはそうではない。これは弱点1で詳しく述べる。




2.予定利率が毎月変動型

続いて「予定利率が変動型」について。

運用の利率が毎月、その時の金利や景気によって変わる。

なお、そもそも予定利率とは何?という方は、こちらで解説しているので参考にしていただきたい。
『同じ3%でも何故違う?「超」わかりやすい!!予定利率と利回りの違い!!』

対して、ドル建て商品には「固定型」というものもある。

固定型であれば、加入時の予定利率がずっと続くので、将来いくら戻ってくるか?ということも加入時に決まる。

変動型は、毎月変わるので、将来の運用成績は終わってみないと分からない。

そのため、本商品も最終的な結果は加入した時点では不明ということ。

固定、変動、どちらが良いかはその人の好みだが、加入した時の予定利率が高いのであれば「固定」してしまった方が良いし、逆に低いのであれば、それが固定されてしまうより、将来の上振れを期待して「変動」の方が良いだろう。

加入するタイミング、その時の金融情勢などによっても違うので、一概には言えない。




3.低解約返戻金型

最後に「低解約返戻金型」について。

一般的にドル建の商品には通常型と低解約型の2つある。

低解約型は、一定期間(10年~20年など)は解約返戻金が低く抑えられていて、つまり、その間に解約をすると大損する仕組みになっている。

その分、低解約期間を終えると一気に返戻率が高くなる。

簡単に言えば「我慢していた分のボーナスがある」という感じ。

対して、通常型は当初から、それなりに返戻率が高く、その後も自然に上がっていく。しかし、最終的には低解約型に負けてしまう。

その2つを比較したものが下記の図。

山の傾斜のように自然に伸びる通常型と、当初の伸びは悪いが、ある時を境に崖のように急激に返戻率が上がる低解約型。

本商品は低解約型なので、早期に解約をすると損をしてしまう。

また、前述したように「為替レートを固定」するような複雑な処理をしているので、保険会社からしても途中で解約されてしまうと困る。

そのため、低解約型としているのだろう。

以上が商品概要。

まあ、なんとも複雑だ。

では、ここから弱点の解説に移る。




弱点1 為替「リスク」はヘッジされているが、為替「差益」が得られない

これ、極めてシンプルな話。

先ほどの例で言えば、1ドル=110円の状況で、1ドル105円を10年間約束してくれるので、例えば

1ドル120円

などになった時にも、105円での支払いが続けられる。

「ドルなんて分からないし、何だか恐いわぁ・・・」

というようなお年寄りに、

「この商品は為替が上がった時でも安心なんですよぉ~」

銀行窓口の販売員がそう言っている声が聞こえてきそうだ・・・・

確かに為替のリスクはヘッジ出来ている。

しかし、逆に1ドル100円、もしくは90円になった時には、

割高な105円で買っている

ということになる。

本来得られるはずの「利益(為替差益)」を得られず、損をしていることに。

結局のところ、完璧な為替のリスクヘッジなど存在しない。

ある面で得をすれば、ある面で損をする。ということ。

「為替のリスクヘッジ」と前面に押し出すほどのものでもなく、素人に分かりにくい金融テクニックでごまかしているだけ。という印象。




弱点2 予定利率が低い

これ致命的な弱点。

2020年2月時点の予定利率は、

ドル 1.78%(最低保障:1.25%)
豪ドル 1.62%(最低保障:0.75%)
※注:2020年4月時点ではドル建ての新規取扱は停止している。
 コロナの影響でのドルの金利が急落したことにより、本商品の肝である。為替固定が維持出来なくなったことが原因と思われる。

なお、この予定利率は他社に比べてかなり低い。

固定型
ジブラルタ生命 米国ドル建終身保険 3.2%
ソニー生命 米国ドル建終身保険     3.0%

毎月変動型
マニュライフ生命 こだわり外貨終身                       2.29%(最低保証:1.50%)
メットライフ生命 USドル建終身保険 ドルスマートS 3.14%(最低保証:3.00%)

他社の予定利率を並べてみても一段も二段も低い。

1.78%に対して他社は軒並み3%台。

いくら為替が固定されていようが、そもそもの運用が弱いのであれば話にならない。

これだけでも本商品を選ぶ理由はどこにもないだろう。

筆者が知り合いに「この保険どうかね?」と言われたら「絶対やめとけ」と言う。




特約 Good & Bad!!

めぼしい特約は特にない

比較した方が良い商品

オリックス生命 米国ドル建終身保険candle(キャンドル) ★★★☆☆

ジブラルタ生命 米国ドル建終身保険&米国ドル建終身保険(低解約返戻金型) ★★★★☆

ソニー生命 米国ドル建終身保険 ★★★☆☆

メットライフ生命 USドル建終身保険 ドルスマートS ★★★★☆

 

参考コラム:
ドル建商品の検討ってどうすればいいか?悩んだら
『ドル建商品の比較検討はこうすれば良い!!』
をご覧ください。

各社の外貨建終身保険の☆評価一覧は、コチラ